《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
22-2.裏切り?
セパタ王国王都の城――。
城の突出部から跳ね橋がおりている。そこを抜けると城の下中庭に入ることが出来る構造になっていた。
「魔神アラストルと、その大司教プロメテを捕えることが出来た。国王陛下にその身柄を引き渡したいゆえ、ここを通してもらいたいのじゃ」
跳ね橋にいた門兵に、メデュがそう言うことによって、城の下中庭に入れてもらうことが出来た。
「信用されているというのはホントウのようだな」
「トウゼンじゃ。なにせワラワはあの主神ティリリウスの血を引いているのじゃからな。ワラワが裏切るなんて、誰も思うておらんじゃろう」
「頼りになるよ」
「頼りになる? もっとホめてくりゃれ?」
と、目の舌を赤らめて、蕩けるような目を向けてきた。
無垢な少女の見た目にはそぐわず、爛熟した年増のような雰囲気をメデュは発していた。
意識してそんな雰囲気を発しているのならば、油断ならない少女である。
「う、うむ……。それでディーネはどこだ?」
と、メデュの発するその色気に呑み込まれてしまいそうになったので、オレはそう話をそらした。
「むぅ。連れない御方じゃ」
とメデュは、オレの入れられているカンテラに指を這わしてきた。
プロメテはメデュに触れられないようにするためか、すこしカンテラを引き寄せた。
「あいにくオレにはゆとりがないんでね。今はディーネの身が心配だ」
「それじゃあ、ディーネ伯爵を助けたら、ワラワとの結婚を承諾してくれるのかえ?」
「いや、それは……」
「うふふ。冗談じゃ」
「ッたく」
この手の冗談は、どう返せば良いのかわからない。なんだかメデュに弄ばれているような気がする。
「まだじゃ」
「まだとは?」
「もうひとつ城門棟を抜ける必要がある。ここは外郭下中庭にあたる部分じゃて。ディーネ伯爵が捕えられているのは、もうひとつ内側じゃ」
「また城門棟を抜けるのか」
メデュの助力によって、ここに至るまでの城門棟は支障なく通ることが出来ていた。が、いつまでウソが通じるかわからない。
メデュは自信を持っているようだが、裏切っていることが露見している可能性だってなくはない。
検閲のたびにハラハラするものがあった。
ここはセパタ王国王都。
オレにとっては、いちおう敵の巣の中――ということになる。
イザってときには、すぐにでも気炎万丈のチカラを使う心構えはしておく必要がある。
「心配しなくても大丈夫じゃ。ワラワが魔神さまを内郭中庭までみちびく。そこで魔神さまは本領を発揮して、ディーネ伯爵たちを救う。それだけの話じゃ」
メデュはつつましい胸を張ってそう言った。
「ああ」
ドン――ッ
馬車が大きく揺れた。
「何事じゃ?」
窓を開けて、メデュがそう問いかけた。
御者台に座っているのはゲイルとエイブラハングのふたりだ。エイブラハングが言葉を返してきた。
「どうやら私たちの魂胆がバレてしまったようです。王都の兵に囲まれてしまいました」
「ッたく、どこの所属じゃ。ワラワが説得する」 と、メデュがトビラを開けて出て行こうとした。
瞬間。
馬車に雷が落ちたような激しい衝撃があった。
自分のカラダが馬車のなかでグルグルと回転した。衝撃がおさまって、周りを見てみると馬車は横倒しになって、トビラが開いていた。
「またか。こういうのばっかりだな。プロメテ。メデュ。無事か?」
はい、大丈夫なのです――と、プロメテが返してきた。プロメテの姿を確認したが、出血などの見てわかるケガはないようだった。
一方、メデュのほうも外傷は見当たらなかったが、憤慨していた。
