《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
18-4.新たな領主?
「その女の身柄は、王都に届けろ。くれぐれも逃げられんようにな」
チロ子爵がそう言った。
城。
中庭。
命令を受けた騎士たちが、ディーネのことをキャリッジに詰め込んでしまった。
黒々とした箱のようなキャリッジで、まるで牢屋のようなオドロオドロしさがあった。
(助け出すなら今が最後のチャンスかもしれない)
タルルはそう思った。
腰には剣をさしている。
この剣を抜いて、チロ子爵に斬りかかる。想定してみたのだが、刃が届くかはわからなかった。
チロ子爵の左右には、筋骨隆々の護衛が2人ついているのだ。
タルルなんかよりも、武芸に秀でたものだろう。すぐにタルルは、取り押さえられることになるだろう。
なによりディーネはタルルが戦うことを望んではいなかった。
(なら、ここは堪えどきなんだ)
と、歯噛みした。
中庭から城門棟を抜けて、ディーネを乗せた馬車が走って行く。
その馬車に跳びかかった騎士が4人いた。
4人とも、ディーネの忠実な騎士だった。
が、4人ともチロ子爵の手の者によって、その場に叩き伏せられることになった。そしてその場で首を斬られていた。
(危なかった……)
と、タルルは胸をナでおろした。
もしも斬りかかっていたら、タルルもあの騎士たちのようになっているところである。
周囲。
暗くて判然としないが、想像以上にチロ子爵の手の者が入り込んでいるようだった。
(ディーネ伯爵の寛大さが、仇になったんだ)
と、タルルはそう思う。
都市シェークスは難民の受け入れや、暗闇症候群の者を多く受け入れていた。
都市の検問に甘いところがあったのだ。
そのせいで、ロードリ公爵の手の者が、多く入り込むことになってしまったのだろう。
「おい。ガキ」
チロ子爵がそう言って、振り返った。
「は、はい」
「オレがこの都市の領主になった。そう伝えおけと言っただろ」
斬りかかってきた騎士のことを言っているのだろう。
「つ、伝えはしたんですが……」
「まぁ良い。魔神は始末した。伯爵も捕えた。これで都市シェークスも終わりだな」
「魔神……さまを?」
「騙して都市から連れ出して、絞首刑場の近くに掘った穴に落っことしたのさ。いまごろ水没して消滅してるところだろうぜ」
「はぁ……」
この都市シェークスを護り、3大神のひとりを倒した。あの神威を誇る魔神が殺された。それはタルルには信じられないことだった。
この程度の男に、
(殺せるわけがない)
と、思う。
「てめェも死にたくなかったら、大人しく言うことを聞くことだ。逆わねェなら、殺したりしねェからよ」
「は、はい」
「あとは《紅蓮教》の残党どもを掃除して終わりだ」
チロ子爵さまッ――と、黒い服を着た者が、馬に乗って駆けてきた。そして落馬するように、チロ子爵の前で倒れた。
おそらくチロ子爵の伝令官だ。
「どうした?」
「《紅蓮教》を攻撃したのですが、思いのほか抵抗が強く攻め落とせません。また民衆の抵抗も並々ならぬものがあります」
「ッたく、たかが修道院に何を手間取ってやがる。あの修道院にはもはや魔神も魔術師もいないんだ。いっきに攻め落とせば良い」
「いえ、それが……思ったよりも抵抗が強くて……。エイブラハングとレイアと名乗る2人が、それがもう鬼神のような強さでありまして、とても手に負えません」
かしずいて報告している男の頭を、チロ子爵は踏みつけた。
「それは聞き捨てならねェなァ」
「も、申し訳ありません」
「鬼神だと? この世界で許されている神は《光神教》だけなんだよ。ほかに神は要らねェんだ」
報告に来た男の後頭部を、チロ子爵は勢いよく踏みつけた。男は「うっ」という呻きを最後に動かなくなってしまった。
死んだのかもしれない。
「オレはこれより、修道院に向かう。《紅蓮教》の信者の首を、すべて刎ねてやろうじゃねェか」
チロ子爵はそう言うと、伝令官が乗ってきた馬にまたがった。
そして城の中庭から、城門棟を抜けて出て行った。
修道院に向かったのだろう。
