《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

18-4.新たな領主?

「その女の身柄は、王都に届けろ。くれぐれも逃げられんようにな」
 チロ子爵がそう言った。


 城。
 中庭。


 命令を受けた騎士たちが、ディーネのことをキャリッジに詰め込んでしまった。


 黒々とした箱のようなキャリッジで、まるで牢屋のようなオドロオドロしさがあった。


(助け出すなら今が最後のチャンスかもしれない)
 タルルはそう思った。


 腰には剣をさしている。


 この剣を抜いて、チロ子爵に斬りかかる。想定してみたのだが、刃が届くかはわからなかった。


 チロ子爵の左右には、筋骨隆々の護衛が2人ついているのだ。


 タルルなんかよりも、武芸に秀でたものだろう。すぐにタルルは、取り押さえられることになるだろう。


 なによりディーネはタルルが戦うことを望んではいなかった。


(なら、ここは堪えどきなんだ)
 と、歯噛みした。


 中庭から城門棟を抜けて、ディーネを乗せた馬車が走って行く。


 その馬車に跳びかかった騎士が4人いた。
 4人とも、ディーネの忠実な騎士だった。


 が、4人ともチロ子爵の手の者によって、その場に叩き伏せられることになった。そしてその場で首を斬られていた。


(危なかった……)
 と、タルルは胸をナでおろした。


 もしも斬りかかっていたら、タルルもあの騎士たちのようになっているところである。


 周囲。
 暗くて判然としないが、想像以上にチロ子爵の手の者が入り込んでいるようだった。


(ディーネ伯爵の寛大さが、仇になったんだ)
 と、タルルはそう思う。


 都市シェークスは難民の受け入れや、暗闇症候群の者を多く受け入れていた。


 都市の検問に甘いところがあったのだ。


 そのせいで、ロードリ公爵の手の者が、多く入り込むことになってしまったのだろう。


「おい。ガキ」


 チロ子爵がそう言って、振り返った。


「は、はい」


「オレがこの都市の領主になった。そう伝えおけと言っただろ」


 斬りかかってきた騎士のことを言っているのだろう。


「つ、伝えはしたんですが……」


「まぁ良い。魔神は始末した。伯爵も捕えた。これで都市シェークスも終わりだな」


「魔神……さまを?」


「騙して都市から連れ出して、絞首刑場の近くに掘った穴に落っことしたのさ。いまごろ水没して消滅してるところだろうぜ」


「はぁ……」


 この都市シェークスを護り、3大神のひとりを倒した。あの神威を誇る魔神が殺された。それはタルルには信じられないことだった。


 この程度の男に、
(殺せるわけがない)
 と、思う。


「てめェも死にたくなかったら、大人しく言うことを聞くことだ。逆わねェなら、殺したりしねェからよ」


「は、はい」


「あとは《紅蓮教》の残党どもを掃除して終わりだ」


 チロ子爵さまッ――と、黒い服を着た者が、馬に乗って駆けてきた。そして落馬するように、チロ子爵の前で倒れた。


 おそらくチロ子爵の伝令官だ。


「どうした?」


「《紅蓮教》を攻撃したのですが、思いのほか抵抗が強く攻め落とせません。また民衆の抵抗も並々ならぬものがあります」


「ッたく、たかが修道院に何を手間取ってやがる。あの修道院にはもはや魔神も魔術師もいないんだ。いっきに攻め落とせば良い」


「いえ、それが……思ったよりも抵抗が強くて……。エイブラハングとレイアと名乗る2人が、それがもう鬼神のような強さでありまして、とても手に負えません」


 かしずいて報告している男の頭を、チロ子爵は踏みつけた。


「それは聞き捨てならねェなァ」


「も、申し訳ありません」


「鬼神だと? この世界で許されている神は《光神教》だけなんだよ。ほかに神は要らねェんだ」


 報告に来た男の後頭部を、チロ子爵は勢いよく踏みつけた。男は「うっ」という呻きを最後に動かなくなってしまった。


 死んだのかもしれない。


「オレはこれより、修道院に向かう。《紅蓮教》の信者の首を、すべて刎ねてやろうじゃねェか」


 チロ子爵はそう言うと、伝令官が乗ってきた馬にまたがった。


 そして城の中庭から、城門棟を抜けて出て行った。


 修道院に向かったのだろう。
 タルルも厩舎の馬を借りて、チロ子爵の後を追いかけることにした。

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