迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」

かぐつち

第118話 クマたちの後始末

「結局ゴブリン共の残党処理だけで日が沈むか・・・」
呆然と呟く。戦場に3人だけで飛び込んで行ったガンダーラに迎えと援護の為のチームを組んで送り出したかったのだが、壁側に残ったゴブリンの処理だけで延々と時間を取られた、戦場が光に包まれたと思ったら、ゴブリンが弱体化、若しくは自分達が強化されたのか?それ以降組織立った集団突撃の波が無くなり、後ろに控えていた群れが何処かに消え、純粋に数が多いだけの烏合の衆となり、近接組も活躍出来る様になり、順調に数を減らして行ったのだが、如何せん元の数が多すぎた・・・
「終わりが見えてから結局半日かかりましたね・・・」
既にほぼ夜の領域だ、隊を組んで闇夜の魔の森を駆け抜けるなんて自殺行為に参加してくれる人員は居ない、そもそも居たとしても、送り出すことが出来ない。昼間でさえ逃げ回るゴブリンを調子に乗って追いかけて居た冒険者は茂みの中にある縄を使った単純な罠に引っかかり、あっという間に囲まれ、若い命を散らしている。
逃げたと思ったらこれだ、夜中にあの森に入ったらほぼ確実に死ぬ、急ぐなら馬を使えばと言う意見を出す馬鹿が居るが、馬も夜目は利かないのだ、縄を使った単純な物でも、罠があった日には先ず死ぬ。馬が森を越える時と言うのは随伴する歩きの護衛が必須なのだ、平地や街道以外では馬の機動力と言うのはほぼゴミである、護衛が先に歩いて道を切り開かないと歩く事すら出来ない、結局歩きと変わらないのだ。荷物持ちとしてなら兎も角、こう言った場所に狩りだす物では無い。ロバでも牛でも実質同じである、もっとも馬以外は荷物運び以外の選択肢は無いが。
「あいつらが明日まで生き残ると思うか?」
思わず呟いたが、むしろあの群にすら負けると言う場面が思いつかなかった。
「多分、何が何でも生き残っては居ると思いますよ、囲まれても負けそうな場面が思いつきません。」
その意見には、恐らくあいつ等を知って居る全員が首を縦に振る、囲んだ所で勝てる図が思いつかないのだ。
「そもそもこれ残ってますし・・・」
あの三人が残して行った格子状の結界魔法を見る、結局其のまま残って居るのだ、最早自立壁としてほったらかしで有る、もう解除されても大丈夫だが、其れを伝える方法が無い。
「今はどうしようもないから、明日の朝一で見回り残党処理名目で迎えをを出すしかないな。」
それまでは生き残って居て欲しい。冒険者の生き死には自己責任なのだが、正直あの和尚達とは関わり過ぎたので、見捨てると言う選択肢が出て来ない。
義理とは言え、3人の親となるギルマスは責任者と言う立場上、逆に表立って大規模の捜索隊等の指示は出せない筈なので、現場の此方が気を利かせる流れだ、あのギルマスには散々世話に成って居るので、こういう時は恩を着せるのが正解だ。他の地方にも行ったが、下手な役人の天下りギルマスも居るのだ、そう言った類のギルドは金払いが悪く冒険者を馬鹿にして居る、結局魔の森近接領自体は幾つか有るのだが、一番冒険者の待遇が良い稼ぎ場が此処なのだ。尤も、今回ので分かる通り、危険地帯なので此処を巣にする冒険者と言うのは意外と珍しいのだが。
今回は出稼ぎ冒険者も多い時期で助かった、この地域、冬場は雪と寒さが厳しく、動き回る魔物も少なくなるので稼げない為、秋の終わりから冬が開ける迄は冒険者が半分以下に減ってしまうのだ。
「今日は此処まで!明日の朝に見回り追撃隊を出す!出撃の選別をするから希望者は残れ!」
「報酬は後でギルドの方から出します!後程通達しますのでそれまでお待ちください!」
俺の掛け声とギルド職員の通達を聞き、力尽き、ぐったりした様子の冒険者達が三々五々に散って行く、残って居るのはほんの一握り・・・と言うか、俺のPT・深紅の翼のメンバーとあと少し程度だった、10人も居ない。
「これしか居ないか。」
「ゴブリンの顔なんてもう見たくないって言うのが正直な所だと思いますよ?」
我がPTの弓士、ラーシュが苦笑交じりに帰して来る。
「あいつ等の迎えだろう?曲がりなりにも、うちのPTの前衛だ、これぐらいは世話してやらんとな。」
と、サイクが。
「臨時だけどね、縁はしっかり繋がってる、こういう時には恩を着せる方向で。」
治療担当、メディが色々分かって居ると言う様子で返して来る。
「奴らが自力で帰って来た上で、取り越し苦労の線であることを期待するが、油断はするな、朝一に出発する、酒盛りは其れが終わってからだ、夜が明けたら門の前に集合だ、以上、解散!」
「はいはい。お疲れ様。」
「おうさ。」
「ねむい・・・」
それぞれ、やる気が有るのか分からない返事を返しながら散って行く。
「まったく、期待してるぞ?」
思わず小さく呟いた。
自分自身、もう眠くてしょうがない、少しだけ眠らせてもらおう。

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