【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

インターローグ~エネミーサイド~ 様々な野望

「ふん……」

 大富岳のブリッジで志渡布が椅子に座ってふんぞり返る。

「申し訳ない……」

 金が頭を下げる。

「ん? 何がです?」

「力を分け与えてもらったのにあの体たらくだったからだ……」

「ああ……まあ、そういうこともあるでしょう、金角と銀角は回収したやないですか。とりあえずはそれで良しとしましょうや……」

「これからどうする?」

 銀が尋ねる。

「戦力もそうやけど……人員を補充せなあきませんね。これだけデカい艦やのにクルーの大半が僕の式神ですって……僕の体が流石に保ちませんわ」

「人員補充か、俺たちが動けば良いんだな?」

「それももちろんお願いしたいところですけど……僕も僕で動きます。当てがあるので」

「また別行動になるか。それはそれとして……シャイカ=ハーンには何らかの処罰を与えるべきではないか?」

 銀の言葉に志渡布が苦笑する。

「処罰って……あくまでも彼女とは協力関係ですからね……それに異世界との繋がりは残しておきたいっちゅうのが本音です。まあ、もうしばらく泳がせときましょう。ちょっと疲れました……少し休ませてもらいます……」

 志渡布がブリッジから出ていく。

                  ♢

「いきなりなんどすか? 頭なんか下げて……」

 大富岳の廊下で雷が怪訝そうな顔を愛賀に向ける。

「……ロボチャンの時、気の流れとかなんとか言うてたやろ? あのことについて詳しく教えて欲しいんや」

「なんの為に?」

「狙撃手としてもう一段階上に行くためや」

「こないなこと言うてはりますけど? どうしますか、風姉さま?」

 雷は風に尋ねる。風は愛賀に背を向けたまま答える。

「その気概は大変結構……せやけど、素人はんにとってはちんぷんかんぷんなお話やと思いますよ? 雲を掴むようなお話かも……」

「必ず掴んでみせる! 相手には魔法使いもおんねん、こっちもオカルトで勝負や」

「オカルトって……そういうたら……雷? この艦の食堂はどうしてなかなかメニューが充実してるなあ?」

「はい、そうですね。どこから調達してるのか、いまいち不明ですけど……」

「高級スイーツが食べたい気分やわ……誰ぞ、うちらにご馳走してくれへんかな~」

「! ああ、それくらいやったら御安い御用や!」

「ほな、食堂に参りましょうか」

 風は微笑みを浮かべて歩き出す。

                  ♢

「はあ~」

 格納庫で機体のチェックをしながら、海江田が大きなため息をつく。

「こっちの気も滅入るからやめろ……」

 作業をしながら水狩田が呟く。

「いや~だってさ~あの天下のザ・トルーパーズに『この借りはいずれ返す!』とか啖呵切っちゃったんだよ? 我ながらテンション上がってとんでもないこと言っちゃったな……」

 海江田が頭を抱える。

「まだこの機体の奥の手が残っているだろう……」

「それはそうなんだけどね~もう一つ保険が欲しいところだね」

「ならばあそこに行ってみたらどうだ? 裏社会ならではのコネがあるだろう?」

「あそこか……確かに良いかもね」

 水狩田の提案に海江田がうんうんと頷く。

                  ♢

「頼む! 家庭が円満になる方法を教えてくれ!」

 食堂で雷蔵が鳳凰院に両手を合わせて懇願する。鳳凰院が呆れる。

「おたくの家庭は色々と事情が複雑でなあ……拙僧にも扱いきれへんわ……」

「それならば、我が慈英賀流の今後を占ってくれないか!」

「なんでそうなんねん、祈祷ならともかく占いって……それこそ明石屋はんに頼みなはれ」

「それを彼女は有料だと言うんだ! マイナー流派の厳しい懐事情も知らずに!」

「そんなん知らんわ……はあ、志渡布はんに頼まれ事されてるから、もう行くで」

 鳳凰院が席を立つ。

                  ♢

「ん?」

「……」

 廊下を歩く浪漫が意外な人物を見かける。

(あれは百鬼夜行の鬼武小四郎? 艦内を出歩いとるのは初めて見たな……)

 浪漫が静かに鬼武の後をつけていく。

「……」

 鬼武はある部屋に入っていく。浪漫もそれに続こうとするがドアがロックされてしまう。

(ちっ、入れへんのかい……何の部屋や? 大富岳……今更やけど色々と謎が多い艦やで)

 閉じられたドアを見つめながら、浪漫が腕を組む。

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