《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
30-2.怪物城にて混乱
アルテミスが、大鍋を療養室に持ってきてくれた。
「芋の煮物を作って来ました。良ければ魔神さまとプロメテさんもどうぞ」
「美味そうだな」
甘い香りが、鍋から白く立ち上る湯気とともに、ふわりと部屋のなかに広がった。
「果実酒とミルクで、蛋白虫と芋を煮込みました。すこしお塩を入れて、味を調えました。魔術師さんが目を覚ましたら、食べさせてあげてください」
「助かる」
準備がいいことに、オレとプロメテの分の器も、アルテミスは持ってきてくれていた。木の器である。そこにお玉で2人分の煮物を盛りつけて、差し出した。
プロメテが芋にフォークを突き刺して、オレのもとに運んでくれた。
オレは炎のカラダだが、いちおう味覚はある。
ありがたく、いただいた。炎のカラダが、その芋を包み込んだ。
芋はジャガイモに似た味がした。味付けはミルクを使っているからか、シチューに似ていた。
蛋白虫は昆虫なのだが、このオルフェスでは、当たり前に食べられており、オレも食べることに抵抗がなくなった。
はじめはさすがに嫌悪感があったけれど、食べてみればモチ米みたいな感触だったし、味にも癖がなかった。
この世界の人が好んでよく食べる理由も良くわかるというものだ。
「ん……」
と、匂いにつられたかして、少女が目を覚ましたようだった。
「目が覚めたか?」
部屋にいたプロメテもアルテミスも、不思議な生物でも見るような表情で、その魔術師を見つめていた。
プロメテは、芋にフォークを突き刺した姿のまま固まっているし、アルテミスはお玉を手に持ったままだった。
実際、魔術師を名乗る得体の知れぬ存在である。
「ここは?」
少女は上体を起こして、あたりを見渡していた。
気絶する前にも見たが、その目は切れ上がっており、独特な迫力があった。
その目からはどうにも、背筋をゾワリとさせるような不吉な予感を与えられるのだった。プロメテと同じ白銀でも、ずいぶんと印象が違うものだ。
「君はファルスタッフ砦と呼ばれる場所にいたんだ。山賊たちが住みついていたとか言ってたけど、何か覚えてないか?」
「はて……」
と、少女は首をかしげた。
彼女は、オレの姿に関しては、疑問を投げかけては来なかった。オレのことを魔神だと承知しているのかもしれない。
「砦にいた君のことを、この城で休ませることにしたんだ。勝手に連れて来て悪かったな。危害を加えるつもりはないから安心すると良い」
「はぁ」
と少女は、曖昧に応じた。
まだ意識がハッキリしないのかもしれない。
君は魔術師なのか――と尋ねたかったのだが、目が覚めたばかりだし、詰問するのはカラダに障るかもしれない。
「名前とか、覚えてるか」
「アイリと申します」
「記憶がないとか、そういうわけではないようだな」
「はい」
と、アイリと名乗った少女はうなずいた。
「アルテミスさまが、これ作ってくだったので、良ければ食べてくださいね」
と、プロメテは、ようやっと我に返ったようで、思い出したようにそう言った。
芋の煮物を器に盛り付けて、アイリに差し出した。
瞬間。
アイリはその器を、ビンタするように弾き飛ばした。「きゃ」とプロメテが小さな悲鳴をあげた。煮物の汁がベッドを濡らして、芋が床に転がった。
「私に慣れなれしくしないでよ。この泥棒猫」
と、物凄い剣幕でそう言った。
それはあまりにトウトツなことだったので、オレは唖然とした。
「泥棒猫?」
「そうよ。魔術師プロメテ。私から魔神さまを奪った泥棒猫」
と、アイリは、眉をつり上げ、その目に憎悪をたぎらせてそう声を荒らげた。
「言ってる意味がわからないのですよ」
と、煮物の汁がかかったのか、プロメテは緋色の法衣の袖で、頭を拭きながらそう言った。
