《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
4-4.今はまだ迷いのなか……
「この教会は、すでに包囲されている。大人しくそちらの魔神さまを、差し出してもらおうか」
魔術師の教会――。
騎士がなだれ込んできていた。
陣頭指揮を執っていたのは、領主のところにいた騎士の小隊長だった。
「都市の聖火台に炎は灯しました。そちらを利用すれば良いことです。魔神さまを、お渡しするわけにはいきません」
プロメテは毅然として言い放った。
「この魔術師め。炎の魔神さまを独占しようとする気だな。この腹黒い魔術師め!」
腹黒いと言われて、プロメテは怯んだようだった。
が、すぐに口を開いた。
「私は――私はもう役目を終えました。魔神さまを召喚することで、オルフェス最後の魔術師としての大役は終わりました。ですが、魔神さまは必要なのです。ほかの聖火台に、火を灯すために」
「そんなこと知ったことか、ロードリさまが、炎の魔神を御所望なのだ」
と、小隊長が1歩詰め寄ってくる。
だが、オルフェス最後の魔術師に怯えているのか、騎士たちの腰は引けていた。
「魔神さまのチカラを必要としているのは、こちらの都市だけではないのです。他の都市だって……それにレイアさんのお仲間だって……」
「他の国、他の都市に炎を与えてしまえば、我らの都市が不利になってしまうではないか。我らが都市の繁栄のため、魔神をよこせ」
「そんな身勝手な……」
「魔神を差し出せば、お前への迫害をやめるように、領主さまから命令を出してもらおうではないか」
「え……」
と、プロメテが戸惑いの声をあげた。
小隊長の言葉を受けたとき、プロメテのなかに逡巡が芽生えた。それが、オレにはハッキリとわかった。
「さあ、だから、その魔神をこちらに」
「ですが……」
と、まるで助けを求めるように、プロメテはオレのことを見つめてきた。
ウソに決まってるだろ――とレイアが言う。
だが、それでも――。
プロメテは困った表情で、オレのことを見つめていた。
この娘は、誰かから好かれるために、オレのことを召喚したのだ。
『私はただ、みんなに優しくしてもらいたいのですよ』
プロメテはそう言っていたのだ。
小隊長の提案は、プロメテにとっては非情に魅力的なものだろう。
それがたとえウソとわかっていたとしても、この娘は他人から好かれたいと望んでいる。
ごくり
と、プロメテが生唾を呑みこむ音が、オレのもとにまで聞こえてきた。
「さあ、こちらに」
と、小隊長がさらに1歩詰め寄ってくる。
それでホントウに迫害が終るというのならば、差し出されても良い。少女ひとりを幸せにできるならば、犠牲になる甲斐があるというものだ。
しかし、レイアのことがある。
レイアは《紅蓮党》の仲間の暗闇症候群を治すために、わざわざオレとプロメテを連れ出してくれたのだ。
ここでオレのことを、騎士に差し出してしまっては、レイアの努力が水の泡となってしまう。
刹那――。
教会の天井に開いている穴から、クロイが顔を覗かせた。クロイが、騎士たちを襲いはじめたのだった。
「チャンスだッ。今の内に!」
レイアはそう言うと、プロメテの手をつかんだ。
クロイが騎士たちを襲っているあいだに、教会から跳びだしたのだった。
魔術師の教会――。
騎士がなだれ込んできていた。
陣頭指揮を執っていたのは、領主のところにいた騎士の小隊長だった。
「都市の聖火台に炎は灯しました。そちらを利用すれば良いことです。魔神さまを、お渡しするわけにはいきません」
プロメテは毅然として言い放った。
「この魔術師め。炎の魔神さまを独占しようとする気だな。この腹黒い魔術師め!」
腹黒いと言われて、プロメテは怯んだようだった。
が、すぐに口を開いた。
「私は――私はもう役目を終えました。魔神さまを召喚することで、オルフェス最後の魔術師としての大役は終わりました。ですが、魔神さまは必要なのです。ほかの聖火台に、火を灯すために」
「そんなこと知ったことか、ロードリさまが、炎の魔神を御所望なのだ」
と、小隊長が1歩詰め寄ってくる。
だが、オルフェス最後の魔術師に怯えているのか、騎士たちの腰は引けていた。
「魔神さまのチカラを必要としているのは、こちらの都市だけではないのです。他の都市だって……それにレイアさんのお仲間だって……」
「他の国、他の都市に炎を与えてしまえば、我らの都市が不利になってしまうではないか。我らが都市の繁栄のため、魔神をよこせ」
「そんな身勝手な……」
「魔神を差し出せば、お前への迫害をやめるように、領主さまから命令を出してもらおうではないか」
「え……」
と、プロメテが戸惑いの声をあげた。
小隊長の言葉を受けたとき、プロメテのなかに逡巡が芽生えた。それが、オレにはハッキリとわかった。
「さあ、だから、その魔神をこちらに」
「ですが……」
と、まるで助けを求めるように、プロメテはオレのことを見つめてきた。
ウソに決まってるだろ――とレイアが言う。
だが、それでも――。
プロメテは困った表情で、オレのことを見つめていた。
この娘は、誰かから好かれるために、オレのことを召喚したのだ。
『私はただ、みんなに優しくしてもらいたいのですよ』
プロメテはそう言っていたのだ。
小隊長の提案は、プロメテにとっては非情に魅力的なものだろう。
それがたとえウソとわかっていたとしても、この娘は他人から好かれたいと望んでいる。
ごくり
と、プロメテが生唾を呑みこむ音が、オレのもとにまで聞こえてきた。
「さあ、こちらに」
と、小隊長がさらに1歩詰め寄ってくる。
それでホントウに迫害が終るというのならば、差し出されても良い。少女ひとりを幸せにできるならば、犠牲になる甲斐があるというものだ。
しかし、レイアのことがある。
レイアは《紅蓮党》の仲間の暗闇症候群を治すために、わざわざオレとプロメテを連れ出してくれたのだ。
ここでオレのことを、騎士に差し出してしまっては、レイアの努力が水の泡となってしまう。
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クロイが騎士たちを襲っているあいだに、教会から跳びだしたのだった。
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