《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
30-3.怪物城にて提案
療養室にて――。
いまだオレとのあいだに子供が出来たとアイリは主張していた。
「だいたいね。プロメテとか言ったかしら? あんたなんて魔神さまに守られているだけでしょ。あんたが魔神さまに何かしてあげたこととか、何かあるわけ?」
と、レイアが言う。
目ヂカラが強いせいか、アイリの言葉には迫力があった。
「そ、それは……」
と、プロメテは、眉をひそめてうつむいてしまった。
ベッド脇にあったサイドテーブルの上に、カンテラが置かれてあり、オレはその中に入っていた。
オレがいる位置は、ふたりの狭間だったので、互いの表情を見てとることが出来た。
「私は――私なら、もっと魔神さまのチカラになることが出来るわ。子供だって授かっているだもの。私のほうこそ、《紅蓮教》の大司教にふわさしいと思わない?」
「だ、大司教に任命してくれたのは、ディーネさんなのですよ。私が決めたことではないのです」
「そんなこと尋ねてないわ。あなたの気持ちはどうかって尋ねてるのよ。ホントに自分こそが、魔神さまの隣を歩く大司教としての気持ちがあるかって訊いてンのよ」
さっきまで気絶していた人とは思えない剣幕である。
「うぅ」
プロメテは助けを求めるように、オレのことを見つめてきた。
オレはプロメテを助けるために、口をはさむことにした。
「プロメテは立派な大司教だ。それを君に言われる筋合いはないだろう」
「魔神さまは黙っててちょうだい。私はプロメテに訊いてるのよ」
と、言い返してきた。
「うっ」
と、オレは怯んだ。
ここまで苛烈にオレにたいして言い返してくるような人が、今までいなかったので、アイリの態度には虚を突かれてしまった。
「もう奥さんに尻に敷かれてるのかよ」
と、レイアがオレの入っているカンテラに顔を近づけて、耳打ちしてきた。
「奥さんじゃないって言ってるだろ」
と、言い返しておいた。
ベッドに座るアイリ。
対峙するプロメテ。
傍らに置かれて居たたまれないオレ。
それを楽しむレイアとメデュ。
意味がわからないというように佇んでいるエイブラハング。
いつの間にか、アルテミスは席を外していた。
そんな中。
「ずいぶんと面白いことになっているようですね」
と、ディーネが入ってきた。
「ディーネか」
「その少女の様子を見に来たのですが、どうやら面白いことになっているようですね。話は聞こえてきましたよ」
ディーネはにやにやと笑って、付けヒゲをつまんでいた。
言っておくがオレの子じゃないからな――とオレはそう先制しておいた。
いいえ。魔神さまの子よ――と、すぐさまアイリが言い返してきた。
「まぁ、それは生まれて来ればハッキリとすることでしょう。アイリさんとおっしゃいましたか? 魔神さまの子を孕んでいるとして、何が狙いなのです?」
と、ディーネはそう問いかけた。
まるでアイリの虚言を見抜いたうえで、何か狙いなのかと問いかけているかのようだった。
「私は魔神さまの子を孕んでるんだから、魔神さまの正妻だってことよ」
「それで?」
「大司教としての座を、私に譲ってちょうだい。こんな役に立たない小娘なんかよりかは、私は大司教としての仕事をこなせるわ」
ふぅん――と、メデュは透き通るような碧眼で、アイリのことを見つめていた。
そしてプロメテに目をやって、最後にオレへと視線を流してきた。
「良いでしょう」
と、ディーネがうなずいた。
「ディーネ!」
と、オレはつい怒鳴るような声が出てしまった。
オレの隣を歩くのは、プロメテの他にいない。
それはオレがイチバン良くわかっている。ここまで歩んできた道を振り返れば、そこにはオレとプロメテによる足跡がつづいているのだ。
それを今になって他の大司教に任せるというのは、ありえないことだった。
ディーネだって理解しているはずだと信じていた。
ディーネは手のひらを向けて、オレを制してきた。
「ただし、条件があります。セッカクですから、ゲーム方式にしましょう」
「ゲーム?」
と、その場にいる者たちは異口同音にそう問い返していた。
「このすぐ近くに自治都市ハムレットがあります。そこにはいまだ司祭がおらず、《紅蓮教》の信徒も多くはありません。そこでより多くの信徒を集めたほうを、正式に大司教として認めることにしましょう。今日の午後の鐘が鳴るまでに、信徒をより多く集めることが出来るならば、大司教としてふさわしいでしょうから」
「いいわよ。そっちは?」
と、アイリは、プロメテに問いかけていた。
「……わかりました」
と、プロメテもうなずいた。
プロメテとアイリの視線が衝突して、火花を散らしているかのようにも見えた。
