《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
16-5.聖火台 其の弐
「よォ。大活躍だったそうじゃないか」
ヴァルにむかってヘラがそう言った。
ドワーフの里のなかでは勝利の祝杯があげられている。酒がふるまわれて、ドワーフたちはみんな赤ら顔になっていた。
洞窟全体に酒の匂いが満ちていて、その芳香だけでヴァルも酔ってしまいそうだった。
「ケガはもう良いの?」
「動ける程度にはなったよ」
ヘラの胸元には、包帯が巻きつけられていた。ヘラは松葉杖をついており、痛てて、と前かがみになっていた。
「座ろうか?」
「悪いな」
ヴァルが手を貸して、ヘラはその場に座り込んだ。
今回の勝利の祝杯のさいには、聖火台に炎が灯されることになっている。聖火台の石垣には、魔術師と魔神が上っているのが見て取れた。
ドワーフたちは、その聖火台を囲むように座っている。
「べつにたいした活躍はしてないよ。オレはただ、戦士になろうと必死になってただけでさ」
ヴァルはそう言った。
「謙遜すんなよ。レイアって女の人を、救ったんだろ」
「誰がそんなことを?」
「本人がそう言いふらしてるみたいだぜ」
「レイアさんが?」
「ヴァルってドワーフに命を救われたって、酔っ払いながら言いまわってる」
本心からそう言っているのか、酔っているからそう言っているのか、わからなかった。
(まぁ、どっちでも良いか)
と、思った。
「オレはもう戦士を目指すのはやめることにした。ヘラにもムリ言って悪かったよ」
「ムリ?」
「ムリヤリ《製鉄工場》に連れて行ってもらっただろ」
「あぁ……。でも、お前が来てくれなかったら、結果的にオレは敵に襲われて死んでたかもしれないしな。そういう意味では、オレもお前に助けられた」
「オレじゃないよ。助けたのはレイアさんだ」
「まぁ、そうなのかもしれないけど、お前がいたおかげで――ってのも多少はあるよ」
サンキュウな、とヘラは照れ臭そうにそう言った。
なんだか気恥ずかしくなって、ヴァルも「うん」と短く応じた。
「そう言えば、これ落としてたよ」
《輝光石》から削りだして作ったボルトを、ヴァルはヘラにわたした。
「悪い。落としてたのか」
「落としてたのは仕方ないよ。いろいろあったし」
「これでペティに、告白することが出来るぜ」
「ペティ?」
「ほら、ゲ・ズィの爺さんの孫娘だよ。可愛いんだよ、あの娘。まだチョット話したことがあるんだけどさ。どう思うよ? 告白成功すると思うか?」
「さあ。オレに聞かれても……」
と、ヴァルは首をかしげた。
「お前好きな人いない――って言ってたもんなぁ」
「……うん」
たしかにそう言った。
けれど今は、違う。
ヴァルにも好きな人が出来た。
しかし打ち明けるのは照れ臭いので、口には出さなかった。
「お前、里を出るんだろ」
「うん。レイアさんに付いて行くことにしたんだ。オレの手先が器用なのを買ってくれてさ」
「寂しくなるな」
「べつに今生の別れってわけじゃないし。オレはただ都市シェークスに行くだけだから。今後は都市シェークスとドワーフの里の関係も密接になるって聞いてるし」
ドワーフの里は今まで通り運営されることになるが、いちおうシェークスの属領ということになったのだ。
族長たちも、合意したと聞いている。ドワーフたちにも異論はない。
「たまには里に戻って来いよ」
「うん」
「灯るぞ」
ドワーフの里の聖火台。そこに魔術師が炎を灯した。里のなかが、いっきに明るく照らされることになった。《輝光石》なんかとは、比べものにならない光だった。
(あれが……)
と、ヴァルは目を細めた。
聖火台の前に立っている、オルフェス最後の魔術師と、魔神アラストルの姿を見た。
レイアも傾倒している《紅蓮教》の神だ。
ドワーフの避難民たちを守ってくれた。そのおかげで、ドワーフたちも魔神への感謝を抱く者が多くいる。
しかも、3大神を倒したという。絶対と思われた《光神教》。その一角が崩れたのだ。世界が変わりつつある。そう感じた。
「魔神さま、万歳!」
