《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
25-2.魔法の病
「難しい病気です」
と、医者はそう言った。
倒れたプロメテを、寝室棟にあるプロメテの私室に運び込んだ。運び込んだと言っても、オレが運んだわけじゃない。運んだのはレイアだ。
プロメテをベッドに寝かして、医者に診てもらうことにした。
修道士のなかには医者がいるのだ。常日頃から修道士たちの病気やケガは、その医者が診てくれることになっている。
「難しいというのは、具体的にどういう意味だ?」
と、オレは尋ねた。
オレが入ったカンテラは今、エイブラハングが持ってくれている。
プロメテに抱えてもらうことが多いため、エイブラハングに抱えてもらうと、視界が普段よりも高いものになる。
「ふつうの人間の病ではありませんな」
クマみたいに大柄で、毛深い医者だった。眉が太いわりには、目が点のように小さかった。その目を何度も瞬かせていた。
「プロメテは人間だろう」
「いえいえ。大司教さまは、いちおうオルフェス最後の魔術師です。その身に魔力を宿された御方ですから」
「魔法に関する病ということか?」
すこし疲れたのだろうと甘く見ていたのだが、思いのほか深刻そうなので、虚を突かれた気持ちだった。
「そのようですな。私も魔法に関してはあまり知識を持っていないので、詳しくはわからんのですが、どうやら体内の魔力を酷く消耗しておられるようです。ふつうの人間とはまた違った弱り方をしておられる」
思い返してみれば、ここ最近たしかにプロメテの負担は大きかったかもしれない。
毎朝、鐘楼の火を灯すことだって欠かすことはなかった。チロ子爵に水没させられたこともあったし、なにより、プロメテはタリスマンを作るために、魔力を費やしていたようだった。
オレが魔神であることに、プレッシャーを覚えるように、プロメテも何か精神的な重圧をおぼえていた可能性もある。
迂闊だった。と、オレは悔いた。
ずっと一緒にいるから、プロメテの異変には敏感なつもりだった。
今回は気づくことが出来なかった。
プロメテはムリをしていたのだろうか?
わからない。
プロメテは自分の苦痛を、あまり口に出すタイプではない。辛くてもムリして笑っている癖がある。
「治らないのか? オレのチカラでどうにかならないだろうか?」
「暗闇症候群とはわけが違いますからね。さきほども言いましたが、私とて、魔法に関することはあまり詳しくないので」
「まさか命にかかわるということはないだろうな? このまま起きないということも?」
「申し訳ありません。それも私にはわかりません。無力な私をお許しください」
と、医者は深々と頭をさげた。
ただ焦ってしまっただけなのだが、オレのその態度が、医者を怖れさせてしまったらしかった。
「問い詰めるような言い方をして悪かったな。つい気が急いてしまった。プロメテを診てくれてありがとう」
「いえ。こちらこそ、大司教さまに何もしてあげられなくて残念です。魔力を回復できるような手段があると良いのですが」
医者はそう言い残すと、一礼して部屋を出て行った。
部屋にはレイアとエイブラハングとオレの3人。そして寝たきりにプロメテが残されることになった。
「おいおい。どうすんだよ。医者でもわかんねェなんてよ」
と、レイアが言う。
「仕方あるまい。魔術師に関することは、我々にはわからないのだ」
と、エイブラハングが返す。
「仕方ねェ――って、この薄情者が。それでプロメテの嬢ちゃんが死んじまったらどうすンだよ」 と、レイアがエイブラハングの胸ぐらをつかんだ。
「見捨てるというわけじゃない。でも、助ける方法がわからないんだから、仕方ないだろう」
と、エイブラハングも、レイアの胸ぐらをつかみ返していた。
「静かに。プロメテの身に障るかもしれん」
と、オレが注意すると、ふたりとも悄然として「すまねェ」「申し訳ありません」と、返してきた。
しかし困った。
あらためてプロメテの寝顔を見つめた。穏やかそうに眠っていて、苦しそうな様子ではなかった。
それだけが救いだ。
「診察ミスということはないでしょうか? 実はただ眠っているだけだとか?」
「だと良いが、いま思えば変な倒れ方だったからな」
「解決方法につながるかは、わかりませんが、ひとつ提案があります」
と、エイブラハングが言った。
「薬でもあるのか?」
「いえ。薬はありませんが、この都市シェークスにも、黒狩人組合の支部があります」
「あるにはあるが、それがどうした?」
「そこに行ってみれば、もしかすると何か情報をつかむことが出来るかもしれません。黒狩人組合には、いろんな情報が入って来ますから」
「そうか。ならオレも行ってみよう」
「魔神さまもですか?」
このまま、ジッとしていることなんて、オレには出来そうになかった。
プロメテの異変に気付けなかった失態の代わりに、何か自分にもできることが欲しかった。
「チョウド、あれを試してみる良い機会でもあるしな」
ドワーフたちが運んできてくれた、超蒸気装甲。あれをまとえば、人の形を得ることが出来る。
