迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」

かぐつち

第88話 爆発物

どぉん。
そんな空気を震わせる爆発音が響いた。
着火から投擲、念のため全員物陰に隠れて様子を見ていたので、安全を確認して学伸地を確認する。
目測では破片の飛び散った範囲は10m、多分殺傷範囲はその半分で5mと言った所か、直径9㎝の3号玉花火の爆風範囲が30mだけど、素人火薬としては上出来と見て良いかな?
しかし流石黒色火薬、実際に使うと酷い煙で爆心地が見えない。
「どうでしょう?」
義父上に意見を求めてみる。
「如何って言ってもこれは・・・」
「ちゃんと爆発するんですね、安心しました。」
実験の成功を見て灯は安心したらしく、胸をなでおろしている。
「私達こんな物作ってたんですね・・・」
エリスは何を作って居たのか解って居なかったらしい、爆発を見て驚いて青くなっている。
「何か変なことしてると思ったら、こんなもん作ってたのか。」
「冒険者が使うとして威力は如何でしょう?」
「高過ぎるぐらいだ、下手な魔法使いの魔法より強い。」
大分評価が高いらしい。というか、想像よりこの世界の魔法使いは強くないのだろうか?
「純粋な化学技術何で、魔法も何も要りませんよ。」
「逆に誰でも使えるって言うのが怖いな。」
「次回群れが出たらこれを使いたいので、ギルド側でこれの量産頼みたいのですが?」
「これを量産って・・・戦争始めるのか?」
「生存競争は戦争だと思いますが?」
「ああ、確かに戦争だ。」
「前回の群れ潰すのにこれ何発要ります?」
「一発で密集地帯は潰せそうだが、これ単体では100個あっても足りんぞ?」
「当然ですわな。多少削れれば良いです、矢よりコスト高いけど、石より威力が有る投擲武器程度の扱いだと思えば。」
「それ所の威力じゃないが・・・・これ作って良いのか?」
義父上(ギルマス)逃げ腰である。
「こっちは作り方を教えただけ、ギルドは作っただけ、後の事は使った人の責任です。
何が有っても気に病まない強い心が大事です。」
武器兵器の伝来何てそんな物で良いと思う。
「そんなもんか?」
「武器屋の武器使って冒険者が暴れても武器屋の責任じゃありませんし。」
「何なら私らが最終調合しますけど、私ら責任取る気在りませんので。」
灯も意味は解って居るらしい。
「材料から作り方まで教えますので、後は任せます。」
これが有れば神にも悪魔にも成れると言うには未だ威力が足りないとは思うが、火薬の無い世界では驚く程度の威力はあるとは思うので、覚悟が要るのかもしれない。
自分達の世界では9世紀頃から使われて居る、ある意味伝統物質でもあるが・・・
逆にこちらで発見・発明されず、使われなかった事の方が驚きでも有るが、どうやらこちらもそれなりに湿度と雨が降るので、硝石が取れなかったのだろう。
「わかった、教えてくれ。」
義父上も腹をくくったらしい。
「はい、レシピはこちらに成ります。」
あらかじめ準備して置いたレシピ・材料と精製手順を書いた紙を渡す。
「取り合えず焼き物屋に100個ほど器の発注はしてますので、先ずは古いトイレの掘り返しからです。」
「この精製手順って、本気でトイレの土がアレに成るのか?」
「一番大事な成分です、作れそうな人を探すのも、顔の広い義父上に任せますので。」
そもそも俺らじゃ適正人材発掘出来るほど顔は広くないので、其処等は本当に任せないと進まない。
「人と材料集まったら言って下さい、実演しますので・・」
「わかったわかった、暫く待ってろ。」
「煙草吸う奴は絶対禁止ですからね、暴発して死にたいのならともかく、巻き込まれたくありません。」
「アレを事故で爆発しさせたら先ず死にますよね・・・・」
其処は念入りに釘を刺して置こう。灯も同調して釘を刺している。
「ちゃんとしたの探すから待ってろ・・・」
苦い顔で義父上が当てを探し始めた。

「だが、こんな物お前の故郷で何に使ってたんだ?」
義父上(ギルマス)が不思議な事に気が付いたと言う様子で呟いた。
「魔物は居ないので1000年以上人間相手に、人間同士で・・・」
炭鉱ダイナマイトは別枠だ。
「想像以上に殺伐とした世界だったんだな・・・」
義父上(ギルマス)が遠い目で呟く。こちらの世界もかなりの物だと思う、多分隣の芝生が青いだけだが。
「ええ、お陰で対人戦闘の技術は腐るほど伝わってます・・」
剣術、槍術、棒術、体術等々、術系の技術体系は、ほぼ全て殺人術である。
武道系は最終的に精神論で立派な人間に成ると言う建前が有るが、術系は純粋に相手をぶっ殺せだ。
・・・殺伐としたものだ。

後日、改めて無事、火薬の技術は伝来された、暫くはギルド内で秘匿するらしいが、これで俺達だけで量産する手間が消えたので、もうちょっと休めるはずだ・・・

さらに後日、実験としてゴブリンの巣で投げ込んだが、それなりに使える様子であった。

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