と、ドワーフの里のなかに、そう声が響きわたることになった。
ヴァルにむかってヘラがそう言った。
ドワーフの里のなかでは勝利の祝杯があげられている。酒がふるまわれて、ドワーフたちはみんな赤ら顔になっていた。
洞窟全体に酒の匂いが満ちていて、その芳香だけでヴァルも酔ってしまいそうだった。
「ケガはもう良いの?」
「動ける程度にはなったよ」
ヘラの胸元には、包帯が巻きつけられていた。ヘラは松葉杖をついており、痛てて、と前かがみになっていた。
「座ろうか?」
「悪いな」
ヴァルが手を貸して、ヘラはその場に座り込んだ。
今回の勝利の祝杯のさいには、聖火台に炎が灯されることになっている。聖火台の石垣には、魔術師と魔神が上っているのが見て取れた。
ドワーフたちは、その聖火台を囲むように座っている。
「べつにたいした活躍はしてないよ。オレはただ、戦士になろうと必死になってただけでさ」
ヴァルはそう言った。
「謙遜すんなよ。レイアって女の人を、救ったんだろ」
「誰がそんなことを?」
「本人がそう言いふらしてるみたいだぜ」
「レイアさんが?」
「ヴァルってドワーフに命を救われたって、酔っ払いながら言いまわってる」
本心からそう言っているのか、酔っているからそう言っているのか、わからなかった。
(まぁ、どっちでも良いか)
と、思った。
「オレはもう戦士を目指すのはやめることにした。ヘラにもムリ言って悪かったよ」
「ムリ?」
「ムリヤリ《製鉄工場》に連れて行ってもらっただろ」
「あぁ……。でも、お前が来てくれなかったら、結果的にオレは敵に襲われて死んでたかもしれないしな。そういう意味では、オレもお前に助けられた」
「オレじゃないよ。助けたのはレイアさんだ」
「まぁ、そうなのかもしれないけど、お前がいたおかげで――ってのも多少はあるよ」
サンキュウな、とヘラは照れ臭そうにそう言った。
なんだか気恥ずかしくなって、ヴァルも「うん」と短く応じた。
「そう言えば、これ落としてたよ」
《輝光石》から削りだして作ったボルトを、ヴァルはヘラにわたした。
「悪い。落としてたのか」
「落としてたのは仕方ないよ。いろいろあったし」
「これでペティに、告白することが出来るぜ」
「ペティ?」
「ほら、ゲ・ズィの爺さんの孫娘だよ。可愛いんだよ、あの娘。まだチョット話したことがあるんだけどさ。どう思うよ? 告白成功すると思うか?」
「さあ。オレに聞かれても……」
と、ヴァルは首をかしげた。
「お前好きな人いない――って言ってたもんなぁ」
「……うん」
たしかにそう言った。
けれど今は、違う。
ヴァルにも好きな人が出来た。
しかし打ち明けるのは照れ臭いので、口には出さなかった。
「お前、里を出るんだろ」
「うん。レイアさんに付いて行くことにしたんだ。オレの手先が器用なのを買ってくれてさ」
「寂しくなるな」
「べつに今生の別れってわけじゃないし。オレはただ都市シェークスに行くだけだから。今後は都市シェークスとドワーフの里の関係も密接になるって聞いてるし」
ドワーフの里は今まで通り運営されることになるが、いちおうシェークスの属領ということになったのだ。
族長たちも、合意したと聞いている。ドワーフたちにも異論はない。
「たまには里に戻って来いよ」
「うん」
「灯るぞ」
ドワーフの里の聖火台。そこに魔術師が炎を灯した。里のなかが、いっきに明るく照らされることになった。《輝光石》なんかとは、比べものにならない光だった。
(あれが……)
と、ヴァルは目を細めた。
聖火台の前に立っている、オルフェス最後の魔術師と、魔神アラストルの姿を見た。
レイアも傾倒している《紅蓮教》の神だ。
ドワーフの避難民たちを守ってくれた。そのおかげで、ドワーフたちも魔神への感謝を抱く者が多くいる。
しかも、3大神を倒したという。絶対と思われた《光神教》。その一角が崩れたのだ。世界が変わりつつある。そう感じた。
「魔神さま、万歳!」
と、ドワーフの里のなかに、そう声が響きわたることになった。
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