私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~
料理の変人
「さて、少々妙なことになったけど、やることは変わらないわ……」
憂は自らに言い聞かせるように呟くと、調理にとりかかる。
「まずは有備さんが動きましたね」
「迷いがみられないね」
自分たちも調理をしながら、爽と葵が突如として始まった憂、イザベラ、弾七の三人による料理対決の行方を見守っている。
(食事の構成は主食・主菜・副菜がベター。主食はシンプルにご飯と行きたいところだけど少しひねるとしましょう……江の島名物と言われている、これよ!)
「あ、あれは 」
「しらす……ですね、なるほど、丼ぶりにするということですか」
驚く葵の横で、爽は冷静に解説する。
(この江の島の地で豊富な海鮮を活かさないという手はありえないわ! 主菜と副菜も魚料理中心で攻めていくわよ!)
「……」
「どわっ 」
しばらく黙っていたイザベラが動き出し、コンロの火をいきなり最大に燃え上がらせたので、隣の憂は驚いた。
「サテ……」
イザベラはコンロの上に網をしき、さらにその上に鉄製の串に刺した数種類の肉を置いて焼いていく。
「な、なにを……?」
「知らないのカ、肉ダ」
イザベラは憂の疑問に答える。
「そ、それは分かっているわよ!」
「そうカ」
「何をやっているのかを聞いているのよ!」
「『シュラスコ』を作っていル」
「しゅ、修羅崇光ですって?」
憂が首を捻る。
「シュラスコダ……何ダ、その日本刀の様なイントネーションハ……」
「い、いや、耳慣れない言葉だったもので……」
「シュラスコは岩塩をよくすり込ませた牛や羊などの畜肉を鉄製の串に刺し通し、強火でじっくりと焼くブラジルの肉料理ダ、ブラジルだけでなく南米でよく食べられている料理だナ……」
「な、南米ですって 」
「そうダ」
「な、なんでまた南米の料理を?」
「理由は三つほどあル……」
「け、結構多いわね」
戸惑う憂をよそに、イザベラは遠い目をして語りはじめる。
「まず一つ、この江の島というところは、南米によく似ている……」
「そ、そうかしら 」
「アア」
「どこら辺が?」
「空があって、海があるからナ」
「大体地球上のどこでも該当するでしょ、それ!」
「次二……」
「無視すんな!」
「やはり江の島=肉だからナ」
「そのイコールはまったく成り立たないと思うわよ!」
憂は自分の調理を手際よく進めながら、イザベラの発言に突っ込みを入れる。
「最後に三つ目だガ……」
「勝手に話を進めるのね……」
「このシュラスコは懐かしい味なんダ」
「懐かしい?」
「そう、故郷を思い出すとでも言うべきカ……」
「あ、貴女、南米出身なの?」
「いや、別にそういうわけではないガ」
「なによそれ!」
「なんでそんなことを聞ク?」
イザベラが不思議そうに首をかしげる。
「故郷がどうだとか言うからでしょう 」
「まあ、こういう稼業をしているト、世界中が故郷のようなものだからナ……」
「そ、そうなのね……」
「思い出は数えきれないほどあル……」
「そ、そう……」
「大体が血と硝煙の匂いに包まれた思い出だナ」
「物騒極まりない!」
「この臭いを嗅ぐと思い出すナ……」
「って、焦げてんじゃないの 」
「オオ……」
「ちゃんと手元を見ながらしなさいよ!」
「ウム、まあいい、出来タ」
「いくらなんでも大雑把過ぎるでしょ!」
「ふふふ……こりゃどうやら俺の勝ちかな」
憂の逆隣で調理をしている弾七が笑みを浮かべる。
「なんですって 」
「そう言えば貴様もいたナ、ふしだら浮世絵師」
「ひ、酷い言われよう! でも美人だからある意味褒め言葉!」
「気持ち悪いこと言わないで頂戴!」
「そろそろ調理終了のお時間ですが……皆さんよろしいでしょうか?」
爽が近寄ってきて三人に尋ねる。
「いいゾ」
「ま、まあ、良しとしましょう」
「完璧だぜ」
「それでは……調理の様子は逐一見させて頂きましたので、特に問題なく、葵様による実食へと移らせていただきます」
三人の作った料理を葵が順に食べる。
「……ごちそうさまでした」
「葵様、ではまず、一番美味しくなかったのは誰の料理でしょう?」
「う~ん、言いにくいけど……弾七さんかな」
「な、なんだと 」
「さすがは一流の絵師さんだけあって見映えこそ良いんだけど、肝心の味が全然ついてきていないというか……後、野菜だけというのもちょっとね、野菜は好きなんだけど」
「くっ、彩りを意識し過ぎた……力を入れるところを間違ったか」
「では、有備さんと西東さん、どちらが美味しかったですか?」
「う~ん、ういちんかな」
「う、ういちん って、私 」
「シュラスコも美味しかったけど、大分焦げていたからね……しらす丼に軍配かな」
「おめでとう、君の勝利ダ」
「な、なんか、全然達成感というものが無いんだけど……」
イザベラの称賛を受けた憂は目を細めながら呟いた。
憂は自らに言い聞かせるように呟くと、調理にとりかかる。
「まずは有備さんが動きましたね」
「迷いがみられないね」
自分たちも調理をしながら、爽と葵が突如として始まった憂、イザベラ、弾七の三人による料理対決の行方を見守っている。
(食事の構成は主食・主菜・副菜がベター。主食はシンプルにご飯と行きたいところだけど少しひねるとしましょう……江の島名物と言われている、これよ!)