「私はね。魔神さまと愛し合っていたのよ。その証拠に私のなかには、魔神さまとのあいだに子供がいるんだから」
「え? え?」
と、プロメテは困惑しきったような表情で、オレのほうを見てきた。
そんな顔で見られても困る。
「そんなバカな……」
である。
そんなこと言われても身に覚えがない。微塵もない。皆無だ。
「魔神さま、子供を作っていたのですか!」
と、プロメテも驚愕だという調子で尋ねてきた。
「ンなわけないだろ! いやいや。ゼッタイに違うって。何かの勘違いだろう」
「いいえ。たしかに私のなかには、魔神さまの子がいるの」
と、アイリはみずからの腹に手を当てていたのである。
「魔神さま! 私にナイショで子供を作ったなんて、私はなんだか非常に残念な気持ちなのですよ!」
プロメテがそう言って、オレの入っているカンテラを激しく揺さぶってきた。
「いや。待て。落ちつけって。そんなわけないって。プロメテがイチバン良くわかってるだろう」
「私が?」
「そうだよ。だってオレは召喚されてから、ほとんどずっとプロメテと一緒にいたんだから、他の人と子供を生む暇なんて、そんなのあるはずないだろう」
「わからないのですよ。お互い愛しあっていれば、子供は出来るものではないのですか?」
「あぁ……」
そう言えば、そうだった。
プロメテは子供のつくりかたを知らないのだ。まずそこから説明しなければならないのかと思うと荷が重い。
「とりあえず、レイアか、エイブラハングも交えて話そう」
と、オレはそう言った。
アイリはお腹に子供がいると言うし、プロメテは子供のつくり方を知らないし、これはオレだけでは収拾をつけられないと判断した。
プロメテに2人を呼んできてもらうと、なぜかメデュまで一緒についてきた。
事情を話すと、
「ハーハハハッ」
と、レイアは腹を抱えて、豪快に笑いはじめた。
「笑いごとじゃないのですよ。魔神さまに子供がいたなんて、なんだか、モヤモヤするのですよ」 と、プロメテが涙目になって、地団駄を踏むようにして憤慨していた。
「子供ってのは、そんな簡単にできるもんじゃねェし。魔神さまのカラダじゃ、子供なんて出来ねェんじゃねェかな」
と、レイアはカンテラのなかのオレを見てそう言った。
「その通りだ」
と、レイアが味方をしてくれたので、オレは安堵した。
「いやいや。わからんぞ。魔神さまは神さまじゃからな。何か特殊な方法で子供が出来るのやもしれん」
と、呼んでないのにメデュがそう口をはさんだ。
オレに子供がいるという話を聞きつけて首を突っ込む気になったらしい。
「言っておくが、オレに心当たりはないからな」
「こういう場合、オスの言うことは当てにならん。浮気をしていても、平気な顔をしてウソを吐くからのぉ」
えぇぇ、とプロメテが悲惨な声をあげていた。
「やめろ。変なことを言うんじゃない」
「べつに隠す必要はなかろうが。魔神さまは神さまなんじゃから、妾のひとりや2人ぐらいいても良かろう」
「違うと言ってるだろ」
と、メデュを注意すると、メデュはこの状況を楽しむかのように、カラダを揺らして笑っていた。
「私も魔神さまの言うことを信じてやりたいけどよ。実際に子供がいるって嬢ちゃんがいるからなぁ」
と、レイアは紅色の髪をかきむしるようにして、ベッドで座っているアイリに視線をやった。
「ええ。そうよ。この子は、私と魔神さまの子なんだから」
と、アイリは、ベッドにカラダを預けたまま、頑としてそう言い張っていた。
まったくもって、不可解きわまりない。あまりの出来事に、メマイを覚えたほどだ。
冷静になって考えてみれば、なんてことはない。オレに心当たりがないのだから、アイリの妄言ということである。
「じゃあ訊くがな。いつ出来た子なんだ? オレは君とも会った覚えはないし、今が初対面だと思うんだがな」
「それは……ずっと前のことよ」
と、アイリは顔を背けた。
