《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
12-2.ディーネの魂胆
「これは朝食時でしたか。失礼しますよ」
と、入って来たのはディーネだった。
相変わらずヒゲを装着している。そのヒゲにはいったいどういう意味があるのか。いまだ聞けずにいる。
「なんだか変わったカッコウをしているな」
と、オレは尋ねた。
ディーネは緋色のコタルディをまとっていたのだ。
「これは法衣ですよ。私のはコタルディに仕立ててありますが、動きやすくしたものもあります」
「法衣?」
「《紅蓮教》の法衣ですよ。ヤッパリ法衣があるほうが統一感があって良いでしょう」
どうぞ、とディーネはレイアとプロメテにも、緋色の法衣をわたしていた。ふたりともサッソクその法衣を身にまとっていた。
「おや、食事中でしたか?」
と、ディーネは鼻をうごめかして言う。
「てめェも、食うか」
と、レイアが応じた。
レイアはディーネの事を苦手だというようなことを言っていたし、今でもあまり好きではないのだろう。
だが、世話になっている身だという自覚があるためか、あまりブッキラボウな態度はとらなくなっていた。
まぁ、言葉づかいには癖があるのだけれど。
「ほお。これは目玉焼きですか。魔神さまがいらっしゃると、料理にも幅が広がりますね。私にもひとついただけますか」
と、ディーネは、バスケットにあった卵をひとつ、器に落として、オレに焼いてくれるよう頼んできた。
「さすが博識だな。ディーネは目玉焼きについて知っていたか」
「歴史書にありましたから。かつて火の存在していた時代の料理のひとつです」
焼きあがった目玉焼きを差し出した。ディーネはフォークで一口サイズに切り分けに口に運んでいた。
「それで、ここに来たってことは、何かあったか?」
いくつかご報告させていただきたいことがありましてね、とディーネは空いていたイスに腰掛けてつづけた。
「まず、セパタ王国の国王陛下から使者が参りました」
「国王から……」
「どうやら、私のもとに魔神さまがいることを嗅ぎつけたようでしてね。魔神さまの身柄を引き渡せ――と、言われてしまいました」
ふふっ、とディーネは口元をおさえて笑いを漏らした。どうやらその仕草はディーネの癖らしい。
なんて返事したんだ――と、レイアの声音にはすこし緊張が帯びられていた。
オレも緊張をおぼえていた。
ディーネはオレにたいして好意的な態度でいてくれる。好意的どころか、妄信的とすら言える。
教会を建立してくれているほどだし、いずれは修道院にするとまで言っているのだ。
さりとて、根っこはあのロードリと同じセパタ王国の貴族である。ディーネが心の底で何を考えているのかは、いまだ読めないところがある。
「むろん、追い返しましたよ。魔神さまは危険きわまる存在なので、いまだ私の手元で、その素性を吟味する必要がある――と、適当な言い訳をしておきました」
「そうか」
安心した。
同じくレイアとプロメテも、胸をナでおろしていた。
「私が、魔神さまを突き出すとでも思いましたか?」
と、切り分けられた目玉焼きを、咀嚼していた。
「そりゃ、ディーネはこの土地を国王から授かっている身なんだろ。ふつうは差し出すべきじゃないか?」
「たしかにこのシェークスという都市は、国王陛下から恩給地としていただいた土地です。が、もともとクロイが多く、生活すらままならなかった土地を復興させたのは、私の父です。それに私も心血を注いできました。私はセパタ王国に、いつまでもかしずいている気はありませんから」
たしか以前にも、そのようなことを言っていた。
いずれは国として立つ――と。
もし本気で言っているのならば、見かけによらず毒を腹にこしらえた人物である。
「しかし、そんな言い分が、いつまでも通用せんだろう。いずれは強引にでもオレのことを奪いに来る」
「そうなりますね。しかし、セパタ王国はもういけません」
と、ディーネは頭を振った。
「いけないとは、どういう?」
「ソマ帝国から、セパタ王国の国王陛下に圧力がかけられているんですよ」
「ソマ帝国から圧力?」
「『魔神を差し出せ』と。その圧力に屈して、国王陛下は私に魔神を差し出せと言ってきている。ロードリが《天使の呼び笛》を持っていたということは、すでにセパタ王国内にもソマ帝国とつながっている者がいると見て間違いありません。むろん、どうなろうとも魔神さまを差し出すつもりはありませんよ」
魔神さまのチカラは、まだまだ必要ですから――と、ディーネは神妙な語調で言った。
「やはり、オレがここにいることが、ソマ帝国にも露見したか」
先日の災厄級の戦いでは、ずいぶんと派手にやってしまったのだ。
「おや。まだそのことを気にしておられたのですか? あれは都市を救った英雄的行為です。誇ることはあれど、気に病むことなどひとつもありません」
「あまりホめると、オレも調子に乗ってしまうぞ」
「ええ。ええ。どんどん調子に乗ってください。魔神さまのおチカラは、必ずや世界に変革をもたらしますよ」
「その気持ちに応えられると良いんだがな」
と、オレは身をすくめた。
全身の炎がすこしだけ小さくなる。オレは身をすくめているつもりなのだが、この動作の意図が、相手に伝わっているのかは怪しい。
「悪いお報せだけではありません。良い話もありますよ」
と、ディーネは蛋白虫にもフォークを差し入れていた。
オレは暖炉にいるために、どのようにして切り分けられているのかは良く見えない。虫が切り分けられているところなんて見たくもないが、気にはなる。
「良い話というのは?」
「剣が出来ました」
「剣?」
「ええ。実物を持ってきていますので、実際に見てもらったほうが良いでしょう。じきにタルルくんが持ってきてくれるはずなのですが……」