「どこかの部隊が、勘違いして攻撃を仕掛けてきおったな。ワラワが乗っているというのに、無礼なヤツじゃ。マッタクどこのどいつじゃ」
馬車は横に倒れていた。トビラは頭上にあるという構図になっていた。
メデュは座席を足掛かりによじのぼって、トビラから外に這い出た。プロメテもそれにならって、馬車から這い出た。
外――。
エイブラハングが言っていたように、馬車の周囲には兵があつまっていた。
オレとプロメテとメデュ。
そして御者台のほうにいたエイブラハングとゲイルの2人。
さらに後続の馬車から出てきたタルルとレイア。
都合7人は、王都の兵に完全に包囲されてしまっていた。
いや。
王都の兵だけではない。
白い法衣を着た連中もいた。あれは《聖白騎士団》だ。馬車を横倒しにしたチカラは、タリスマンによるものかもしれない。
「誰の命令を受けて、ワラワを攻撃したか!」
と、横倒しになっている馬車の上にて、ニオウダチになったメデュがそう問いかけた。
「私ですよ」
と、オレたちを取り囲む兵の群れのなかから出て来た者がいた。
灰色の髪をした青年だった。異様に大きな目がどんよりと垂れていた。なにより目を惹くのは、眉間にある傷だ。十字模様の傷がついていた。ヤケドの痕跡のように見える。
「むっ。司教オハルか。なにゆえこちらに攻撃を仕掛けたか。ワラワが乗っていたのじゃぞ」
「裏切り者には用はないんですよ」
「裏切りじゃと?」
「しかし大胆なことをしでかしたものです。まさか魔神アラストルを、ここまで運んでくるとは」
オハルはそう言うと、灰色に曇った目をオレのほうに向けてきた。
「魔神アラストルと大司教プロメテを捕えたゆえ、国王陛下のもとに連れてきたまでのことじゃ」
メデュは動じることなくそう言った。
「演技はもうけっこうですよ。どう見ても捕えられてはいない」
と、オハルは頭を振った。
どうやらオレたちの作戦は、見破られてしまっていたようだ。
メデュもさすがにシラを切り通すことは出来ないと判断したようだ。
「なんじゃ。オヌシ。ワラワの魂胆に気づいておったか」
と、肩をすくめていた。
「ディーネ伯爵を捕えた後、ほかの貴族たちの動きに注意していたんですよ。このタイミングで行動を起こす者のなかに、まだディーネ派の貴族がいるかもしれないと思ったのでね」
「貴様ごときに、魂胆を見抜かれるとは、ワラワも気を抜いてしまったもんじゃ」
「主神ティリリウスさまの血を引いておきながら、魔神アラストルに味方をするつもりですか。メデュ公爵さま」
「娘だからと言って、父の思うように動くと思うたら大間違いじゃ」
「いまならまだ戻れますよ。主神ティリリウスさまは寛大な御方です。謝れば許してくれることでしょう。魔神アラストルとオルフェス最後の魔術師、ふたりの身柄を引き渡してください」
オハルの言葉を受けたメデュは、その後ろにいるオレとプロメテのほうを振り返った。
ふたたびオハルのほうに向きなおると、メデュはオハルに返答した。
「お断りじゃ――と言ったら?」
「すでに歩廊に、多くの弩兵たちを構えさせています。裏切ると言うのならば、この場に矢の雨が降り注ぐことになります。《聖白騎士団》も多くおります。メデュ公爵も、ゲイル大隊長も、こちらに戻ってくる最後のチャンスですよ」
オハルはニタニタと笑いながらそう言った。
ゲイルの裏切りもすでに、看破されていたらしい。
「誰が父の許しなどこうものか。ワラワの神は自分で選ぶ」
それがメデュの答えだった。
が――。
「それじゃあオレは、そちら側に戻るとしましょうかね」
と、ゲイルはオハルのほうに味方をしてしまった。
「てめェ、裏切るつもりかよ。糞野郎が」
とか、
「この不義理者めッ」
などと――レイアとエイブラハングにさんざん罵倒されていたが、ゲイルは飄然とオハルのほうに歩み寄ってしまったのだった。