「ずっと前って言われてもなぁ。って言うか、尋ねるのが遅れたんだが、君は魔術師なのか」
「ええ。そうよ」
と、アイリは平然とうなずいた。
アイリは平然としているが、こっちは驚きだ。
てっきり魔術師はプロメテが最後のひとりだと思っていた。実際、プロメテにはオルフェス最後の魔術師と呼ばれているのだ。
「どうしてファルスタッフ砦にいたんだ」
と、もはやオレは、アイリの体調など、気にかけている余裕はなくなり、自然と詰問するような物言いになっていた。
しかし、仕方あるまい。
いくら相手が、少女だからと言っても、詰問せずにはいられない状況なのだ。
「山賊に囚われてたのよ」
「ふむ……」
と、オレは唸った。
もっと尋ねるべきことがあるようにも思うが、何をどう尋ねれば良いのかもわからない。
オレとの間に子供がいるとか言われて、こっちはさっきから居たたまれない気持ちなのだ。
プロメテが悄然とした目を向けてくるのも、なんだか心が痛むものがある。
「まぁ、魔神さまか、アイリの嬢ちゃんかの、どちらかがウソを吐いてるってことなんだろ」
と、レイアが無遠慮にそう言った。
プロメテもエイブラハングも、妊娠にしては無知だし、メデュはここぞとばかりにオレを揶揄してくる。
「しかし、魔神さまとのあいだに子供がいるだなんてウソを吐く理由があるかのぉ? 魔神さまのほうがヤマシサから、ウソを吐いてる可能性はあると思うがな」
と、メデュが揶揄するように言う。
メデュは普段から、オレを困らせるような冗談を平気で言うのだが、この場合はオレも笑って受け流す余裕がなかった。
「プロメテの嬢ちゃんが、魔神さまを召喚してから、私はその後すぐに魔神さまと出会った。このなかじゃ、私は魔神さまの最古参の信徒だ。けど、魔神さまに愛人を作ってるような素振なんてなかったぜ」
と、レイアがオレをかばってくれた。
意外ではあるが、さっきまで酒に酔っていたレイアが、このなかではイチバン状況を理解してくれている気がする。
「芋の煮物を作って来ました。良ければ魔神さまとプロメテさんもどうぞ」
「美味そうだな」
甘い香りが、鍋から白く立ち上る湯気とともに、ふわりと部屋のなかに広がった。
「果実酒とミルクで、蛋白虫と芋を煮込みました。すこしお塩を入れて、味を調えました。魔術師さんが目を覚ましたら、食べさせてあげてください」
「助かる」
準備がいいことに、オレとプロメテの分の器も、アルテミスは持ってきてくれていた。木の器である。そこにお玉で2人分の煮物を盛りつけて、差し出した。
プロメテが芋にフォークを突き刺して、オレのもとに運んでくれた。
オレは炎のカラダだが、いちおう味覚はある。
ありがたく、いただいた。炎のカラダが、その芋を包み込んだ。
芋はジャガイモに似た味がした。味付けはミルクを使っているからか、シチューに似ていた。
蛋白虫は昆虫なのだが、このオルフェスでは、当たり前に食べられており、オレも食べることに抵抗がなくなった。
はじめはさすがに嫌悪感があったけれど、食べてみればモチ米みたいな感触だったし、味にも癖がなかった。
この世界の人が好んでよく食べる理由も良くわかるというものだ。
「ん……」
と、匂いにつられたかして、少女が目を覚ましたようだった。
「目が覚めたか?」
部屋にいたプロメテもアルテミスも、不思議な生物でも見るような表情で、その魔術師を見つめていた。
プロメテは、芋にフォークを突き刺した姿のまま固まっているし、アルテミスはお玉を手に持ったままだった。
実際、魔術師を名乗る得体の知れぬ存在である。
「ここは?」
少女は上体を起こして、あたりを見渡していた。
気絶する前にも見たが、その目は切れ上がっており、独特な迫力があった。
その目からはどうにも、背筋をゾワリとさせるような不吉な予感を与えられるのだった。プロメテと同じ白銀でも、ずいぶんと印象が違うものだ。
