《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
6-3.……その迷いの払拭
『探し出せ。そう遠くへ行っておらんはずだ』
『魔神さまの火を目印にしろ』
『見つけ次第、魔術師を殺せ』
声が追いかけてきた。
どうやらもうこの地下通路に騎士たちが、入り込んできたようだ。
レイアたちはどうしたのだろうか。無事ならば良いが。いまはレイアの心配をしている場合ではない。
プロメテは足を引きずって、それでも前に進もうとしていた。その先は、オレが道を照らしている。だが、オレの輝きは騎士たちを誘う光にもなってしまう。
「止まれッ」
背後。
声をかけられた。
振り返る。
そこには騎士たちと、ロードリ公爵の姿があった。
「領主さま……」
と、プロメテは足を止めた。
どうやら領主じきじきに、地下水路までおりてきたようだ。ブロンドの髪に碧眼の若人。小奇麗にしている領主ロードリ。この古臭い水路では、場違いな雰囲気があった。
「脱獄するだけでなく、魔神さまを持ちだしやがって。この魔術師め。やはり魔術師など信用は出来ん」
「申し訳ありません。しかし私は、魔神さまのチカラをお借りして、この世界に火を灯したいのです」
「余計なことを。魔神さまは、オレの手元に置いておく。他の都市に火などくれてやるものか」
「独り占めは、良くありません」
「それは貴様にも言えることだ。貴様は魔神さまを独占しているではないか!」
ち、違います――と、プロメテは狼狽して言い返した。
「私は、世界に火を灯すために……」
「なんのために?」
「え?」
「なんのために、世界に火など灯すと言うのだ」
「魔術師の贖罪のため。世界の人々のため。そしていつかは、私のことを許してもらうために……」
「以前にも、うちの小隊長が提案したはずだ。そちらの魔神を差し出せば、オレの都市では迫害をやめるように命じてやる――と。それで何が不服なのだ」
ロードリがそう言って、1歩詰め寄った。
それに合わせて、プロメテは後ずさった。
「それでは贖罪にはなりません」
「人から好かれたいのだろう」
以前にもたしかに同じ提案をされている。
そしてプロメテはオレのことを差し出すか迷ったと言っていた。オレを差し出そうとしたことを、謝ってもいた。
オレとしてはロードリに使われるよりも、プロメテとともにいたい。
プロメテはオレのことを崇めてくれているし、召喚主でもある。いや。理屈ではない。なぜかプロメテから離れたくないという気持ちが、オレのなかにはあるのだ。
しかしオレがどう思おうと、プロメテがどう思っているかはわからない。
「いえ。それでも魔神さまは渡せません」
と、プロメテは強い語気で言い切った。
今度は、迷う様子すらなかった。
「ほお。人から好かれなくとも良いということか」
プロメテの語気に気圧されたかして、ロードリが頬をひくつかせていた。
「命令されて与えてもらう好意では意味がないのです。私は自分で友達を作ろうと思っています。レイアさんに、《紅蓮教団》のみなさんは、私のことを受け入れてくださいました」
「魔術師のくせに、1人前なことを言いやがる」
それに――と、プロメテはつづけた。
「私は、忘れていたのです」
「忘れていた?」
「魔神さまは、誰よりも最初に私を受け入れてくださった御方です。私の孤独に光を灯してくれた御方です。たとえワガママでも。私は魔神さまと、ともにいたい」
プロメテはそう言うと、照れ臭そうに笑ってオレを見つめてきた。
ふん――と、ロードリは鼻で笑った。
「まぁ良い。ならばチカラずくで奪い返すまでだ」
ロードリがアゴをしゃくった。
すると騎士たちが、プロメテに向かって襲いかかってきた。その手には剣や槍が握られていた。
「魔神さま、どうか私を御守りくださいませ」
プロメテは孤独だったのだ。親をなくして、世間から疎まれて、ひとり山奥でヒッソリと暮らしていた。
そこに――。
オレは生み落とされた。
炎の魔神アラストルとして転生した。
考えてみれば、寂しかったプロメテにはじめて寄り添ったのは、オレなのだ。
プロメテは、オレが入っている鳥籠のフタを開けた。
この娘が、オレに助けを求めている。
オレは神だ。
信じてくれる者がいるのならば、その気持ちに応える義務がある。
「うォォォ――ッ」
吠えた。
オレの声は、水路内に響きわたり、プロメテに押し寄せる騎士たちを怯ませた。そしてオレのカラダは、大火となった。
「ま、魔神さま、そのお姿は?」
と、尋ねてくるプロメテが瞠目していた。
そんなプロメテをオレは見下ろしていた。
火であることには違いないのだが、オレは人の形をなしていたのだった。
大きくふくらんだ胸部。巨木のような腕。まるで獣のような体躯を、火が形成しているのであった。
その体躯たるや、まさしく魔神である。
オレは騎士たちすらも見下ろすほどの大きさとなっていた。
「う、うわぁぁっ」
と、襲いかからんとしていた騎士たちはいっせいに逃げ出していった。
「こ、こら、逃げるなッ」
と、ロードリが逃げる騎士たちを引きとめていたが、その声を聞く者はいなかった。そしてロードリひとりが取り残されていた。
「ロードリ公爵。オレは人に危害をくわえるつもりはない。だが、プロメテに危害を加えようとするならば容赦はせん」
ロードリのなかには怯懦がある。
オレはそれを見抜いていた。
脅せば、それで済む。
そう思っていた。
「さすがは魔神アラストルと言うべきか。だが、これで終わりだと思うな。オレにだって切り札があるのだ」
ロードリはそう言うと、銀色に輝く笛を取り出した。
「あれは《天使の呼び笛》」
と、プロメテが言う。
「なんだそれは?」