城の突出部から跳ね橋がおりている。そこを抜けると城の下中庭に入ることが出来る構造になっていた。
「魔神アラストルと、その大司教プロメテを捕えることが出来た。国王陛下にその身柄を引き渡したいゆえ、ここを通してもらいたいのじゃ」
跳ね橋にいた門兵に、メデュがそう言うことによって、城の下中庭に入れてもらうことが出来た。
「信用されているというのはホントウのようだな」
「トウゼンじゃ。なにせワラワはあの主神ティリリウスの血を引いているのじゃからな。ワラワが裏切るなんて、誰も思うておらんじゃろう」
「頼りになるよ」
「頼りになる? もっとホめてくりゃれ?」
と、目の舌を赤らめて、蕩けるような目を向けてきた。
無垢な少女の見た目にはそぐわず、爛熟した年増のような雰囲気をメデュは発していた。
意識してそんな雰囲気を発しているのならば、油断ならない少女である。
「う、うむ……。それでディーネはどこだ?」
と、メデュの発するその色気に呑み込まれてしまいそうになったので、オレはそう話をそらした。
「むぅ。連れない御方じゃ」
とメデュは、オレの入れられているカンテラに指を這わしてきた。
プロメテはメデュに触れられないようにするためか、すこしカンテラを引き寄せた。
「あいにくオレにはゆとりがないんでね。今はディーネの身が心配だ」
「それじゃあ、ディーネ伯爵を助けたら、ワラワとの結婚を承諾してくれるのかえ?」
「いや、それは……」
「うふふ。冗談じゃ」
「ッたく」
この手の冗談は、どう返せば良いのかわからない。なんだかメデュに弄ばれているような気がする。
「まだじゃ」
「まだとは?」
「もうひとつ城門棟を抜ける必要がある。ここは外郭下中庭にあたる部分じゃて。ディーネ伯爵が捕えられているのは、もうひとつ内側じゃ」
「また城門棟を抜けるのか」
メデュの助力によって、ここに至るまでの城門棟は支障なく通ることが出来ていた。が、いつまでウソが通じるかわからない。
メデュは自信を持っているようだが、裏切っていることが露見している可能性だってなくはない。
検閲のたびにハラハラするものがあった。
ここはセパタ王国王都。
オレにとっては、いちおう敵の巣の中――ということになる。
イザってときには、すぐにでも気炎万丈のチカラを使う心構えはしておく必要がある。
「心配しなくても大丈夫じゃ。ワラワが魔神さまを内郭中庭までみちびく。そこで魔神さまは本領を発揮して、ディーネ伯爵たちを救う。それだけの話じゃ」
メデュはつつましい胸を張ってそう言った。
「ああ」
ドン――ッ
馬車が大きく揺れた。
「何事じゃ?」
窓を開けて、メデュがそう問いかけた。
御者台に座っているのはゲイルとエイブラハングのふたりだ。エイブラハングが言葉を返してきた。
「どうやら私たちの魂胆がバレてしまったようです。王都の兵に囲まれてしまいました」
「ッたく、どこの所属じゃ。ワラワが説得する」 と、メデュがトビラを開けて出て行こうとした。
瞬間。
馬車に雷が落ちたような激しい衝撃があった。
自分のカラダが馬車のなかでグルグルと回転した。衝撃がおさまって、周りを見てみると馬車は横倒しになって、トビラが開いていた。
「またか。こういうのばっかりだな。プロメテ。メデュ。無事か?」
はい、大丈夫なのです――と、プロメテが返してきた。プロメテの姿を確認したが、出血などの見てわかるケガはないようだった。
一方、メデュのほうも外傷は見当たらなかったが、憤慨していた。
「どこかの部隊が、勘違いして攻撃を仕掛けてきおったな。ワラワが乗っているというのに、無礼なヤツじゃ。マッタクどこのどいつじゃ」
馬車は横に倒れていた。トビラは頭上にあるという構図になっていた。
