《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

12-5ドワーフの聖火台

「と――いうわけです。これから出陣の準備をいたします」


「戦か……」


「おや。魔神さまは、戦が好きではありませんか?」


 オレの沈鬱な声音を聞き取ったようで、ディーネはそう尋ねてきた。


「まぁ、人がたくさん死んだりするようなことは、あんまり好きにはなれん」


「私は、戦が好きなんですよ」


「意外だな」


 知識があり、難民たちの受け入れも積極的におこなっている。そんなディーネが戦好きというのは意外だった。


「こう見えても、私は生まれながらの戦闘狂なんですよ。もしも男に生まれていたら、戦を求めて傭兵になっていたかもしれないと思うほどです。これは性分なのでしょうね」
 と、ディーネは、ふふっ、と笑った。


「オレはどうすれば良い?」


「魔神さまにも、協力していただきたい。災厄級からこの都市シェークスを護った、あの神威を貸していただきたいのです」


 おい、魔神さまにもしものことがあったら、どうするんだよ――と、レイアがディーネに言った。


「むろん。危険は承知です。が、どうしても《製鉄工場アイアン・ファクチュア》を手に入れておきたいのです。このタイミングでソマ帝国が、ドワーフの里に攻めるのも、《製鉄工場アイアン・ファクチュア》を、こちらに渡さぬようにする意図かと思われます」


「ふむ」


 ソマ帝国は排他主義の宗教国家であり、いずれはオレのことを排斥しようともしてくるのだろう。


 ならば、オレも出向くべきだろう。


「それに、ドワーフの里にあるのは、《製鉄工場アイアン・ファクチュア》だけではありません」


「ほかに何かあるのか?」


「このオルフェスにある聖火台。5つのうち1つがあります」


 その言葉に食いついたのは、プロメテだった。


「聖火台があるのですか」
 と、弾かれたように立ち上がっていた。


「ええ。ドワーフたちは、すこし特殊な一族です。オルフェス最後の魔術師にたいしても、風当りは強くないかと思われます」


「火を灯せば、ドワーフさんたちは、喜んでくれるでしょうか?」


「そりゃもう、喜ぶなんてものじゃないでしょう。聖火台に火が灯ることを、待ち焦がれているはずですよ」


 ディーネの言葉を受けて、プロメテは眉を「八」の字にして、オレのほうを見てきた。まるで飼い主の機嫌をうかがう仔犬のような顔をしている。


 召喚されているのはオレのほうだから、どちらかというと飼い主はプロメテのほうなんだけど。


「プロメテは、行きたいのか?」


「私は、聖火台に火を灯さなくてはなりません。それが魔術師のおかした罪の贖いなのです」


 そうだったな、とオレはうなずいた。
 そもそも、聖火台に火を灯すことこそが、オレの召喚された意味でもあるのだ。


「ならば、行こう」


「よろしいのでしょうか」


「ソマ帝国というのが、どういうものか気になるしな」


 すでにロードリ公爵の都市の聖火台には火が灯されている。


 残り4つ――。


 オレはプロメテの頭をナでることすら出来ない。オレに出来ることは、彼女の贖罪を手伝うぐらいだ。

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