《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
4-3.旅のしたく
都市の外。
レイアの活躍によって、どうにか都市から脱することが出来た。
こちらに訪れたときとは、都市の風景が違っていた。
はじめて見たとき、都市は暗闇のなかにヒッソリとたたずんでいた。闇と同化していたと言っても過言ではない。ただ、《輝光石》と呼ばれる、輝く石だけが星屑のような輝きを放っていた。
しかし今の景色はどうか――。
「明るいな」
と、オレは呟きを漏らした。
都市はオレの分け与えた炎によって、赤々と輝いているのだ。周囲が暗いから、都市の炎がもたらす光が、余計に際立って見える。
「魔神さまの炎は、偉大なのですよ。ずーっと燃えてくれるのであります」
「あの聖火台の火は、消えないのか?」
「あの聖火台は魔力を外に逃がさない効果があるのです。魔神さまのおチカラは、あの聖火台に留まってくれるのですよ」
「すると、聖火台から火を移したりした場合は、消えてしまうというわけか」
「それでも、すこしは燃えてくれるはずなのです」
じゃあ、あの聖火台の火を種にして、火を使った生活が出来るようになるというわけだ。
暖も取れるし、肉だって焼けるし、クロイを払うことも出来る。
「オレのチカラが、すこしでも役に立ってくれるなら幸いだ」
「レイアさんも、ありがとうなのです」
よせよ、とレイアはさすがに疲れたのか樹木の根本に腰かけていた。
「私には私の目的があるんだ。さあ、約束だぜ。いっしょに来て《紅蓮党》のみんなの、助けてやって欲しいんだ」
「魔神さま、よろしいでしょうか」
と、プロメテが尋ねてきた。
「ああ。オレは構わないよ」
「魔神さまが了承してくれるなら、私にも異論はないのです。でも、すこしだけ待ってもらいたいのですよ。旅支度をするのです」
了解、とレイアは立ち上がった。
魔術師の教会に戻ることにした。
「おい、大丈夫なんだろうな。こんな場所を通って、道は合ってるんだろうな?」
と、レイアは情けない声を出した。
都市へ行くさいに通った山道を、教会に向けて引き返しているのだ。オレが通るのは2度目である。
通ると言っても、行きはカンテラの中にいただけだし、今は鳥籠のなかに入っているだけだ。自分の足で歩いているわけではない。
「心配ないのです。都市へ行くさいには、いつも通っていた道なのです」
と、プロメテは平然と言う。
「よくこんな道を通れるぜ」
と、レイアはすこし怯えているようだった。しきりに左右を確認している。そのたびに、赤毛が乱れていた。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ」
と、オレがそう尋ねた。
勇敢にもプロメテのことを救い出した女盗賊の様子とは一変していたので、怪訝に思ってそう尋ねた。
他意はなかったのだが、すこし挑発的な物言いになってしまった。
「私は、クロイが怖いんだよ。《紅蓮党》だけじゃなくて、私自身もやられちまってるから。トラウマになっちまった」
と、レイアはプロメテからあまり離れないように心掛けているようだった。
たしかにこの山には、クロイが多く潜んでいるようだった。巨大なヘビみたいな形状のクロイが、あちこちで蠢いている気配があった。
「レイアにも苦手なものがあるんだな」
「私をなんだと思ってるんだよ。魔神さまには苦手なものとか、ないのかよ」
「さあ――」
不意に尋ねられても、思いつかなかった。
転生するまえは、昆虫とかがあまり得意ではなかった気がする。が、あまり正確には覚えていない。まぁ、でも、クロイが怖いという気持ちは理解できる。
オレには襲って来ないとわかってから、すこしは恐怖も薄らいだ――というだけだ。
「うわっ。こっちに来やがるぜ」
と、レイアが前方を指差した。
人間の手のひらのような形状をしたクロイが、オレたちに掴みかかろうとしていた。が、クロイはオレの明かりを嫌ったようで、すぐに遠ざかって行った。
どうやらクロイというのは、姿形をあるていど、自在に変化させることができるらしい。
「安心しろ。どうやらあのバケモノどもは、オレの明かりに弱いらしいから」
「そ、そうか。クロイの連中は魔神さまがいれば、襲って来ないのか」