メデュは座席を足掛かりによじのぼって、トビラから外に這い出た。プロメテもそれにならって、馬車から這い出た。
外――。
エイブラハングが言っていたように、馬車の周囲には兵があつまっていた。
オレとプロメテとメデュ。
そして御者台のほうにいたエイブラハングとゲイルの2人。
さらに後続の馬車から出てきたタルルとレイア。
都合7人は、王都の兵に完全に包囲されてしまっていた。
いや。
王都の兵だけではない。
白い法衣を着た連中もいた。あれは《聖白騎士団》だ。馬車を横倒しにしたチカラは、タリスマンによるものかもしれない。
「誰の命令を受けて、ワラワを攻撃したか!」
と、横倒しになっている馬車の上にて、ニオウダチになったメデュがそう問いかけた。
「私ですよ」
と、オレたちを取り囲む兵の群れのなかから出て来た者がいた。
灰色の髪をした青年だった。異様に大きな目がどんよりと垂れていた。なにより目を惹くのは、眉間にある傷だ。十字模様の傷がついていた。ヤケドの痕跡のように見える。
「むっ。司教オハルか。なにゆえこちらに攻撃を仕掛けたか。ワラワが乗っていたのじゃぞ」
「裏切り者には用はないんですよ」
「裏切りじゃと?」
「しかし大胆なことをしでかしたものです。まさか魔神アラストルを、ここまで運んでくるとは」
オハルはそう言うと、灰色に曇った目をオレのほうに向けてきた。
「魔神アラストルと大司教プロメテを捕えたゆえ、国王陛下のもとに連れてきたまでのことじゃ」
メデュは動じることなくそう言った。
「演技はもうけっこうですよ。どう見ても捕えられてはいない」
と、オハルは頭を振った。
どうやらオレたちの作戦は、見破られてしまっていたようだ。
メデュもさすがにシラを切り通すことは出来ないと判断したようだ。
「なんじゃ。オヌシ。ワラワの魂胆に気づいておったか」
と、肩をすくめていた。
「ディーネ伯爵を捕えた後、ほかの貴族たちの動きに注意していたんですよ。このタイミングで行動を起こす者のなかに、まだディーネ派の貴族がいるかもしれないと思ったのでね」
「貴様ごときに、魂胆を見抜かれるとは、ワラワも気を抜いてしまったもんじゃ」
「主神ティリリウスさまの血を引いておきながら、魔神アラストルに味方をするつもりですか。メデュ公爵さま」
「娘だからと言って、父の思うように動くと思うたら大間違いじゃ」
「いまならまだ戻れますよ。主神ティリリウスさまは寛大な御方です。謝れば許してくれることでしょう。魔神アラストルとオルフェス最後の魔術師、ふたりの身柄を引き渡してください」
オハルの言葉を受けたメデュは、その後ろにいるオレとプロメテのほうを振り返った。
ふたたびオハルのほうに向きなおると、メデュはオハルに返答した。
「お断りじゃ――と言ったら?」
「すでに歩廊に、多くの弩兵たちを構えさせています。裏切ると言うのならば、この場に矢の雨が降り注ぐことになります。《聖白騎士団》も多くおります。メデュ公爵も、ゲイル大隊長も、こちらに戻ってくる最後のチャンスですよ」
オハルはニタニタと笑いながらそう言った。
ゲイルの裏切りもすでに、看破されていたらしい。
「誰が父の許しなどこうものか。ワラワの神は自分で選ぶ」
それがメデュの答えだった。
が――。
「それじゃあオレは、そちら側に戻るとしましょうかね」
と、ゲイルはオハルのほうに味方をしてしまった。
「てめェ、裏切るつもりかよ。糞野郎が」
とか、
「この不義理者めッ」
などと――レイアとエイブラハングにさんざん罵倒されていたが、ゲイルは飄然とオハルのほうに歩み寄ってしまったのだった。
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