《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
28-5.決着
殴って、殴られて――。
コブシの応酬のすえに、ようやっとオレはグングニエルを征することが出来た。
疲弊しきったグングニエルの首根っこをつかむと、オレの腕からグングニエルの全身へと炎がまわった。
もう水のヴェールはなく、グングニエルのカラダは焼かれてゆく。
「信徒あってこその神だ。オレの勝ちだな」
やはりプロメテたち信徒が近くにいると、炎の猛りが格段にちがっている。
特にプロメテの想いは、魔神にふさわしい業火を、オレにあたえてくれる。
「ふふっ………ふはははっ……」
全身を炎につつまれながら、グングニエルは豪快に笑った。
負け惜しみから発せられる笑い声には聞こえなかった。
「何がオカシイ?」
「もう遅い」
「なに?」
「すでに《聖白騎士団》の教会に使いを走らせている。援軍を求めてな。何倍もの《聖白騎士団》がここに押し寄せてくるぞ」
「ハッタリか?」
「ハッタリなものか。もう少し来るのが早ければ、信徒の数でオレはお前を凌いでいた。せいぜい足掻くが良いさ。邪教の神よ」
豪快に笑いながら、3大神グングニエルは灰塵となって散って行った。
周囲にいた《紅蓮教》の信徒たちが喝采をあげていた。
すこしチカラを使いすぎた。気炎万丈のチカラを保つことが出来なかった。
エイブラハングに言わせてみれば「可愛い」と言う、いつもの火の姿に戻ることにした。
縮みきって、地面に腰をおろした。
さっきまでオレが立っていた場所には、草木が一本も生えておらず、灰が積もっていた。
そこにレイアとエイブラハングが馬で駆け寄ってきた。
すぐにオレのカラダは、超蒸気装甲の火室へと移されることになった。
「いちいち世話をかけて悪いな」
「なに、水臭いこと言ってンだよ。私と魔神さまの付き合いだろ。エイブラハングより長いんだからな」
と、レイアはエイブラハングを挑発するような物言いをした。
「私だって、今回はレイアの知らない旅を、魔神さまとさせていただいた」
と、エイブラハングも言い返している。
口ゲンカでもはじまりそうだったので、オレはすぐに割り込むことにした。
「プロメテは?」
「魔神さまの姿を見て安心したのか、また気を失ってやがる。脂汗もすごいし、診てもらえるなら、すぐに診てもらったほうが良い。この近くに、アルテミスって神がいるんだろ?」
「ああ」
これでようやっとプロメテを診てもらうことが出来る。
そもそも今回は、ヘビになったメデュの母親を救いに来たわけでも、エルフを助けに来たわけでもない。
アルテミスとの接触が、本来の目的である。
「おそらくこの近くに、カザハナってエルフがいるはずなんだが……」
と、オレは周囲を見渡した。
その時である。
「魔神さま――ッ」
と、駆けてくる者の姿があった。
ウワサをすれば、そのカザハナである。
酷く慌てている様子だった。足元の石ころにつまずいて、ズッコケそうになっていたほどだ。長いポニーテールが、あわただしく左右に揺れていた。
「そんなに慌てて、どうした?」
「大量の《聖白騎士団》が、こちらに押し寄せてくるわ。その数おおよそ10万人」
「10万人!」
と、オレは声をあげた。
グングニエルが言っていた援軍だ。
ハッタリではなかった。
騎士団と言うからには、それは修道士たちで結成されているのだろう。
即座に10万人もの修道士が結成して押しかけてくる。数の多さは、さすが《光神教》といったところか。しかし感心している場合ではない。
「逃げるか……」
「そうしたいのはヤマヤマなんだけどね。うちのエルフたちのなかには、年寄りもいるし、子供だっている。すぐには逃げられないわ。アルテミスさまだって、もうそんなに体力がないのよ」
「守ってやりたいが、オレはあまりチカラが残っていない。それに10万もの数となると……」
抑えられるか怪しい。
オレひとりなら決死の覚悟で戦っても良いが、《紅蓮教》の信徒たちもいるのだ。
「怪物城に来てくれない?」
「怪物城?」
「このすぐ近くにある。エルフの保有する古代技術品よ」
「ここには古代技術品があるのか」
「それを動かすことが出来れば、無事にここから逃げ切ることが出来ると思う」
「動かすと言っても、どうやって動かすんだ?」
「聖火台に火を灯せば動くそうよ。そこにアルテミスさまもいるから」
てめェ、適当なこと言って魔神さまに、もしものことがあったら承知しねェぞ――とレイアはドスをきかせていた。
もともと盗賊だった影響かどうかは知らないが、レイアはすこしチンピラ染みたところがある気がする。
「わかってる。3大神グングニエルを倒して、エルフたちを解放してくれたんだもの。この恩はゼッタイに忘れないわ。でも今は、付いて来て。案内するから」
と、カザハナは歩き出した。
オレたちは、それにつづくことにした。
聖火台があるのなら、なおさら行かないわけにはいかない。
