《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

28-5.決着

 殴って、殴られて――。


 コブシの応酬のすえに、ようやっとオレはグングニエルを征することが出来た。


 疲弊しきったグングニエルの首根っこをつかむと、オレの腕からグングニエルの全身へと炎がまわった。


 もう水のヴェールはなく、グングニエルのカラダは焼かれてゆく。


「信徒あってこその神だ。オレの勝ちだな」


 やはりプロメテたち信徒が近くにいると、炎の猛りが格段にちがっている。


 特にプロメテの想いは、魔神にふさわしい業火を、オレにあたえてくれる。


「ふふっ………ふはははっ……」


 全身を炎につつまれながら、グングニエルは豪快に笑った。
 負け惜しみから発せられる笑い声には聞こえなかった。


「何がオカシイ?」


「もう遅い」


「なに?」


「すでに《聖白騎士団》の教会に使いを走らせている。援軍を求めてな。何倍もの《聖白騎士団》がここに押し寄せてくるぞ」


「ハッタリか?」


「ハッタリなものか。もう少し来るのが早ければ、信徒の数でオレはお前を凌いでいた。せいぜい足掻くが良いさ。邪教の神よ」


 豪快に笑いながら、3大神グングニエルは灰塵となって散って行った。
 周囲にいた《紅蓮教》の信徒たちが喝采をあげていた。


 すこしチカラを使いすぎた。気炎万丈のチカラを保つことが出来なかった。


 エイブラハングに言わせてみれば「可愛い」と言う、いつもの火の姿に戻ることにした。


 縮みきって、地面に腰をおろした。


 さっきまでオレが立っていた場所には、草木が一本も生えておらず、灰が積もっていた。


 そこにレイアとエイブラハングが馬で駆け寄ってきた。


 すぐにオレのカラダは、超蒸気装甲ビッグ・ボーイの火室へと移されることになった。


「いちいち世話をかけて悪いな」


「なに、水臭いこと言ってンだよ。私と魔神さまの付き合いだろ。エイブラハングより長いんだからな」
 と、レイアはエイブラハングを挑発するような物言いをした。


「私だって、今回はレイアの知らない旅を、魔神さまとさせていただいた」
 と、エイブラハングも言い返している。


 口ゲンカでもはじまりそうだったので、オレはすぐに割り込むことにした。


「プロメテは?」


「魔神さまの姿を見て安心したのか、また気を失ってやがる。脂汗もすごいし、診てもらえるなら、すぐに診てもらったほうが良い。この近くに、アルテミスって神がいるんだろ?」


「ああ」


 これでようやっとプロメテを診てもらうことが出来る。


 そもそも今回は、ヘビになったメデュの母親を救いに来たわけでも、エルフを助けに来たわけでもない。
 アルテミスとの接触が、本来の目的である。


「おそらくこの近くに、カザハナってエルフがいるはずなんだが……」
 と、オレは周囲を見渡した。


 その時である。


「魔神さま――ッ」
 と、駆けてくる者の姿があった。


 ウワサをすれば、そのカザハナである。


 酷く慌てている様子だった。足元の石ころにつまずいて、ズッコケそうになっていたほどだ。長いポニーテールが、あわただしく左右に揺れていた。


「そんなに慌てて、どうした?」


「大量の《聖白騎士団》が、こちらに押し寄せてくるわ。その数おおよそ10万人」


「10万人!」
 と、オレは声をあげた。


 グングニエルが言っていた援軍だ。
 ハッタリではなかった。


 騎士団と言うからには、それは修道士たちで結成されているのだろう。

 
 即座に10万人もの修道士が結成して押しかけてくる。数の多さは、さすが《光神教》といったところか。しかし感心している場合ではない。


「逃げるか……」


「そうしたいのはヤマヤマなんだけどね。うちのエルフたちのなかには、年寄りもいるし、子供だっている。すぐには逃げられないわ。アルテミスさまだって、もうそんなに体力がないのよ」


「守ってやりたいが、オレはあまりチカラが残っていない。それに10万もの数となると……」


 抑えられるか怪しい。
 オレひとりなら決死の覚悟で戦っても良いが、《紅蓮教》の信徒たちもいるのだ。


「怪物城に来てくれない?」


「怪物城?」


「このすぐ近くにある。エルフの保有する古代技術品アーティファクトよ」


「ここには古代技術品アーティファクトがあるのか」


「それを動かすことが出来れば、無事にここから逃げ切ることが出来ると思う」


「動かすと言っても、どうやって動かすんだ?」


「聖火台に火を灯せば動くそうよ。そこにアルテミスさまもいるから」


 てめェ、適当なこと言って魔神さまに、もしものことがあったら承知しねェぞ――とレイアはドスをきかせていた。


 もともと盗賊だった影響かどうかは知らないが、レイアはすこしチンピラ染みたところがある気がする。


「わかってる。3大神グングニエルを倒して、エルフたちを解放してくれたんだもの。この恩はゼッタイに忘れないわ。でも今は、付いて来て。案内するから」
 と、カザハナは歩き出した。


 オレたちは、それにつづくことにした。
 聖火台があるのなら、なおさら行かないわけにはいかない。

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