レイアは、プロメテの小さいカラダに隠れるようにしていた。頼もしかったレイアが、急にか弱い少女になってしまったかのようだった。
「どうやら、そうらしい」
「さすが魔神さま。頼もしいぜ」
と、レイアは安堵の息を吐いていた。
「プロメテは、大丈夫なのか?」
と、果敢にもクロイを気にせず進んでゆくプロメテに、オレはそう問いかけた。
「私、でありますか?」
「足が、痛いんだろう」
「ええ。ですがレイアさんに背負っていただいたおかげで、すこしはマシになりました。それにこの道は、歩きなれているので」
「そうか」
心配をかけないように、あえて強がっているのかとも思ったが、足取りはシッカリしている。
叩かれ慣れていると言っていたし、回復も早いのかもしれない。もし歩けないと言っても、どうすることも出来ないのが、オレの悲しいところである。
「病院とか、医者とかはいないのか?」
「都市に行けばいると思いますが、私のことを見てくれるような医者はいないのですよ。叩きだされてしまうのです」
「そっか」
魔術師への迫害は、そういうところにまで影響しているらしい。そして、そう言うということは、以前に叩きだされているのだろう。
教会――。
プロメテは、すぐに荷物をまとめた。
旅を出る準備は、事前にしていた様子だった。
都市を脱出するさいに着ていた帽子と鎧などは、もう必要ないだろうということで、その場に脱ぎ捨てていた。
「けっこう良い素材だし、私はまだ着ているよ」 と、レイアは依然としてその装備をまとっていた。
「魔神さま、薪なのですよ。どうぞ」
と、鳥籠のなかに入っているオレに、プロメテは薪を差し入れてくれた。
ありがたく、いただいた。薪をもらうと、腹が満たされる。まったく不思議な生物になってしまったものである。いや。生物――と言って良いんだろうか? わからない。
『ヤツらは、ここに逃げたはずだ』
『魔術師の教会か』
『なんとしても、とっ捕まえろ。捕まえて、あの魔神の火を領主さまに献上するのだ』
と、言うヤリトリが聞こえてきた。
どうやら都市の騎士連中が、すでにこちらにやって来ているようだった。
レイアの活躍によって、どうにか都市から脱することが出来た。
こちらに訪れたときとは、都市の風景が違っていた。
はじめて見たとき、都市は暗闇のなかにヒッソリとたたずんでいた。闇と同化していたと言っても過言ではない。ただ、《輝光石》と呼ばれる、輝く石だけが星屑のような輝きを放っていた。
しかし今の景色はどうか――。
「明るいな」
と、オレは呟きを漏らした。
都市はオレの分け与えた炎によって、赤々と輝いているのだ。周囲が暗いから、都市の炎がもたらす光が、余計に際立って見える。
「魔神さまの炎は、偉大なのですよ。ずーっと燃えてくれるのであります」
「あの聖火台の火は、消えないのか?」
「あの聖火台は魔力を外に逃がさない効果があるのです。魔神さまのおチカラは、あの聖火台に留まってくれるのですよ」
「すると、聖火台から火を移したりした場合は、消えてしまうというわけか」
「それでも、すこしは燃えてくれるはずなのです」
じゃあ、あの聖火台の火を種にして、火を使った生活が出来るようになるというわけだ。
暖も取れるし、肉だって焼けるし、クロイを払うことも出来る。
「オレのチカラが、すこしでも役に立ってくれるなら幸いだ」
「レイアさんも、ありがとうなのです」
よせよ、とレイアはさすがに疲れたのか樹木の根本に腰かけていた。
「私には私の目的があるんだ。さあ、約束だぜ。いっしょに来て《紅蓮党》のみんなの、助けてやって欲しいんだ」
「魔神さま、よろしいでしょうか」
と、プロメテが尋ねてきた。
「ああ。オレは構わないよ」
「魔神さまが了承してくれるなら、私にも異論はないのです。でも、すこしだけ待ってもらいたいのですよ。旅支度をするのです」
了解、とレイアは立ち上がった。
魔術師の教会に戻ることにした。
「おい、大丈夫なんだろうな。こんな場所を通って、道は合ってるんだろうな?」
と、レイアは情けない声を出した。
都市へ行くさいに通った山道を、教会に向けて引き返しているのだ。オレが通るのは2度目である。
通ると言っても、行きはカンテラの中にいただけだし、今は鳥籠のなかに入っているだけだ。自分の足で歩いているわけではない。
