魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に見初められ人間界で無双する。

にんじん太郎

第25話 食堂へ



「本当に申し訳ない」


ギルマスと受付の女性が頭を下げて謝っている。


「いえ、気にしないでください」

「それで、話しが聞こえていた、かもしれないが、パースリの町で、大変な事がおきているんだ」

「知っています」

「それなら、話しが早い。ぜひ、討伐に参加してくれないか」

「無理です」


ロキさんが答える前に、私が答えてあげた。


「そこをなんとか、お願いします」

「嫌です」


また私が答えた。


「すまないが、お嬢ちゃん。私はロキさんに、お願いしているんだよ。おとなしくしてもらえないか」

「無理なものは無理です」


ギルマスは、イライラしているが、怒ることも出来ず、黙ってしまった。

私はさっき、無視されたので、そのお返しをしている。


「ルシスちゃん、もう、そのへんにしといてあげて。ギルマス殿、申し訳ございません。私の仲間が少しいじわるを、しているみたいで」

「どういうことですか?討伐に参加してくれるのですか?」

「実は、もう討伐は完了しました。パースリを占拠していたゴブリンは全滅しました」

「えーーーー!」


静まりかえっていた、ギルドの至る所から、驚きの声があがった。


「どういうことですか?詳しく教えてください」


そうすると、ロキさんはパースリの町での状況を、そして、なぜ私たちが、この町のギルドに訪れたのか説明した。


「やはり、ゴブリンキングまでいたのか。それにしても、よくゴブリンキングを、討伐する事ができたな」

「それは、ルシスちゃんのおかげです。詳しい事は言えませんが、見た目は、可愛い子供ですが、頼りになる仲間です」

「だろうな。私は一目見ただけで、このお嬢ちゃんは只者ではないと感じたよ」


はい。嘘です。このギルマスは私の事は、ただ子供と思っていました。まわりには、何人かの冒険者がいるので、見栄をはったのである。


「お嬢ちゃんすごいねー。こんな小さいのに、立派な冒険者だねー」


私に対するギルマスの態度が、一変したのであった。


「だれか、申し訳ないが、この事をすぐに領主様に伝えたい。もう、日が暮れてかなり危険だが、この町から、ラディシュの町へ急げば、2時間もあれば、行けるはずだ。行ってくれる者はいないか」

「私たちが行くわ」


3人組の女性パーティーが声をあげた。


「すまない。助かる「

「いえ、かまいませんわ。こんな可愛い女の子が、パースリの町を救ってくれたみたいだし、私たちも、何か力になりたいわ」


そういうと、ギルマスから手紙を受け取り、すぐにラディシュの町へ向かった。


「パースリの町の奪還報酬なんだが、領主様への報告の後になるが、かまわないだろうか。実は、まだ報酬額も詳しくは設定されていなくてな」

「かまわないですよ。2、3日は、この町に滞在する予定なので、報酬が決まったら受け取りきます。それに、素材も買い取って貰いたいものがありますので」

そういうと、私たちは冒険者ギルドを出て、食堂へ向かった。


ロキさんは、何度もこの町に訪れているみたいなので、食堂の場所は把握しているみたいだ。

私たちは、町の中心部にむかった。この辺りは大きな屋敷が多い。お金持ちや、貴族が住む地区であるらしい。


この世界では、冒険者の身分は、高い方である。命を懸けて、魔獣を倒しているのである。そんな冒険者を見下す者はいない。

だから冒険者を目指す者は多い。しかし、大半の冒険者は命を落とすか、諦めるかである。

冒険者の世界は、実力が全てである。いくら頑張っても、実力ないものには、務まらないのである。


「たぶんここだな」


立派なお屋敷である。しかし看板などはなく、見た感じは、食堂を営んでるようには、見えない。

私たちは、屋敷の門の前に立っている、門兵に声をかける。


「ここで食事をできると聞いたのですが」

「はい。できます。紹介状をお持ちですか」

「仲間の1人が先に、来ているはずなんだが」

「あなた方が、ロキ様とルシス様でしょうか」

「はい、そうです」

「念のために、身分証を見せていただいてよろしいでしょうか」


私たちは身分証をみせると、門兵は、屋敷の中に案内してくれた。

屋敷に入ると、いくつかの部屋があり、その一つの部屋に案内された。ここはいわゆる個室の食堂みたいである。


「遅かったなー。もう食べてるぞ」


当然の結果である。トールさんが食事を、待つなんて、ありえないからである。


「早くお前らも、注文しろよ。この肉料理が1番おいしいぞ」

「いえいえ、この魚料理のが美味しいですよ」


ちゃっかり、ポロンさんも食事をしている。

私たちは、トールさんのおすすめの料理を、頼むことにした。


「今後の事なんだが、2、3日はこの町に滞在しようとおもう。今回の報酬額も、まだ決まっていないし、連戦続きで、休息が必要だと思う。


「それで、いいんじゃねぇ。俺はここで飯が食えるなら、ずっと滞在してもいいぞ」

「私も少しのんびりしたいので、賛成ですわ」

「私もやりたい事があったので、賛成です」


私はこの異世界にきて、納得いかないことがあるのだ。ここの世界の食べ物は、そんなに悪くはない。しかし、油であげた料理がないのである。

私は唐揚げ、フライドポテトを食べたい。この欲求は抑える事が、できなくなっているのである。

私に力を授けてくれた、天使の1人、アリエル様の能力を使えば、なんとかなるのである。

アリエル様の能力は、自然を作り出す能力である。それを、私なりにアレンジし、努力した結果、アカシックレコードという能力を得ることができた。

この能力は、私が望む物を作り出す為の、レシピが現れる能力である。

レシピには、どの素材を使い、その素材がどこにあるか、また、どのように作るか記載されている。

しかし、望む物を、全て作れるわけではない。あくまで、この世界にある素材で、できる物だけである。


この休息期間で、作りたい物を、たくさん作るつもりである。


「そしたら、決まりだね。みんなゆっくり休んで、すごしましょう」

私たちはおおいに、食事を楽しんだ。トールさんはいつも以上に、たくさん食べて、飲んでいる。

トールさん以外のみんなは、どれくらいの請求書がくるのか、怖くなったのであった。

          

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