コブシの応酬のすえに、ようやっとオレはグングニエルを征することが出来た。
疲弊しきったグングニエルの首根っこをつかむと、オレの腕からグングニエルの全身へと炎がまわった。
もう水のヴェールはなく、グングニエルのカラダは焼かれてゆく。
「信徒あってこその神だ。オレの勝ちだな」
やはりプロメテたち信徒が近くにいると、炎の猛りが格段にちがっている。
特にプロメテの想いは、魔神にふさわしい業火を、オレにあたえてくれる。
「ふふっ………ふはははっ……」
全身を炎につつまれながら、グングニエルは豪快に笑った。
負け惜しみから発せられる笑い声には聞こえなかった。
「何がオカシイ?」
「もう遅い」
「なに?」
「すでに《聖白騎士団》の教会に使いを走らせている。援軍を求めてな。何倍もの《聖白騎士団》がここに押し寄せてくるぞ」
「ハッタリか?」
「ハッタリなものか。もう少し来るのが早ければ、信徒の数でオレはお前を凌いでいた。せいぜい足掻くが良いさ。邪教の神よ」
豪快に笑いながら、3大神グングニエルは灰塵となって散って行った。
周囲にいた《紅蓮教》の信徒たちが喝采をあげていた。
すこしチカラを使いすぎた。気炎万丈のチカラを保つことが出来なかった。
エイブラハングに言わせてみれば「可愛い」と言う、いつもの火の姿に戻ることにした。
縮みきって、地面に腰をおろした。
さっきまでオレが立っていた場所には、草木が一本も生えておらず、灰が積もっていた。
そこにレイアとエイブラハングが馬で駆け寄ってきた。
すぐにオレのカラダは、超蒸気装甲の火室へと移されることになった。
「いちいち世話をかけて悪いな」
「なに、水臭いこと言ってンだよ。私と魔神さまの付き合いだろ。エイブラハングより長いんだからな」
と、レイアはエイブラハングを挑発するような物言いをした。
「私だって、今回はレイアの知らない旅を、魔神さまとさせていただいた」
と、エイブラハングも言い返している。
口ゲンカでもはじまりそうだったので、オレはすぐに割り込むことにした。
「プロメテは?」
「魔神さまの姿を見て安心したのか、また気を失ってやがる。脂汗もすごいし、診てもらえるなら、すぐに診てもらったほうが良い。この近くに、アルテミスって神がいるんだろ?」
「ああ」
これでようやっとプロメテを診てもらうことが出来る。
そもそも今回は、ヘビになったメデュの母親を救いに来たわけでも、エルフを助けに来たわけでもない。
アルテミスとの接触が、本来の目的である。
「おそらくこの近くに、カザハナってエルフがいるはずなんだが……」
と、オレは周囲を見渡した。
その時である。
「魔神さま――ッ」
と、駆けてくる者の姿があった。
ウワサをすれば、そのカザハナである。
酷く慌てている様子だった。足元の石ころにつまずいて、ズッコケそうになっていたほどだ。長いポニーテールが、あわただしく左右に揺れていた。
「そんなに慌てて、どうした?」
「大量の《聖白騎士団》が、こちらに押し寄せてくるわ。その数おおよそ10万人」
「10万人!」
と、オレは声をあげた。
グングニエルが言っていた援軍だ。
ハッタリではなかった。
騎士団と言うからには、それは修道士たちで結成されているのだろう。
即座に10万人もの修道士が結成して押しかけてくる。数の多さは、さすが《光神教》といったところか。しかし感心している場合ではない。
「逃げるか……」
「そうしたいのはヤマヤマなんだけどね。うちのエルフたちのなかには、年寄りもいるし、子供だっている。すぐには逃げられないわ。アルテミスさまだって、もうそんなに体力がないのよ」
「守ってやりたいが、オレはあまりチカラが残っていない。それに10万もの数となると……」
抑えられるか怪しい。
オレひとりなら決死の覚悟で戦っても良いが、《紅蓮教》の信徒たちもいるのだ。
「怪物城に来てくれない?」
「怪物城?」
「このすぐ近くにある。エルフの保有する古代技術品よ」
「ここには古代技術品があるのか」
「それを動かすことが出来れば、無事にここから逃げ切ることが出来ると思う」
「動かすと言っても、どうやって動かすんだ?」
「聖火台に火を灯せば動くそうよ。そこにアルテミスさまもいるから」
てめェ、適当なこと言って魔神さまに、もしものことがあったら承知しねェぞ――とレイアはドスをきかせていた。
もともと盗賊だった影響かどうかは知らないが、レイアはすこしチンピラ染みたところがある気がする。
「わかってる。3大神グングニエルを倒して、エルフたちを解放してくれたんだもの。この恩はゼッタイに忘れないわ。でも今は、付いて来て。案内するから」
と、カザハナは歩き出した。
オレたちは、それにつづくことにした。
聖火台があるのなら、なおさら行かないわけにはいかない。
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