迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」

かぐつち

第66話 距離感を間違える坊主

起き上がると、既に日は登っていた、見張りは?と思い外に出ると、深紅の翼のメンバーもすでに起きていた。

「よお、よく眠れたか?」

リーダーのヒゲクマさんが特に問題無いと言う様子で声をかけて来る。

他のメンバーも特に文句を言いたい様子もない。

「おはようございます、すいません、見張りもせずに。」

「気にするな、お前の仕事は昨日のキング2体分で十分だ、最初から朝まで寝せとく予定だったからな。」

気にする事は無いと言う様子で話す、女だったら惚れてるなと言わんばかりのイケメン具合だ。

「ありがとうございます。」

「幼生の処理は初めてだと大体病むからな、活躍してるからと上級冒険者扱いしてた俺の失敗でもある、帰還ゴブリンの襲撃も無い静かな夜だったから、出番も無かったから気にしなくて良い。」

「はい・・・」

「惚れてくれてもいいぞ?」

ヒゲクマさんがにやりと笑う。

「女だったら惚れてました。」

「そうだろうそうだろう。」

がははと笑う、成るほど、伊達や酔狂でリーダーやってないんだなと、感心する。見事なカリスマだった。

「そして、無事夜も明けたから、飯食ったらさっさと帰るぞ、ギルドで報告しなけりゃならん。」

「はい。」

急いで朝食を取り出して口に放り込んで、荷造りを始めた。



「しかしそれ、便利そうだな?」

ツエルトを潰して居た所で、そんな事を言われた。

「これですか?」

潰れたツエルトを掲げる、ヒゲクマさんが頷く。

「テントは俺たちも使うが、其処まで小さくならんからな、見せてもらっても良いか?」

「どうぞ?」

そのまま預けてみる。

「軽い、薄い、なるほど、生地がそもそも薄いおかげもあるが骨無しだからこれだけ小さくなるか、これ、コピー作らせてもらっても良いか?」

「ばらばらにしないでくださいね?」

「大丈夫だ、腕の良い仕立て屋に預けてみるだけだ、型ぐらいはバラさんでも出来るだろう。」

それぐらいなら問題無いだろうか?

「じゃあ、帰ったらその仕立て屋に案内お願いします。」

「おう。」



帰り道も特に問題無く、村まで帰還した。

ギルドの解体場でキングを二体取り出して確認してもらう、報告を聞くギルマスが何とも言えない表情をしていたが、大丈夫だろう。



報酬はそれぞれ金貨1枚だった、ギルド側としても動員数が多いのであまり高くできないらしい。

キングのボーナス分は一体分を深紅の翼のメンバー全体で等分、残りは全体にと言ったが、実質一人でやったような物だと言う事で纏めて金貨10枚渡された、あそこで俺が割り込まなかったら死人が出ていたという事で、当然だと言われたが、こんなにもらって良いのだろうか?

「良いからもらっとけ。」

と、ヒゲクマさんに半ば押し付けられる勢いで貰ってしまった。断る余裕も無かった。

「どうしてもと言うなら表の食堂で飯と酒を奢ってくれれば良い。」

と言うので、そのまま飲み会となだれ込まれた。

いつの間にかメンバーが討伐隊参加組どころか、ギルドに居る冒険者全体に増え、金貨3枚ほど飲まれていた。

冒険者は景気が良いってこういう事か・・・

付き合い程度に飲んだが、潰れるほどではない、話題が俺から移動して、ヒゲクマさん中心になったので、会計だけ済ませて先に離脱させてもらった。

ツエルトの件はまた後日、明日は休んで明後日という事らしい。

さて、愛しの妻たちの元に帰らなくては。



家にたどり着くと、愛する妻の二人が出迎えてくれた、感激して抱き着くが、灯に風呂無し2日と返り血、煤に泥、酒場の煙草と酒の匂いのお陰で盛大に臭いと怒られてしまった。



お陰で昼間から一人で風呂である、段々と酒も抜けてきて、素面になって来る、いや、俺さっきキャラ崩壊していなかったか?嫌われて無いだろうか?



そんな事を自問自答しながら石鹸で念入りに全身を洗い、長風呂で沈んでいると、灯とエリスが風呂に入って来た。

今更隠す物など無いと言う様子で躊躇する事無く服を脱いで、二人そろって、俺も入っている狭い湯船の中に沈む。何故か咄嗟に避けた。湯船の中で小さくなる。

「何でそんな顔してるんですか?」

灯が呆れた様子でそんな事を言う。

「どんな?」

「家明けて三日ぶりに飼い主が帰って来た時に猫がする、距離感忘れた顔です。家の隅に行って、誰だこれ?ってやってるあの顔です。」

「そんな顔してたか?」

「確かに、してますね。」

エリスも納得して肯定する。

「良いから、私たちと一緒に居る時は、好きなだけベタベタしててください、之が現在の私たちの適切な距離です。」

そう言って、沈んでいる足を掴んで開かせ、その上に座り、腕を絡ませてくる。

「そう言う事です、そうじゃなきゃ私たち此処に居ないんですから。」

エリスも同じように足に座り、背中を預け、俺の腕を抱えた。

「いや、さっき帰って来た第一声が臭いって言うのは、流石に厳しかったんだが・・・」

「それはしょうがないです、本人は気が付かないと思いますけど、凄い匂いだったのは事実ですから。」

「残念ながら、凄かったです。」

二人そろって俺が臭かった事は否定しない、嗅覚疲労か?そんなに酷いのか?

「お風呂上りに自分の服確認して下さい、お風呂で鼻のリセット出来てるはずだから、納得するはずです。」

エリスも肯いている。

「分かった、でもそれは後にして、暫くこのままでいいか?」

今は二人とべたべたしたい。

二人はしょうがないですねと言う様子で笑って。

「むしろ、此処で先に上がるってやられたら怒りますからね?」

「むしろそれ以外選択肢ないので、堪能してください。」

改めて二人を抱きしめる。

「ありがとう。」

「たっぷり感謝してください。」

「どういたしまして。」

灯が得意顔で言う、エリスも笑っていた。







風呂から上がった所で、さっきまで着ていた服の匂いを嗅いだところ、本当にすごい匂いがした、確かにあのリアクションもしょうがないか・・・

          

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