いまだオレとのあいだに子供が出来たとアイリは主張していた。
「だいたいね。プロメテとか言ったかしら? あんたなんて魔神さまに守られているだけでしょ。あんたが魔神さまに何かしてあげたこととか、何かあるわけ?」
と、レイアが言う。
目ヂカラが強いせいか、アイリの言葉には迫力があった。
「そ、それは……」
と、プロメテは、眉をひそめてうつむいてしまった。
ベッド脇にあったサイドテーブルの上に、カンテラが置かれてあり、オレはその中に入っていた。
オレがいる位置は、ふたりの狭間だったので、互いの表情を見てとることが出来た。
「私は――私なら、もっと魔神さまのチカラになることが出来るわ。子供だって授かっているだもの。私のほうこそ、《紅蓮教》の大司教にふわさしいと思わない?」
「だ、大司教に任命してくれたのは、ディーネさんなのですよ。私が決めたことではないのです」
「そんなこと尋ねてないわ。あなたの気持ちはどうかって尋ねてるのよ。ホントに自分こそが、魔神さまの隣を歩く大司教としての気持ちがあるかって訊いてンのよ」
さっきまで気絶していた人とは思えない剣幕である。
「うぅ」
プロメテは助けを求めるように、オレのことを見つめてきた。
オレはプロメテを助けるために、口をはさむことにした。
「プロメテは立派な大司教だ。それを君に言われる筋合いはないだろう」
「魔神さまは黙っててちょうだい。私はプロメテに訊いてるのよ」
と、言い返してきた。
「うっ」
と、オレは怯んだ。
ここまで苛烈にオレにたいして言い返してくるような人が、今までいなかったので、アイリの態度には虚を突かれてしまった。
「もう奥さんに尻に敷かれてるのかよ」
と、レイアがオレの入っているカンテラに顔を近づけて、耳打ちしてきた。
「奥さんじゃないって言ってるだろ」
と、言い返しておいた。
ベッドに座るアイリ。
対峙するプロメテ。
傍らに置かれて居たたまれないオレ。
それを楽しむレイアとメデュ。
意味がわからないというように佇んでいるエイブラハング。
いつの間にか、アルテミスは席を外していた。
そんな中。
「ずいぶんと面白いことになっているようですね」
と、ディーネが入ってきた。
「ディーネか」
「その少女の様子を見に来たのですが、どうやら面白いことになっているようですね。話は聞こえてきましたよ」
ディーネはにやにやと笑って、付けヒゲをつまんでいた。
言っておくがオレの子じゃないからな――とオレはそう先制しておいた。
いいえ。魔神さまの子よ――と、すぐさまアイリが言い返してきた。
「まぁ、それは生まれて来ればハッキリとすることでしょう。アイリさんとおっしゃいましたか? 魔神さまの子を孕んでいるとして、何が狙いなのです?」
と、ディーネはそう問いかけた。
まるでアイリの虚言を見抜いたうえで、何か狙いなのかと問いかけているかのようだった。
「私は魔神さまの子を孕んでるんだから、魔神さまの正妻だってことよ」
「それで?」
「大司教としての座を、私に譲ってちょうだい。こんな役に立たない小娘なんかよりかは、私は大司教としての仕事をこなせるわ」
ふぅん――と、メデュは透き通るような碧眼で、アイリのことを見つめていた。
そしてプロメテに目をやって、最後にオレへと視線を流してきた。
「良いでしょう」
と、ディーネがうなずいた。
「ディーネ!」
と、オレはつい怒鳴るような声が出てしまった。
オレの隣を歩くのは、プロメテの他にいない。
それはオレがイチバン良くわかっている。ここまで歩んできた道を振り返れば、そこにはオレとプロメテによる足跡がつづいているのだ。
それを今になって他の大司教に任せるというのは、ありえないことだった。
ディーネだって理解しているはずだと信じていた。
ディーネは手のひらを向けて、オレを制してきた。
「ただし、条件があります。セッカクですから、ゲーム方式にしましょう」
「ゲーム?」
と、その場にいる者たちは異口同音にそう問い返していた。
「このすぐ近くに自治都市ハムレットがあります。そこにはいまだ司祭がおらず、《紅蓮教》の信徒も多くはありません。そこでより多くの信徒を集めたほうを、正式に大司教として認めることにしましょう。今日の午後の鐘が鳴るまでに、信徒をより多く集めることが出来るならば、大司教としてふさわしいでしょうから」
「いいわよ。そっちは?」
と、アイリは、プロメテに問いかけていた。
「……わかりました」
と、プロメテもうなずいた。
プロメテとアイリの視線が衝突して、火花を散らしているかのようにも見えた。
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