伯爵さまーッ、という声が外から聞こえてきた。
と、入って来たのはディーネだった。
相変わらずヒゲを装着している。そのヒゲにはいったいどういう意味があるのか。いまだ聞けずにいる。
「なんだか変わったカッコウをしているな」
と、オレは尋ねた。
ディーネは緋色のコタルディをまとっていたのだ。
「これは法衣ですよ。私のはコタルディに仕立ててありますが、動きやすくしたものもあります」
「法衣?」
「《紅蓮教》の法衣ですよ。ヤッパリ法衣があるほうが統一感があって良いでしょう」
どうぞ、とディーネはレイアとプロメテにも、緋色の法衣をわたしていた。ふたりともサッソクその法衣を身にまとっていた。
「おや、食事中でしたか?」
と、ディーネは鼻をうごめかして言う。
「てめェも、食うか」
と、レイアが応じた。
レイアはディーネの事を苦手だというようなことを言っていたし、今でもあまり好きではないのだろう。
だが、世話になっている身だという自覚があるためか、あまりブッキラボウな態度はとらなくなっていた。
まぁ、言葉づかいには癖があるのだけれど。
「ほお。これは目玉焼きですか。魔神さまがいらっしゃると、料理にも幅が広がりますね。私にもひとついただけますか」
と、ディーネは、バスケットにあった卵をひとつ、器に落として、オレに焼いてくれるよう頼んできた。
「さすが博識だな。ディーネは目玉焼きについて知っていたか」
「歴史書にありましたから。かつて火の存在していた時代の料理のひとつです」
焼きあがった目玉焼きを差し出した。ディーネはフォークで一口サイズに切り分けに口に運んでいた。
「それで、ここに来たってことは、何かあったか?」
いくつかご報告させていただきたいことがありましてね、とディーネは空いていたイスに腰掛けてつづけた。
「まず、セパタ王国の国王陛下から使者が参りました」
「国王から……」
「どうやら、私のもとに魔神さまがいることを嗅ぎつけたようでしてね。魔神さまの身柄を引き渡せ――と、言われてしまいました」
ふふっ、とディーネは口元をおさえて笑いを漏らした。どうやらその仕草はディーネの癖らしい。
なんて返事したんだ――と、レイアの声音にはすこし緊張が帯びられていた。
オレも緊張をおぼえていた。
ディーネはオレにたいして好意的な態度でいてくれる。好意的どころか、妄信的とすら言える。
教会を建立してくれているほどだし、いずれは修道院にするとまで言っているのだ。
さりとて、根っこはあのロードリと同じセパタ王国の貴族である。ディーネが心の底で何を考えているのかは、いまだ読めないところがある。
「むろん、追い返しましたよ。魔神さまは危険きわまる存在なので、いまだ私の手元で、その素性を吟味する必要がある――と、適当な言い訳をしておきました」
「そうか」
安心した。
同じくレイアとプロメテも、胸をナでおろしていた。
「私が、魔神さまを突き出すとでも思いましたか?」
と、切り分けられた目玉焼きを、咀嚼していた。
「そりゃ、ディーネはこの土地を国王から授かっている身なんだろ。ふつうは差し出すべきじゃないか?」
「たしかにこのシェークスという都市は、国王陛下から恩給地としていただいた土地です。が、もともとクロイが多く、生活すらままならなかった土地を復興させたのは、私の父です。それに私も心血を注いできました。私はセパタ王国に、いつまでもかしずいている気はありませんから」
たしか以前にも、そのようなことを言っていた。
いずれは国として立つ――と。
もし本気で言っているのならば、見かけによらず毒を腹にこしらえた人物である。
「しかし、そんな言い分が、いつまでも通用せんだろう。いずれは強引にでもオレのことを奪いに来る」
「そうなりますね。しかし、セパタ王国はもういけません」
と、ディーネは頭を振った。
「いけないとは、どういう?」
「ソマ帝国から、セパタ王国の国王陛下に圧力がかけられているんですよ」
「ソマ帝国から圧力?」
「『魔神を差し出せ』と。その圧力に屈して、国王陛下は私に魔神を差し出せと言ってきている。ロードリが《天使の呼び笛》を持っていたということは、すでにセパタ王国内にもソマ帝国とつながっている者がいると見て間違いありません。むろん、どうなろうとも魔神さまを差し出すつもりはありませんよ」
魔神さまのチカラは、まだまだ必要ですから――と、ディーネは神妙な語調で言った。
「やはり、オレがここにいることが、ソマ帝国にも露見したか」
先日の災厄級の戦いでは、ずいぶんと派手にやってしまったのだ。
「おや。まだそのことを気にしておられたのですか? あれは都市を救った英雄的行為です。誇ることはあれど、気に病むことなどひとつもありません」
「あまりホめると、オレも調子に乗ってしまうぞ」
「ええ。ええ。どんどん調子に乗ってください。魔神さまのおチカラは、必ずや世界に変革をもたらしますよ」
「その気持ちに応えられると良いんだがな」
と、オレは身をすくめた。
全身の炎がすこしだけ小さくなる。オレは身をすくめているつもりなのだが、この動作の意図が、相手に伝わっているのかは怪しい。
「悪いお報せだけではありません。良い話もありますよ」
と、ディーネは蛋白虫にもフォークを差し入れていた。
オレは暖炉にいるために、どのようにして切り分けられているのかは良く見えない。虫が切り分けられているところなんて見たくもないが、気にはなる。
「良い話というのは?」
「剣が出来ました」
「剣?」
「ええ。実物を持ってきていますので、実際に見てもらったほうが良いでしょう。じきにタルルくんが持ってきてくれるはずなのですが……」
伯爵さまーッ、という声が外から聞こえてきた。
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