「あ、あれは 」
「しらす……ですね、なるほど、丼ぶりにするということですか」
驚く葵の横で、爽は冷静に解説する。
(この江の島の地で豊富な海鮮を活かさないという手はありえないわ! 主菜と副菜も魚料理中心で攻めていくわよ!)
「……」
「どわっ 」
しばらく黙っていたイザベラが動き出し、コンロの火をいきなり最大に燃え上がらせたので、隣の憂は驚いた。
「サテ……」
イザベラはコンロの上に網をしき、さらにその上に鉄製の串に刺した数種類の肉を置いて焼いていく。
「な、なにを……?」
「知らないのカ、肉ダ」
イザベラは憂の疑問に答える。
「そ、それは分かっているわよ!」
「そうカ」
「何をやっているのかを聞いているのよ!」
「『シュラスコ』を作っていル」
「しゅ、修羅崇光ですって?」
憂が首を捻る。
「シュラスコダ……何ダ、その日本刀の様なイントネーションハ……」
「い、いや、耳慣れない言葉だったもので……」
「シュラスコは岩塩をよくすり込ませた牛や羊などの畜肉を鉄製の串に刺し通し、強火でじっくりと焼くブラジルの肉料理ダ、ブラジルだけでなく南米でよく食べられている料理だナ……」
「な、南米ですって 」
「そうダ」
「な、なんでまた南米の料理を?」
「理由は三つほどあル……」
「け、結構多いわね」
戸惑う憂をよそに、イザベラは遠い目をして語りはじめる。
「まず一つ、この江の島というところは、南米によく似ている……」
「そ、そうかしら 」
「アア」
「どこら辺が?」
「空があって、海があるからナ」
「大体地球上のどこでも該当するでしょ、それ!」
「次二……」
「無視すんな!」
「やはり江の島=肉だからナ」
「そのイコールはまったく成り立たないと思うわよ!」
憂は自分の調理を手際よく進めながら、イザベラの発言に突っ込みを入れる。
「最後に三つ目だガ……」
「勝手に話を進めるのね……」
「このシュラスコは懐かしい味なんダ」
「懐かしい?」
「そう、故郷を思い出すとでも言うべきカ……」
「あ、貴女、南米出身なの?」
「いや、別にそういうわけではないガ」
「なによそれ!」
「なんでそんなことを聞ク?」
イザベラが不思議そうに首をかしげる。
「故郷がどうだとか言うからでしょう 」
「まあ、こういう稼業をしているト、世界中が故郷のようなものだからナ……」
「そ、そうなのね……」
「思い出は数えきれないほどあル……」
「そ、そう……」
「大体が血と硝煙の匂いに包まれた思い出だナ」
「物騒極まりない!」
「この臭いを嗅ぐと思い出すナ……」
「って、焦げてんじゃないの 」
「オオ……」
「ちゃんと手元を見ながらしなさいよ!」
「ウム、まあいい、出来タ」
「いくらなんでも大雑把過ぎるでしょ!」
「ふふふ……こりゃどうやら俺の勝ちかな」
憂の逆隣で調理をしている弾七が笑みを浮かべる。
「なんですって 」
「そう言えば貴様もいたナ、ふしだら浮世絵師」
「ひ、酷い言われよう! でも美人だからある意味褒め言葉!」
「気持ち悪いこと言わないで頂戴!」
「そろそろ調理終了のお時間ですが……皆さんよろしいでしょうか?」
爽が近寄ってきて三人に尋ねる。
「いいゾ」
「ま、まあ、良しとしましょう」
「完璧だぜ」
「それでは……調理の様子は逐一見させて頂きましたので、特に問題なく、葵様による実食へと移らせていただきます」
三人の作った料理を葵が順に食べる。
「……ごちそうさまでした」
「葵様、ではまず、一番美味しくなかったのは誰の料理でしょう?」
「う~ん、言いにくいけど……弾七さんかな」
「な、なんだと 」
「さすがは一流の絵師さんだけあって見映えこそ良いんだけど、肝心の味が全然ついてきていないというか……後、野菜だけというのもちょっとね、野菜は好きなんだけど」
「くっ、彩りを意識し過ぎた……力を入れるところを間違ったか」
「では、有備さんと西東さん、どちらが美味しかったですか?」
「う~ん、ういちんかな」
「う、ういちん って、私 」
「シュラスコも美味しかったけど、大分焦げていたからね……しらす丼に軍配かな」
「おめでとう、君の勝利ダ」
「な、なんか、全然達成感というものが無いんだけど……」
イザベラの称賛を受けた憂は目を細めながら呟いた。
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