《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

31-2.プロメテの帰還

「無事でしたか!」


 オレがプロメテを連れて、礼拝堂に戻ると、ディーネが、慌ただしく駆け寄ってきた。


「心配をかけて悪かったな」


 申し訳ないのですよ――とプロメテが頭を下げた。


「心配しましたよ。しかし見つかったのならば良かった」
 と、ディーネはみずからの着ていた紅色のコタルディの袖で、プロメテの濡れた髪を拭き取っていた。


 なぜプロメテが消えていたのかは、なんとなく察しているのか、詳しくはセンサクして来なかった。
 繊細な問題だったので、説明しにくかったし、尋ねてこないのは、ありがたかった。


「かなり大規模に捜索してくれていたみたいだな」


「これからソマ帝国との決戦だというタイミングで、うちの大司教にもしものことがあれば大問題ですからね。まぁ、見つかったのならば良かった。捜索隊を引き上げさせましょう」


「そうしてくれ」


 ディーネはタルルに何か言っていた。
 タルルはディーネの命令を受け取ると、すぐに礼拝堂を出て行った。
 捜索隊を引き上げさせに向かったのだろう。


「こうしているあいだにも、アイリはかなりの数の信徒を集めています」
 と、ディーネがあらたまって切り出した。


「ゲームを中止にはできないか?」
 と、オレはディーネに提案してみた。


「私もそうしたいですがね。プロメテちゃんが勝手に姿を消したのに、ゲーム中止というわけにはいかないでしょう。それではアイリが納得しません」


「まあ、そうだよな」


 だろうとは思った。
 言ってみただけだ。


 大丈夫なのですよ、やれるだけやってみるのです――と言って、プロメテは礼拝堂を出て行った。


「後半戦ですね」


「ああ。もう午後の鐘が鳴るまで、そんなに時間はなさそうだな」


「もう大丈夫だろうとは思いますが、警護の者を増員させておきましょう。また何かあっては大変ですから」


「頼む」


「これからプロメテちゃんが巻き返すのは難しいでしょうね」
 と、ディーネは物憂げに、礼拝堂のイスに腰かけていた。


「アイリが勝ってしまったときは、オレのほうからアイリを拒否しよう。アイリを大司教に据えるわけにはいかない」


「プロメテちゃんの失踪には、アイリが関係しているのですか? もしそうなら、ゲームを中止させる口実にもできるかと思いますが」


「酷いことを言われたらしい。だが、あくまで言われたってだけだ。実際に言われたのだろうが、アイリが言った証拠もない」


「そうですか」


「やはりオレは、あのアイリという少女を好きにはなれんな。オレの子どもを身ごもったというのもウソのはずだし、プロメテを傷つけたことも許せん」


 アイリが、プロメテにたいしてどんな暴言を吐いたのかは、オレはこの耳で聞いたわけじゃない。


 だが――。
 変だ、とは思う。


 どうやらアイリは、オレの召喚の事で、プロメテを、なじったらしい。


 しかしどうして、オレが転生前の記憶をなくしていることを、アイリは知ってるのだろうか?


 魔術師だからか? そもそもアイリは、本当に魔術師なのか?
 わからん。


 とにかく今は、このゲームと銘打った布教活動が終わるのを待とうと決めた。

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