《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

20-1.新たな仲間

『魔神さま。御無事でなによりです』
『おかえりなさいませ』
『お怪我はありませんか?』


 修道士たちが、オレの帰りを迎えてくれた。
それと同時に、
『大司教さまも御無事でなによりです』
 という言葉もあった。


 オレだけじゃなくて、プロメテを心配していた者も多くいたようだ。プロメテはオレの威を借っているだけだと言っていた。そして必要とされなくなることを怖れていた。が、そんなことにはならないだろう、とオレは思う。


 修道士たちは、プロメテのこともひとりの人間として慕っているのだ。


 礼拝堂。
 オレは上座にある石台ーー祭壇に乗せられることになった。


 いつもオレは、ここから信徒たちをヘイゲイすることになる。


 今日も修道士たちは礼拝堂の長椅子に腰かけていた。修道士ではない信徒たちの多くも、オレたちの身を案じて礼拝堂に詰めかけていた。


「魔神さまのことだ。無事だとは思ってたぜ」
 と、最前列にいたレイアがそう言った。


「良く言う。貴様もずいぶんと慌てていたくせに」
 と、エイブラハングがレイアのことを揶揄していた。


「はぁ? てめェに言われたくねェよ」


「魔神さまの身を案じるのは信徒としてトウゼンのことだ」


 とふたりは他愛もない言い争いをはじめていた。


 外のチロ子爵の手勢は、チロ子爵が死んだことによって潰走したようだ。


 ディーネへの忠誠心の強い騎士たちが、残党を捕縛したことによって、騒ぎはすでにおさまっていた。


 しかしこれで万事解決したかというと、そうでもない。


「魔神さま、魔神さま」
 と、タルルが駆け寄ってきた。そしてオレの前にかしずいた。


「聞いてる。ディーネがさらわれたそうだな」


 そう。
 その問題だ。


「はい。王都に連れて行かれてしまいました。近日中に処刑が行われるそうです。どうか、魔神さまのおチカラで、伯爵さまを助け出しては、いただけないでしょうか?」


「王都か……」


 ふむ、とオレはうなった。


「ダメでしょうか?」
 と、タルルが不安そうな表情で尋ねてきた。まるで捨てられた仔犬みたいな顔をしている。


「いや。オレだってディーネには世話になったんだし、助けたいという気持ちはある」


「魔神さまの助力があれば、心強いです」


「でも、助けると言っても、どう助けるかだな」


「王都に潜入するというのは?」
 と、タルルが提案した。


「いや。それはダメだ。オレは目立つからな」


 エイブラハングがオレを見つけ出してくれたことからもわかるように、オレの存在は異様に目立つのだ。


 私が出向いても良いがな――と、レイアが言った。


「まぁ、たしかにレイアなら王都に忍び込めるだろうが、今回こうして色々と手を回している相手は、あのロードリ公爵だ。2度も同じ手が通用するかどうか……」

 以前、レイアはロードリ公爵管轄の都市から、オレとプロメテのことを救い出してくれたことがあった。


 その手際は、鮮やかの一言に尽きる。が、すでにそのレイアの手口を知っているロードリが、なんの対策もしていないとも思えないのだ。ましてやディーネが連れて行かれた先は、王都。警備は万全だろう。


「では、正面から正々堂々と殴り込みですか?」


「まぁ、それしかないだろうな」


 乗り気にはなれない。
 王都はトウゼン、武装して軍を整えて迎え撃ってくることになるだろう。


 人間相手なら、いくらでも蹂躙できる自信はあるが、多くの被害を出してしまうことになる。ただでさえ邪教なんて言われているのだ。無闇に人死を出すのは得策とは思えないし、オレだって無闇に人を殺したくはない。


 ついさっきチロ子爵を燃やした。
 あれだって、仕方がなかったとはいえ、気持ちの良いものではない。


 でもまぁ、ディーネを助けるためだし、致し方ない。


「こういう作戦を立てるのは、伯爵さまが得意だったのですが、ディーネ伯爵さまが連れて行かれてしまったので」
 と、タルルは眉を「八」の字に垂らしていた。


「作戦会議も良いが、自己紹介をしても良いですかねェ」
 割り込んでくる声があった。


 巨体が、修道士たちをかき分けて入ってきた。すぐには誰かわからなかった。が、そのブロンドの髪と、うっすらと生えたアゴヒゲを見て思い出した。


 ゲイル・ガーディスである。
 ドワーフの里では、オレと一戦を交えた相手だった。


 今は味方になっているのだとタルルが説明をほどこしてくれた。


「ホントウに信用できるのか?」
 と、オレはタルルに問いかけた。


 ええ、たぶん――と、タルルは自信なさげにうなずいていた。


「まぁ、敵だったわけだし、オレが信用できないってのは仕方ないことでしょうね」
 と、ゲイルは肩をすくめていた。


 人を疑うようなことはしたくない。
 今までは来る者拒まずで、縋りくる者を受け入れていた。


 しかしこちとら、チロ子爵にだまされて、穴底に落とされたばかりなのだ。
 疑心暗鬼にならざるを得なかった。


 そう易々と他人を信用して、プロメテや仲間たちに危害が及ぶようなことは、今後は避けなければならない。


「目的はなんだ?」
 と、オレは問いかけた。


 ゲイルはオレの前にかしずいた。


 カラダが大きいため、カラダを丸める姿は、大きな岩のようだった。ディーネもかなり背が高いのだが、ゲイルの場合は肩幅もひろい。


「是非このオレを、《紅蓮教》の修道士に入れていただきたい」


「《紅蓮教》に?」


「魔神アラストルさまこそ、オレの標となる御方だ。どうかお導きください」


「レイアとエイブラハングはどう思う?」


 ゲイルのことを信用して良いのか判断をできかねる。
 困ったオレは、2人に意見を求めることにした。


「私は大丈夫だと思いますが」
 というのがエイブラハングの意見だった。


「私は信用できねェなァ」
 というのがレイアの意見で、キレイの真っ二つに別れてしまった。


 レイアとエイブラハングは意見が分かれたことで、またしても言い争っていた。このふたりは相性が良いのか悪いのか、良くわからない。当のゲイルは、その場にかしずいたままだった。

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