「君はファルスタッフ砦と呼ばれる場所にいたんだ。山賊たちが住みついていたとか言ってたけど、何か覚えてないか?」
「はて……」
と、少女は首をかしげた。
彼女は、オレの姿に関しては、疑問を投げかけては来なかった。オレのことを魔神だと承知しているのかもしれない。
「砦にいた君のことを、この城で休ませることにしたんだ。勝手に連れて来て悪かったな。危害を加えるつもりはないから安心すると良い」
「はぁ」
と少女は、曖昧に応じた。
まだ意識がハッキリしないのかもしれない。
君は魔術師なのか――と尋ねたかったのだが、目が覚めたばかりだし、詰問するのはカラダに障るかもしれない。
「名前とか、覚えてるか」
「アイリと申します」
「記憶がないとか、そういうわけではないようだな」
「はい」
と、アイリと名乗った少女はうなずいた。
「アルテミスさまが、これ作ってくだったので、良ければ食べてくださいね」
と、プロメテは、ようやっと我に返ったようで、思い出したようにそう言った。
芋の煮物を器に盛り付けて、アイリに差し出した。
瞬間。
アイリはその器を、ビンタするように弾き飛ばした。「きゃ」とプロメテが小さな悲鳴をあげた。煮物の汁がベッドを濡らして、芋が床に転がった。
「私に慣れなれしくしないでよ。この泥棒猫」
と、物凄い剣幕でそう言った。
それはあまりにトウトツなことだったので、オレは唖然とした。
「泥棒猫?」
「そうよ。魔術師プロメテ。私から魔神さまを奪った泥棒猫」
と、アイリは、眉をつり上げ、その目に憎悪をたぎらせてそう声を荒らげた。
「言ってる意味がわからないのですよ」
と、煮物の汁がかかったのか、プロメテは緋色の法衣の袖で、頭を拭きながらそう言った。
「私はね。魔神さまと愛し合っていたのよ。その証拠に私のなかには、魔神さまとのあいだに子供がいるんだから」
「え? え?」
と、プロメテは困惑しきったような表情で、オレのほうを見てきた。
そんな顔で見られても困る。
「そんなバカな……」
である。
そんなこと言われても身に覚えがない。微塵もない。皆無だ。
「魔神さま、子供を作っていたのですか!」
と、プロメテも驚愕だという調子で尋ねてきた。
「ンなわけないだろ! いやいや。ゼッタイに違うって。何かの勘違いだろう」
「いいえ。たしかに私のなかには、魔神さまの子がいるの」
と、アイリはみずからの腹に手を当てていたのである。
「魔神さま! 私にナイショで子供を作ったなんて、私はなんだか非常に残念な気持ちなのですよ!」
プロメテがそう言って、オレの入っているカンテラを激しく揺さぶってきた。
「いや。待て。落ちつけって。そんなわけないって。プロメテがイチバン良くわかってるだろう」
「私が?」
「そうだよ。だってオレは召喚されてから、ほとんどずっとプロメテと一緒にいたんだから、他の人と子供を生む暇なんて、そんなのあるはずないだろう」
「わからないのですよ。お互い愛しあっていれば、子供は出来るものではないのですか?」
「あぁ……」
そう言えば、そうだった。
プロメテは子供のつくりかたを知らないのだ。まずそこから説明しなければならないのかと思うと荷が重い。
「とりあえず、レイアか、エイブラハングも交えて話そう」
と、オレはそう言った。
アイリはお腹に子供がいると言うし、プロメテは子供のつくり方を知らないし、これはオレだけでは収拾をつけられないと判断した。
プロメテに2人を呼んできてもらうと、なぜかメデュまで一緒についてきた。
事情を話すと、
「ハーハハハッ」
と、レイアは腹を抱えて、豪快に笑いはじめた。
「笑いごとじゃないのですよ。魔神さまに子供がいたなんて、なんだか、モヤモヤするのですよ」 と、プロメテが涙目になって、地団駄を踏むようにして憤慨していた。
「子供ってのは、そんな簡単にできるもんじゃねェし。魔神さまのカラダじゃ、子供なんて出来ねェんじゃねェかな」