と、医者はそう言った。
倒れたプロメテを、寝室棟にあるプロメテの私室に運び込んだ。運び込んだと言っても、オレが運んだわけじゃない。運んだのはレイアだ。
プロメテをベッドに寝かして、医者に診てもらうことにした。
修道士のなかには医者がいるのだ。常日頃から修道士たちの病気やケガは、その医者が診てくれることになっている。
「難しいというのは、具体的にどういう意味だ?」
と、オレは尋ねた。
オレが入ったカンテラは今、エイブラハングが持ってくれている。
プロメテに抱えてもらうことが多いため、エイブラハングに抱えてもらうと、視界が普段よりも高いものになる。
「ふつうの人間の病ではありませんな」
クマみたいに大柄で、毛深い医者だった。眉が太いわりには、目が点のように小さかった。その目を何度も瞬かせていた。
「プロメテは人間だろう」
「いえいえ。大司教さまは、いちおうオルフェス最後の魔術師です。その身に魔力を宿された御方ですから」
「魔法に関する病ということか?」
すこし疲れたのだろうと甘く見ていたのだが、思いのほか深刻そうなので、虚を突かれた気持ちだった。
「そのようですな。私も魔法に関してはあまり知識を持っていないので、詳しくはわからんのですが、どうやら体内の魔力を酷く消耗しておられるようです。ふつうの人間とはまた違った弱り方をしておられる」
思い返してみれば、ここ最近たしかにプロメテの負担は大きかったかもしれない。
毎朝、鐘楼の火を灯すことだって欠かすことはなかった。チロ子爵に水没させられたこともあったし、なにより、プロメテはタリスマンを作るために、魔力を費やしていたようだった。
オレが魔神であることに、プレッシャーを覚えるように、プロメテも何か精神的な重圧をおぼえていた可能性もある。
迂闊だった。と、オレは悔いた。
ずっと一緒にいるから、プロメテの異変には敏感なつもりだった。
今回は気づくことが出来なかった。
プロメテはムリをしていたのだろうか?
わからない。
プロメテは自分の苦痛を、あまり口に出すタイプではない。辛くてもムリして笑っている癖がある。
「治らないのか? オレのチカラでどうにかならないだろうか?」
「暗闇症候群とはわけが違いますからね。さきほども言いましたが、私とて、魔法に関することはあまり詳しくないので」
「まさか命にかかわるということはないだろうな? このまま起きないということも?」
「申し訳ありません。それも私にはわかりません。無力な私をお許しください」
と、医者は深々と頭をさげた。
ただ焦ってしまっただけなのだが、オレのその態度が、医者を怖れさせてしまったらしかった。
「問い詰めるような言い方をして悪かったな。つい気が急いてしまった。プロメテを診てくれてありがとう」
「いえ。こちらこそ、大司教さまに何もしてあげられなくて残念です。魔力を回復できるような手段があると良いのですが」
医者はそう言い残すと、一礼して部屋を出て行った。
部屋にはレイアとエイブラハングとオレの3人。そして寝たきりにプロメテが残されることになった。
「おいおい。どうすんだよ。医者でもわかんねェなんてよ」
と、レイアが言う。
「仕方あるまい。魔術師に関することは、我々にはわからないのだ」
と、エイブラハングが返す。
「仕方ねェ――って、この薄情者が。それでプロメテの嬢ちゃんが死んじまったらどうすンだよ」 と、レイアがエイブラハングの胸ぐらをつかんだ。
「見捨てるというわけじゃない。でも、助ける方法がわからないんだから、仕方ないだろう」
と、エイブラハングも、レイアの胸ぐらをつかみ返していた。
「静かに。プロメテの身に障るかもしれん」
と、オレが注意すると、ふたりとも悄然として「すまねェ」「申し訳ありません」と、返してきた。
しかし困った。
あらためてプロメテの寝顔を見つめた。穏やかそうに眠っていて、苦しそうな様子ではなかった。
それだけが救いだ。
「診察ミスということはないでしょうか? 実はただ眠っているだけだとか?」
「だと良いが、いま思えば変な倒れ方だったからな」
「解決方法につながるかは、わかりませんが、ひとつ提案があります」
と、エイブラハングが言った。
「薬でもあるのか?」
「いえ。薬はありませんが、この都市シェークスにも、黒狩人組合の支部があります」
「あるにはあるが、それがどうした?」
「そこに行ってみれば、もしかすると何か情報をつかむことが出来るかもしれません。黒狩人組合には、いろんな情報が入って来ますから」
「そうか。ならオレも行ってみよう」
「魔神さまもですか?」
このまま、ジッとしていることなんて、オレには出来そうになかった。
プロメテの異変に気付けなかった失態の代わりに、何か自分にもできることが欲しかった。
「チョウド、あれを試してみる良い機会でもあるしな」
ドワーフたちが運んできてくれた、超蒸気装甲。あれをまとえば、人の形を得ることが出来る。
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