《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

4-4.今はまだ迷いのなか……

「この教会は、すでに包囲されている。大人しくそちらの魔神さまを、差し出してもらおうか」


 魔術師の教会――。
 騎士がなだれ込んできていた。


 陣頭指揮を執っていたのは、領主のところにいた騎士の小隊長だった。


「都市の聖火台に炎は灯しました。そちらを利用すれば良いことです。魔神さまを、お渡しするわけにはいきません」


 プロメテは毅然として言い放った。


「この魔術師め。炎の魔神さまを独占しようとする気だな。この腹黒い魔術師め!」


 腹黒いと言われて、プロメテは怯んだようだった。
 が、すぐに口を開いた。


「私は――私はもう役目を終えました。魔神さまを召喚することで、オルフェス最後の魔術師としての大役は終わりました。ですが、魔神さまは必要なのです。ほかの聖火台に、火を灯すために」


「そんなこと知ったことか、ロードリさまが、炎の魔神を御所望なのだ」
 と、小隊長が1歩詰め寄ってくる。


 だが、オルフェス最後の魔術師に怯えているのか、騎士たちの腰は引けていた。


「魔神さまのチカラを必要としているのは、こちらの都市だけではないのです。他の都市だって……それにレイアさんのお仲間だって……」


「他の国、他の都市に炎を与えてしまえば、我らの都市が不利になってしまうではないか。我らが都市の繁栄のため、魔神をよこせ」


「そんな身勝手な……」


「魔神を差し出せば、お前への迫害をやめるように、領主さまから命令を出してもらおうではないか」


「え……」
 と、プロメテが戸惑いの声をあげた。


 小隊長の言葉を受けたとき、プロメテのなかに逡巡が芽生えた。それが、オレにはハッキリとわかった。


「さあ、だから、その魔神をこちらに」


「ですが……」
 と、まるで助けを求めるように、プロメテはオレのことを見つめてきた。


 ウソに決まってるだろ――とレイアが言う。


 だが、それでも――。
 プロメテは困った表情で、オレのことを見つめていた。
 この娘は、誰かから好かれるために、オレのことを召喚したのだ。


『私はただ、みんなに優しくしてもらいたいのですよ』
 プロメテはそう言っていたのだ。


 小隊長の提案は、プロメテにとっては非情に魅力的なものだろう。
 それがたとえウソとわかっていたとしても、この娘は他人から好かれたいと望んでいる。


 ごくり


 と、プロメテが生唾を呑みこむ音が、オレのもとにまで聞こえてきた。


「さあ、こちらに」
 と、小隊長がさらに1歩詰め寄ってくる。


 それでホントウに迫害が終るというのならば、差し出されても良い。少女ひとりを幸せにできるならば、犠牲になる甲斐があるというものだ。


 しかし、レイアのことがある。


 レイアは《紅蓮党》の仲間の暗闇症候群を治すために、わざわざオレとプロメテを連れ出してくれたのだ。


 ここでオレのことを、騎士に差し出してしまっては、レイアの努力が水の泡となってしまう。


 刹那――。
 教会の天井に開いている穴から、クロイが顔を覗かせた。クロイが、騎士たちを襲いはじめたのだった。


「チャンスだッ。今の内に!」
 レイアはそう言うと、プロメテの手をつかんだ。


 クロイが騎士たちを襲っているあいだに、教会から跳びだしたのだった。

「《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く