タルルも厩舎の馬を借りて、チロ子爵の後を追いかけることにした。
チロ子爵がそう言った。
城。
中庭。
命令を受けた騎士たちが、ディーネのことをキャリッジに詰め込んでしまった。
黒々とした箱のようなキャリッジで、まるで牢屋のようなオドロオドロしさがあった。
(助け出すなら今が最後のチャンスかもしれない)
タルルはそう思った。
腰には剣をさしている。
この剣を抜いて、チロ子爵に斬りかかる。想定してみたのだが、刃が届くかはわからなかった。
チロ子爵の左右には、筋骨隆々の護衛が2人ついているのだ。
タルルなんかよりも、武芸に秀でたものだろう。すぐにタルルは、取り押さえられることになるだろう。
なによりディーネはタルルが戦うことを望んではいなかった。
(なら、ここは堪えどきなんだ)
と、歯噛みした。
中庭から城門棟を抜けて、ディーネを乗せた馬車が走って行く。
その馬車に跳びかかった騎士が4人いた。
4人とも、ディーネの忠実な騎士だった。
が、4人ともチロ子爵の手の者によって、その場に叩き伏せられることになった。そしてその場で首を斬られていた。
(危なかった……)
と、タルルは胸をナでおろした。
もしも斬りかかっていたら、タルルもあの騎士たちのようになっているところである。
周囲。
暗くて判然としないが、想像以上にチロ子爵の手の者が入り込んでいるようだった。
(ディーネ伯爵の寛大さが、仇になったんだ)
と、タルルはそう思う。
都市シェークスは難民の受け入れや、暗闇症候群の者を多く受け入れていた。
都市の検問に甘いところがあったのだ。
そのせいで、ロードリ公爵の手の者が、多く入り込むことになってしまったのだろう。
「おい。ガキ」
チロ子爵がそう言って、振り返った。
「は、はい」
「オレがこの都市の領主になった。そう伝えおけと言っただろ」
斬りかかってきた騎士のことを言っているのだろう。
「つ、伝えはしたんですが……」
「まぁ良い。魔神は始末した。伯爵も捕えた。これで都市シェークスも終わりだな」
「魔神……さまを?」
「騙して都市から連れ出して、絞首刑場の近くに掘った穴に落っことしたのさ。いまごろ水没して消滅してるところだろうぜ」
「はぁ……」
この都市シェークスを護り、3大神のひとりを倒した。あの神威を誇る魔神が殺された。それはタルルには信じられないことだった。
この程度の男に、
(殺せるわけがない)
と、思う。
「てめェも死にたくなかったら、大人しく言うことを聞くことだ。逆わねェなら、殺したりしねェからよ」
「は、はい」
「あとは《紅蓮教》の残党どもを掃除して終わりだ」
チロ子爵さまッ――と、黒い服を着た者が、馬に乗って駆けてきた。そして落馬するように、チロ子爵の前で倒れた。
おそらくチロ子爵の伝令官だ。
「どうした?」
「《紅蓮教》を攻撃したのですが、思いのほか抵抗が強く攻め落とせません。また民衆の抵抗も並々ならぬものがあります」
「ッたく、たかが修道院に何を手間取ってやがる。あの修道院にはもはや魔神も魔術師もいないんだ。いっきに攻め落とせば良い」
「いえ、それが……思ったよりも抵抗が強くて……。エイブラハングとレイアと名乗る2人が、それがもう鬼神のような強さでありまして、とても手に負えません」
かしずいて報告している男の頭を、チロ子爵は踏みつけた。
「それは聞き捨てならねェなァ」
「も、申し訳ありません」
「鬼神だと? この世界で許されている神は《光神教》だけなんだよ。ほかに神は要らねェんだ」
報告に来た男の後頭部を、チロ子爵は勢いよく踏みつけた。男は「うっ」という呻きを最後に動かなくなってしまった。
死んだのかもしれない。
「オレはこれより、修道院に向かう。《紅蓮教》の信者の首を、すべて刎ねてやろうじゃねェか」
チロ子爵はそう言うと、伝令官が乗ってきた馬にまたがった。
そして城の中庭から、城門棟を抜けて出て行った。
修道院に向かったのだろう。
タルルも厩舎の馬を借りて、チロ子爵の後を追いかけることにした。
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