【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第25話(1)王道VS覇道

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「新たに構築し直した防衛ラインが突破されそうです!」

「くっ……」

 ブリッジクルーからの報告を受け、桜島の艦長、高島津伊織が渋い顔になる。

「機体を二機確認! ……風神雷神です!」

「! それでは量産型では歯が立たないわね……FtoVとトライ・スレイヤーは 」

「現在交戦中の模様!」

「瀬田方面に戦力を割き過ぎてしまったわ……宇治方面は落ち着いたかと思ったけど……」

 伊織は艦長席で考え込む。クルーが指示を仰ぐ。

「UZUSIOやウ・ドーンなどの補給を急がせますか 」

「急いては事を仕損じると言うわ。落ち着いて作業を進めさせて」

 伊織はブリッジ全体を落ち着かせるように話す。そこに幸村から通信が入る。

「姉上、うちが行きます!」

「別の地点に大量に湧いていた機妖は?」

「全て片付けました」

「そう、補給は行わなくても良いの?」

「充分でごわす。今、あの姉妹を止められるのはうちだけかと」

「……分かった! ここは任せるわ!」

「はい!」

 幸村は鬼・極を加速させ、突破されつつある地点に到着させる。

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ……と歌った覚えはあらしまへんけどなあ?」

 風神に乗る千歳姉妹の姉、千歳風は笑う。

「どうしてもうちらと遊びたいようどすえ」

 雷神に乗る千歳姉妹の妹、千歳雷も笑う。

「それなら仕方ないどすなあ」

「ちょっと待った!」

「ん?」

「ここはあんたらにとって地元じゃろう? 何故被害が出るような真似を?」

「あんさんらが邪魔しなければ、こないな手荒な手段を取らなくても良かったんどす……」

 幸村の問いに風が答える。幸村が重ねて問う。

「何故、志渡布に与する 」

「……この風神と雷神の二体は千年の永い歴史が生み出した最高のロボット……特殊かつ複雑な操縦機構の為、まともに稼働させることが出来るのは我々千歳一族の血を引くもののみどす……そのわりに……」

「?」

「扱いが軽いんどす!」

「は、はあ 」

「やれ、『おかっぱ頭の風神雷神』、『おかっぱ頭×双子=最凶』、『千年王城に君臨するおかっぱ頭』などなど、訳の分からんニックネームを付けてくれてからに……」

「あ、気に入っちょらんじゃったんだ……」

「気に入るわけがあらへんやろう! 乙女心を踏みにじってくれよって……」

「ふ、風姉さま、ちょいと落ち着いて……」

「こ、これは失礼……」

 風が呼吸を落ち着かせる。

「き、気持ちは分からんでもないが……い、いいや、やっぱり分からん! そげん身勝手な理由で騒乱を起こすなど、許せるわけがなか!」

「どんなに身勝手だろうと許される! それがうちら千歳姉妹!」

「無茶苦茶な! これは仕置きが必要なようじゃな!」

「ふふっ、仕置きどすって、風姉さま……」

「随分と頭が高い物言いどすなあ!」

 風が叫ぶと風神から強風が吹きつけてくる。幸村は顔をしかめる。

「ぐっ……!」

「あんさんと遊んでいる時間はあらしまへん! 『竜巻』!」

「うおっ!」

 鬼・極の機体が風神が巻き起こした風によって持ち上がる。

「雷!」

「『落雷』!」

「ぐはっ 」

 鬼・極に雷が落ち、鬼・極が地面に叩き付けられる。

「ふっ、風神の巻き起こす風で自由を奪い、雷神が雷の鉄槌を下す……分かっていてもまず避けられへん、うちと風姉さまの連携攻撃や……まさに“王道”ってやつやな」

「ふん、さっさと行くで、雷」

「はい」

 風神雷神が先に進もうとする。

「ま、待つでごわす……」

「「 」」

 鬼・極が機体をゆっくりと起こす。雷が笑いながら呟く。

「へえ、まだ動けるとは……そのまま寝たふりしといたらよろしかったのに」

「蚊に刺されたかと思うた……」

「! 減らず口を! 風姉さま!」

「『竜巻』!」

「はああっ!」 

「「なっ 」」

 鬼・極が背部から金棒を取り出して振るい、竜巻を吹き飛ばす。間髪入れず幸村が叫ぶ。

「モード『鬼神』発動!」

 鬼・極の機体が光り出し、頭部の二本のアンテナが長く伸び、まさに鬼の様になる。

「こ、これは……」

「怯むな雷! 所詮こけおどしや!」

「は、はい!」

 風がすかさず声をかけ、雷が落ち着きを取り戻す。

「王道とかなんとか言うちょったな……ならばこちらは“覇道”を往くでごわす!」

 幸村が金棒を構えて叫ぶ。

「生意気な! 鬼退治といきますえ! 『旋風』!」

 すさまじい風が吹き、鬼・極は体勢を崩す。

「今や! 雷!」

「『雷光』!」

 雷神から放たれた一筋の大きな雷の光が鬼・極の機体を貫く。

「ようやった! ……ん 」

「手応えあり! ……何 」

 風と雷が同時に驚く。鬼・極が平然と立っていたからである。

「ちょっとばかり痺れたな……」

「ば、馬鹿な 」

「隙有り!」

「はっ 」

 鬼・極が雷神の懐に入り、金棒を振りかざす。

「『鬼の金棒・すくい上げ』!」

 鬼・極は金棒を下から上にアッパースイングさせ、雷神を吹き飛ばす。

「ぐはっ 」

「い、雷  はっ 」

 風が驚く。自分の機体の上に鬼・極が飛び上がっていたからである。

「『鬼の金棒・振り下ろし』!」

「うおっ 」

 鬼・極は今度は金棒を上から下にダウンスイングさせ、風神を叩き潰す。

「どうじゃ! ん 」

「……」

 風神雷神が地面に広がった黒い穴に吸い込まれていく。

「……逃がしてしまったか、まあ退けただけでもよしとするか……」

 幸村はそう自らに言い聞かせる。

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