「天使さまを召喚する笛です。お気を付けくださいませ」
『魔神さまの火を目印にしろ』
『見つけ次第、魔術師を殺せ』
声が追いかけてきた。
どうやらもうこの地下通路に騎士たちが、入り込んできたようだ。
レイアたちはどうしたのだろうか。無事ならば良いが。いまはレイアの心配をしている場合ではない。
プロメテは足を引きずって、それでも前に進もうとしていた。その先は、オレが道を照らしている。だが、オレの輝きは騎士たちを誘う光にもなってしまう。
「止まれッ」
背後。
声をかけられた。
振り返る。
そこには騎士たちと、ロードリ公爵の姿があった。
「領主さま……」
と、プロメテは足を止めた。
どうやら領主じきじきに、地下水路までおりてきたようだ。ブロンドの髪に碧眼の若人。小奇麗にしている領主ロードリ。この古臭い水路では、場違いな雰囲気があった。
「脱獄するだけでなく、魔神さまを持ちだしやがって。この魔術師め。やはり魔術師など信用は出来ん」
「申し訳ありません。しかし私は、魔神さまのチカラをお借りして、この世界に火を灯したいのです」
「余計なことを。魔神さまは、オレの手元に置いておく。他の都市に火などくれてやるものか」
「独り占めは、良くありません」
「それは貴様にも言えることだ。貴様は魔神さまを独占しているではないか!」
ち、違います――と、プロメテは狼狽して言い返した。
「私は、世界に火を灯すために……」
「なんのために?」
「え?」
「なんのために、世界に火など灯すと言うのだ」
「魔術師の贖罪のため。世界の人々のため。そしていつかは、私のことを許してもらうために……」
「以前にも、うちの小隊長が提案したはずだ。そちらの魔神を差し出せば、オレの都市では迫害をやめるように命じてやる――と。それで何が不服なのだ」
ロードリがそう言って、1歩詰め寄った。
それに合わせて、プロメテは後ずさった。
「それでは贖罪にはなりません」
「人から好かれたいのだろう」
以前にもたしかに同じ提案をされている。
そしてプロメテはオレのことを差し出すか迷ったと言っていた。オレを差し出そうとしたことを、謝ってもいた。
オレとしてはロードリに使われるよりも、プロメテとともにいたい。
プロメテはオレのことを崇めてくれているし、召喚主でもある。いや。理屈ではない。なぜかプロメテから離れたくないという気持ちが、オレのなかにはあるのだ。
しかしオレがどう思おうと、プロメテがどう思っているかはわからない。
「いえ。それでも魔神さまは渡せません」
と、プロメテは強い語気で言い切った。
今度は、迷う様子すらなかった。
「ほお。人から好かれなくとも良いということか」
プロメテの語気に気圧されたかして、ロードリが頬をひくつかせていた。
「命令されて与えてもらう好意では意味がないのです。私は自分で友達を作ろうと思っています。レイアさんに、《紅蓮教団》のみなさんは、私のことを受け入れてくださいました」
「魔術師のくせに、1人前なことを言いやがる」
それに――と、プロメテはつづけた。
「私は、忘れていたのです」
「忘れていた?」
「魔神さまは、誰よりも最初に私を受け入れてくださった御方です。私の孤独に光を灯してくれた御方です。たとえワガママでも。私は魔神さまと、ともにいたい」
プロメテはそう言うと、照れ臭そうに笑ってオレを見つめてきた。
ふん――と、ロードリは鼻で笑った。
「まぁ良い。ならばチカラずくで奪い返すまでだ」
ロードリがアゴをしゃくった。
すると騎士たちが、プロメテに向かって襲いかかってきた。その手には剣や槍が握られていた。
「魔神さま、どうか私を御守りくださいませ」
プロメテは孤独だったのだ。親をなくして、世間から疎まれて、ひとり山奥でヒッソリと暮らしていた。
そこに――。
オレは生み落とされた。
炎の魔神アラストルとして転生した。
考えてみれば、寂しかったプロメテにはじめて寄り添ったのは、オレなのだ。
プロメテは、オレが入っている鳥籠のフタを開けた。
この娘が、オレに助けを求めている。
オレは神だ。
信じてくれる者がいるのならば、その気持ちに応える義務がある。
「うォォォ――ッ」
吠えた。
オレの声は、水路内に響きわたり、プロメテに押し寄せる騎士たちを怯ませた。そしてオレのカラダは、大火となった。
「ま、魔神さま、そのお姿は?」
と、尋ねてくるプロメテが瞠目していた。
そんなプロメテをオレは見下ろしていた。
火であることには違いないのだが、オレは人の形をなしていたのだった。
大きくふくらんだ胸部。巨木のような腕。まるで獣のような体躯を、火が形成しているのであった。
その体躯たるや、まさしく魔神である。
オレは騎士たちすらも見下ろすほどの大きさとなっていた。
「う、うわぁぁっ」
と、襲いかからんとしていた騎士たちはいっせいに逃げ出していった。
「こ、こら、逃げるなッ」
と、ロードリが逃げる騎士たちを引きとめていたが、その声を聞く者はいなかった。そしてロードリひとりが取り残されていた。
「ロードリ公爵。オレは人に危害をくわえるつもりはない。だが、プロメテに危害を加えようとするならば容赦はせん」
ロードリのなかには怯懦がある。
オレはそれを見抜いていた。
脅せば、それで済む。
そう思っていた。
「さすがは魔神アラストルと言うべきか。だが、これで終わりだと思うな。オレにだって切り札があるのだ」
ロードリはそう言うと、銀色に輝く笛を取り出した。
「あれは《天使の呼び笛》」
と、プロメテが言う。
「なんだそれは?」
「天使さまを召喚する笛です。お気を付けくださいませ」
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