「心配ないのです。都市へ行くさいには、いつも通っていた道なのです」
と、プロメテは平然と言う。
「よくこんな道を通れるぜ」
と、レイアはすこし怯えているようだった。しきりに左右を確認している。そのたびに、赤毛が乱れていた。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ」
と、オレがそう尋ねた。
勇敢にもプロメテのことを救い出した女盗賊の様子とは一変していたので、怪訝に思ってそう尋ねた。
他意はなかったのだが、すこし挑発的な物言いになってしまった。
「私は、クロイが怖いんだよ。《紅蓮党》だけじゃなくて、私自身もやられちまってるから。トラウマになっちまった」
と、レイアはプロメテからあまり離れないように心掛けているようだった。
たしかにこの山には、クロイが多く潜んでいるようだった。巨大なヘビみたいな形状のクロイが、あちこちで蠢いている気配があった。
「レイアにも苦手なものがあるんだな」
「私をなんだと思ってるんだよ。魔神さまには苦手なものとか、ないのかよ」
「さあ――」
不意に尋ねられても、思いつかなかった。
転生するまえは、昆虫とかがあまり得意ではなかった気がする。が、あまり正確には覚えていない。まぁ、でも、クロイが怖いという気持ちは理解できる。
オレには襲って来ないとわかってから、すこしは恐怖も薄らいだ――というだけだ。
「うわっ。こっちに来やがるぜ」
と、レイアが前方を指差した。
人間の手のひらのような形状をしたクロイが、オレたちに掴みかかろうとしていた。が、クロイはオレの明かりを嫌ったようで、すぐに遠ざかって行った。
どうやらクロイというのは、姿形をあるていど、自在に変化させることができるらしい。
「安心しろ。どうやらあのバケモノどもは、オレの明かりに弱いらしいから」
「そ、そうか。クロイの連中は魔神さまがいれば、襲って来ないのか」
レイアは、プロメテの小さいカラダに隠れるようにしていた。頼もしかったレイアが、急にか弱い少女になってしまったかのようだった。
「どうやら、そうらしい」
「さすが魔神さま。頼もしいぜ」
と、レイアは安堵の息を吐いていた。
「プロメテは、大丈夫なのか?」
と、果敢にもクロイを気にせず進んでゆくプロメテに、オレはそう問いかけた。
「私、でありますか?」
「足が、痛いんだろう」
「ええ。ですがレイアさんに背負っていただいたおかげで、すこしはマシになりました。それにこの道は、歩きなれているので」
「そうか」
心配をかけないように、あえて強がっているのかとも思ったが、足取りはシッカリしている。
叩かれ慣れていると言っていたし、回復も早いのかもしれない。もし歩けないと言っても、どうすることも出来ないのが、オレの悲しいところである。
「病院とか、医者とかはいないのか?」
「都市に行けばいると思いますが、私のことを見てくれるような医者はいないのですよ。叩きだされてしまうのです」
「そっか」
魔術師への迫害は、そういうところにまで影響しているらしい。そして、そう言うということは、以前に叩きだされているのだろう。
教会――。
プロメテは、すぐに荷物をまとめた。
旅を出る準備は、事前にしていた様子だった。
都市を脱出するさいに着ていた帽子と鎧などは、もう必要ないだろうということで、その場に脱ぎ捨てていた。
「けっこう良い素材だし、私はまだ着ているよ」 と、レイアは依然としてその装備をまとっていた。
「魔神さま、薪なのですよ。どうぞ」
と、鳥籠のなかに入っているオレに、プロメテは薪を差し入れてくれた。
ありがたく、いただいた。薪をもらうと、腹が満たされる。まったく不思議な生物になってしまったものである。いや。生物――と言って良いんだろうか? わからない。
『ヤツらは、ここに逃げたはずだ』
『魔術師の教会か』
『なんとしても、とっ捕まえろ。捕まえて、あの魔神の火を領主さまに献上するのだ』
と、言うヤリトリが聞こえてきた。
どうやら都市の騎士連中が、すでにこちらにやって来ているようだった。
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