第159話　クリスとの関係性と灯の理解

クリスを一人で寝かせると恐らく朝一で泣くと言う事で、一緒に寝る事にした、クリスはのぼせたまま睡眠に移行したらしい、ぐにゃぐにゃに脱力し切ったクリスを運ぶのは若干持ち上げ難いが、此方もベースの体力は上がって居る上、クリスも健康的に太ってきたとはいえ、未だ細いので、軽々と持ち上がった、もうちょっと太らせないと。そんな事を思うが、毎日幸せそうにご飯を食べて居るので大丈夫だろう。
灯たちは初日はごゆっくりと例の如く寝室を移動するらしい。
もっとも、寝て居るクリスを襲う趣味は無いので微妙な気使いだったりもするが、一晩独り占めにしても意識が無いと嬉しくなさそうだしと。
そんな事を考えて居ると。
「分かってませんね、刷り込みには目覚めた時に誰の体温が有るかと、最初に見る一番近くの相手と言うのが大事なのです、かなり喜んでますけど、トラウマ解消まで行けるかは慣れの分が大きいですから、抱き枕にでもしてあげて下さい。」
やたらと具体的に灯から説明された、どうやら全て仕込み済みと言うか、灯の掌の上らしい、クリスのパニックから何から予測済みか。
「言い過ぎですけど、男より女の方が女心は判りますからね、クリスちゃんは和尚さんの事信頼と心酔してますけど、未だ肉欲には行かないので、ちょっと難しいです。」
相変わらず発言前に読まれて先回りである。
どうやらあの時に手を出さなかったのは正解では有るらしい。
「かなりハードモード？」
「いや、私達のメンバーでは比較的難しいってだけです、既に外堀と内堀埋まってるので、後は最後の壁崩すだけ何です、でも流石に此処を力づくで崩すと、トラウマフラッシュバックで自我崩壊しちゃうか、内側にもう一枚壁組んで閉じこもっちゃうんで、自分から手を出して来るか、自分からキスでもして来るか、おねだりまでゆっくり馴らして上げれば理想的ですけど、其れだとかなり時間かかるんですよね。」
其処は難しいと言う様子で灯が困り顔を浮かべる。
「流石に難しそうだな・・」
「いや、後は馴らすだけですね、抱擁（ハグ）とキスを毎日して馴らせれば問題無いと思われます、今日ので大分馴らせたんで、アレ位なら大丈夫って言うボーダーです。」
「成程・・・」
一緒にお風呂に入っても結構段階が有るらしい。
「因みに、私が無節操に嫁を増やして居る訳では無く、和尚さんに惚れた上で、人柄を見て、問題の無い人を引きずり込んでるだけです、一緒に生活してて変な所無いですから。」
「私の時は？」
アカデさんが少し不思議そうに聞いて来る。
「何と言うか、良い感じに話の流れが繋がっちゃったんです。」
灯が要領を得ない感じに説明する。
「一緒に居て変な感じはしないって事で。それに、私の方とは短い付き合いじゃ無いですし。」
エリスも捕捉する。
「まあ、文句は無いと言うか、実際幸せだから良いんだけどね？」
現状、アカデさんが大人な分もあってか、この家の中の対人関係は良く回って居る。
「其れなら問題無いですね、あ、因みに。」
「ん？」
「クリスちゃんから見て、現状、恐らく私達より和尚さんが心の拠り所的な扱いで、万一にでも酷い扱いとか、力尽くで行くと、其の拠り所の価値観崩壊しちゃうんで、無理矢理は禁止ですよ？」
一種の爆弾状態だったらしい。
「無理矢理する趣味は無いから大丈夫だって。」
「優しくて礼儀正しく理性的な感じでお願いします、ですが手を出さずに恥をかかせるのもダメですからね。」
「結局難しいじゃないか。」
「だからゆっくり馴らしてくださいって言ったんです。」
確かに言われていたが。
「其処まで無理しなくても？」
「クリスちゃん自身が希望してます、鈍い朴念仁は問題外ですからね？」
「ごもっとも・・・」
しっかりと言い負けた。

素直にクリスを布団に寝かせて、部屋の外で先程のやり取りを終え、一緒の布団に入る、無駄に気障っぽく額にキスを落とし、寝る事にした。
良い夢を見てくれると良いのだけど。

次の日の朝。
肌に触れる感触と、何故か悲しそうな気配に起こされ、目を開ける、今にも泣きそうな凄い顔のクリスが其処に居た。