と、レイアはカンテラのなかのオレを見てそう言った。
「その通りだ」
と、レイアが味方をしてくれたので、オレは安堵した。
「いやいや。わからんぞ。魔神さまは神さまじゃからな。何か特殊な方法で子供が出来るのやもしれん」
と、呼んでないのにメデュがそう口をはさんだ。
オレに子供がいるという話を聞きつけて首を突っ込む気になったらしい。
「言っておくが、オレに心当たりはないからな」
「こういう場合、オスの言うことは当てにならん。浮気をしていても、平気な顔をしてウソを吐くからのぉ」
えぇぇ、とプロメテが悲惨な声をあげていた。
「やめろ。変なことを言うんじゃない」
「べつに隠す必要はなかろうが。魔神さまは神さまなんじゃから、妾のひとりや2人ぐらいいても良かろう」
「違うと言ってるだろ」
と、メデュを注意すると、メデュはこの状況を楽しむかのように、カラダを揺らして笑っていた。
「私も魔神さまの言うことを信じてやりたいけどよ。実際に子供がいるって嬢ちゃんがいるからなぁ」
と、レイアは紅色の髪をかきむしるようにして、ベッドで座っているアイリに視線をやった。
「ええ。そうよ。この子は、私と魔神さまの子なんだから」
と、アイリは、ベッドにカラダを預けたまま、頑としてそう言い張っていた。
まったくもって、不可解きわまりない。あまりの出来事に、メマイを覚えたほどだ。
冷静になって考えてみれば、なんてことはない。オレに心当たりがないのだから、アイリの妄言ということである。
「じゃあ訊くがな。いつ出来た子なんだ? オレは君とも会った覚えはないし、今が初対面だと思うんだがな」
「それは……ずっと前のことよ」
と、アイリは顔を背けた。
「ずっと前って言われてもなぁ。って言うか、尋ねるのが遅れたんだが、君は魔術師なのか」
「ええ。そうよ」
と、アイリは平然とうなずいた。
アイリは平然としているが、こっちは驚きだ。
てっきり魔術師はプロメテが最後のひとりだと思っていた。実際、プロメテにはオルフェス最後の魔術師と呼ばれているのだ。
「どうしてファルスタッフ砦にいたんだ」
と、もはやオレは、アイリの体調など、気にかけている余裕はなくなり、自然と詰問するような物言いになっていた。
しかし、仕方あるまい。
いくら相手が、少女だからと言っても、詰問せずにはいられない状況なのだ。
「山賊に囚われてたのよ」
「ふむ……」
と、オレは唸った。
もっと尋ねるべきことがあるようにも思うが、何をどう尋ねれば良いのかもわからない。
オレとの間に子供がいるとか言われて、こっちはさっきから居たたまれない気持ちなのだ。
プロメテが悄然とした目を向けてくるのも、なんだか心が痛むものがある。
「まぁ、魔神さまか、アイリの嬢ちゃんかの、どちらかがウソを吐いてるってことなんだろ」
と、レイアが無遠慮にそう言った。
プロメテもエイブラハングも、妊娠にしては無知だし、メデュはここぞとばかりにオレを揶揄してくる。
「しかし、魔神さまとのあいだに子供がいるだなんてウソを吐く理由があるかのぉ? 魔神さまのほうがヤマシサから、ウソを吐いてる可能性はあると思うがな」
と、メデュが揶揄するように言う。
メデュは普段から、オレを困らせるような冗談を平気で言うのだが、この場合はオレも笑って受け流す余裕がなかった。
「プロメテの嬢ちゃんが、魔神さまを召喚してから、私はその後すぐに魔神さまと出会った。このなかじゃ、私は魔神さまの最古参の信徒だ。けど、魔神さまに愛人を作ってるような素振なんてなかったぜ」
と、レイアがオレをかばってくれた。
意外ではあるが、さっきまで酒に酔っていたレイアが、このなかではイチバン状況を理解してくれている気がする。
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