《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
7-2.軍に囲まれて
「お頭ぁ」
と、命知らずにも、女の湯あみに突入してきたガリアンから報告があった。
この近くに軍勢がいる――ということだった。
「どこの軍だ?」
「それはわかりませんが、すげェ数なんですよ。チョット窓を見てください」
「窓だぁ?」
レイアは窓辺に歩み寄った。
プロメテもオレのことを鳥籠にしまって、窓辺に連れて行ってくれた。その鳥籠というのは、ロードリに閉じ込められていたさいのもので、いまだにそれを活用している。
窓――。
雨粒が付着している。
外が暗いために、鏡のように反射して見えた。そこには風呂上りで火照っているレイアと、不安そうな表情をしているプロメテと、オレ自身の姿が投影されていた。
こうして自分の全身を見てみると、あらためて奇妙なカラダになってしまったものだと思い知らされる。
「開けるぜ」
レイアはその両開きになっている窓を開いた。
冷たい風が入り込んできた。暗闇が茫洋と広がっている。
そんな暗闇の向こうには、たしかに無数の《輝光石》が輝いているのだった。
「あれは――人だよな?」
と、オレが問う。
数千にすら及ぶと思われた。
「ああ。《輝光石》を携えている軍隊だろうな。まさかロードリ公爵が、性懲りもなく、これだけの数を差し向けてきやがったか」
「もしそうなら、逃げられそうにはないな」
オレのカラダは、赤々と燃えている。このカラダは必要とされることも多い。だが、逃げる隠れるといったことには、不都合きわまりない。この教会から漏れ出ている明かりは、向こうにも視認されているはずだ。
「万が一のときは、私たちが囮になる。そのあいだに魔神さまと魔術師の嬢ちゃんは逃げることだ」
と、レイアはその光を睨み据えて言った。
さっきまでのレイアとは一変して、研ぎ澄まされた刃のような鋭い光をやどしていた。盗賊として、それなりの修羅場をくぐり抜けてきたことを匂わせられる。
いや、とオレはかぶりを振った。
かぶりと言っても、オレのカラダは一頭身と言って差しつかえない。カラダ全体が揺れることになる。
「これ以上は、レイアに甘えるわけにはいかん」
普段は粗暴で軽口の多いレイアだが、その信仰心に偽りがないことは、オレはよく知っている。
守られる神など、必要ない。
神ならば、信徒を守らなくてはならない。
「だけど素直に、捕まるわけにもいかねェだろ」
「天使を倒したときのチカラを使えば、切りぬけられるかもしれん」
「使えるのか?」
「たぶんな」
あのときは無我夢中だったので、今度も上手く身体を巨大化できるかはわからない。が、この数から逃げようと思えば、その他には考えられない。
「あのときの魔神さまのチカラは、たしかにスゴかったな。だけど魔神さまは、人を殺すことには反対なんだろ。人にたいして、あのチカラを使えば、死んじまうかもしれねェぜ」
「致し方あるまい」
そりゃオレだって、無闇に人を殺したいわけじゃない。ロードリが召喚した天使だって、べつに殺そうと思ったわけではない。
いわば、正当防衛である――と、オレとしては弁解しておきたい。
その時ーー。
バァン、と教会のトビラを突き破るような勢いで、何かが跳びこんできた。
と、命知らずにも、女の湯あみに突入してきたガリアンから報告があった。
この近くに軍勢がいる――ということだった。
「どこの軍だ?」
「それはわかりませんが、すげェ数なんですよ。チョット窓を見てください」
「窓だぁ?」
レイアは窓辺に歩み寄った。
プロメテもオレのことを鳥籠にしまって、窓辺に連れて行ってくれた。その鳥籠というのは、ロードリに閉じ込められていたさいのもので、いまだにそれを活用している。
窓――。
雨粒が付着している。
外が暗いために、鏡のように反射して見えた。そこには風呂上りで火照っているレイアと、不安そうな表情をしているプロメテと、オレ自身の姿が投影されていた。
こうして自分の全身を見てみると、あらためて奇妙なカラダになってしまったものだと思い知らされる。
「開けるぜ」
レイアはその両開きになっている窓を開いた。
冷たい風が入り込んできた。暗闇が茫洋と広がっている。
そんな暗闇の向こうには、たしかに無数の《輝光石》が輝いているのだった。
「あれは――人だよな?」
と、オレが問う。
数千にすら及ぶと思われた。
「ああ。《輝光石》を携えている軍隊だろうな。まさかロードリ公爵が、性懲りもなく、これだけの数を差し向けてきやがったか」
「もしそうなら、逃げられそうにはないな」
オレのカラダは、赤々と燃えている。このカラダは必要とされることも多い。だが、逃げる隠れるといったことには、不都合きわまりない。この教会から漏れ出ている明かりは、向こうにも視認されているはずだ。
「万が一のときは、私たちが囮になる。そのあいだに魔神さまと魔術師の嬢ちゃんは逃げることだ」
と、レイアはその光を睨み据えて言った。
さっきまでのレイアとは一変して、研ぎ澄まされた刃のような鋭い光をやどしていた。盗賊として、それなりの修羅場をくぐり抜けてきたことを匂わせられる。
いや、とオレはかぶりを振った。
かぶりと言っても、オレのカラダは一頭身と言って差しつかえない。カラダ全体が揺れることになる。
「これ以上は、レイアに甘えるわけにはいかん」
普段は粗暴で軽口の多いレイアだが、その信仰心に偽りがないことは、オレはよく知っている。
守られる神など、必要ない。
神ならば、信徒を守らなくてはならない。
「だけど素直に、捕まるわけにもいかねェだろ」
「天使を倒したときのチカラを使えば、切りぬけられるかもしれん」
「使えるのか?」
「たぶんな」
あのときは無我夢中だったので、今度も上手く身体を巨大化できるかはわからない。が、この数から逃げようと思えば、その他には考えられない。
「あのときの魔神さまのチカラは、たしかにスゴかったな。だけど魔神さまは、人を殺すことには反対なんだろ。人にたいして、あのチカラを使えば、死んじまうかもしれねェぜ」
「致し方あるまい」
そりゃオレだって、無闇に人を殺したいわけじゃない。ロードリが召喚した天使だって、べつに殺そうと思ったわけではない。
いわば、正当防衛である――と、オレとしては弁解しておきたい。
その時ーー。
バァン、と教会のトビラを突き破るような勢いで、何かが跳びこんできた。
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