私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~
朝の廊下
肆
「二日目は……こういう日程だったナ……」
スケジュール表を眺めながらイザベラが頷く。
「うわっ 」
目を開いた葵が驚く。
「起きたカ……」
「お、おはよう、ザべちゃん」
「おはよウ……」
「……そうやって枕元に立たれるとビクッとするんだけど」
葵が寝ぼけ眼をこすりながら冷静に呟く。
「これは片膝立ちダ……」
「細かい違いは良いよ……」
葵は半身を起こす。
「まずは顔を洗い、歯磨きといったところカ?」
「他にどんな選択肢があるのよ……」
「見守っていよウ……」
「いやいいから、部屋の外で待っていてよ」
「洗面台や押し入れなどは既に調べたが、爆発物の心配はないゾ……」
「そんなこと全然心配してないよ……」
葵はあくびをしながら洗面台へ向かう。イザベラは素直に部屋の外に出る。
「おはようございます」
爽がイザベラに挨拶する。
「同室なのに居ないと思ったラ……」
「ちょっと早朝の散歩に……」
「私にも気付かれないで、部屋を出るとハ……警戒レベルを上げんといかんナ……」
「いやいや、わたくしは無害そのものでしょう」
爽は手を軽く振る。イザベラは目を細め、険しい顔つきになる。
「……」
「さ、殺気が凄い!」
爽が思わず後ずさりする。
「誰であっても警戒するに越したことはなイ……」
「頼もしいことこの上ないと言いたいところですが……」
戸惑う爽にイザベラは表情をふっと緩める。
「冗談ダ……」
「貴女も冗談などをおっしゃるのですね……」
「巧みな話術もこの稼業では必須スキルだからナ」
「巧みかどうかはさておき……葵様は?」
「先程起きタ。今頃歯でも磨いているだろウ」
「そうですか、わたくしも一旦、部屋に戻ります、失礼」
爽が部屋に戻る。イザベラは目を閉じ、腕を組んで壁にもたれかかる。
「……正直、貴様の狙いが分からんナ……」
「!」
「気が付いているゾ……」
イザベラは体勢を変えず、片目を開けて呟く。
「くっ……」
女性が姿を現した。
「有備憂……寝込みを襲うわけでもなく、さらに窓側でもなく、廊下側から来るとハ……何を企んでいル……」
「……用事があるのはアンタよ」
「ナニ?」
イザベラが両目を開く。憂がイザベラの顔を指差す。
「西東イザベラ、先日の借りを返すわ!」
「? 何も貸した覚えはないガ……」
イザベラが不思議そうに首を傾げる。
「わ、忘れたの 」
「ウ~ン……」
「そ、そんな……」
「思い出しタ」
「ほ、本当 」
「女子トイレの近くで私にあっけなく組み伏せられたことカ?」
「ぐ、具体的に言わなくてもいいのよ!」
「それは失礼しタ。それデ? 何の用事ダ?」
「……悔しいけど、アンタと私、単純な戦闘力ではかなりの実力差があるということはよくよく理解したわ」
「フム……?」
イザベラはもたれかかった壁から身を起こす。
「それならば、別の形で勝負を挑むわ!」
「別の形だト?」
イザベラは組んでいた腕を解き、顎に手をやる。
「そう、今日の午前中に行われるあれで勝負しましょう!」
「……あれカ」
「あれよ。アンタも上様の護衛で参加するんでしょう?」
「そうだナ……」
「ならば勝負出来るわね」
「……勝負を受ける理由が無イ」
「……負けっぱなしは私のプライドが許さないのよ」
憂が悔しそうに呟く。
「ウム……」
「良いってことね?」
「こちらにメリットが無イ」
「メ、メリット……?」
「ああ、お前のプライドなど、こちらの知ったことではないからナ」
「は、はっきりと言ってくれるわね……」
「そういう性分だからナ」
「そうね……私が負けたら、この合宿で上様にちょっかいは出さないと約束するわ」
「そうカ……」
イザベラが考え込む。
「どうかしら?」
「この合宿でというのがいささか気になるガ……」
「ちっ、細かい所に気付くわね……」
憂が小声で呟き、舌打ちする。
「まあ、契約外のことには出来る限り関知しない主義ダ……」
「! ということは?」
「分かった。その勝負受けるとしよウ」
「そうこなくっちゃね!」
憂が笑みを浮かべる。
「嬉しそうだナ?」
「べ、別に相手にしてもらって嬉しいわけじゃないんだからね!」
「その構文は……ジャパニーズツンデレというやつカ?」
「ち、違うわよ! と、とにかく首を洗って待っていなさい!」
憂が姿を消す。イザベラが首を抑えて呟く。
「首を洗え……臭うのカ? 香水はどこにやったかナ……」
「二日目は……こういう日程だったナ……」
スケジュール表を眺めながらイザベラが頷く。
「うわっ 」
目を開いた葵が驚く。
「起きたカ……」
「お、おはよう、ザべちゃん」
「おはよウ……」
「……そうやって枕元に立たれるとビクッとするんだけど」
葵が寝ぼけ眼をこすりながら冷静に呟く。
「これは片膝立ちダ……」
「細かい違いは良いよ……」
葵は半身を起こす。
「まずは顔を洗い、歯磨きといったところカ?」
「他にどんな選択肢があるのよ……」
「見守っていよウ……」
「いやいいから、部屋の外で待っていてよ」
「洗面台や押し入れなどは既に調べたが、爆発物の心配はないゾ……」
「そんなこと全然心配してないよ……」
葵はあくびをしながら洗面台へ向かう。イザベラは素直に部屋の外に出る。
「おはようございます」
爽がイザベラに挨拶する。
「同室なのに居ないと思ったラ……」
「ちょっと早朝の散歩に……」
「私にも気付かれないで、部屋を出るとハ……警戒レベルを上げんといかんナ……」
「いやいや、わたくしは無害そのものでしょう」
爽は手を軽く振る。イザベラは目を細め、険しい顔つきになる。
「……」
「さ、殺気が凄い!」
爽が思わず後ずさりする。
「誰であっても警戒するに越したことはなイ……」
「頼もしいことこの上ないと言いたいところですが……」
戸惑う爽にイザベラは表情をふっと緩める。
「冗談ダ……」
「貴女も冗談などをおっしゃるのですね……」
「巧みな話術もこの稼業では必須スキルだからナ」
「巧みかどうかはさておき……葵様は?」
「先程起きタ。今頃歯でも磨いているだろウ」
「そうですか、わたくしも一旦、部屋に戻ります、失礼」
爽が部屋に戻る。イザベラは目を閉じ、腕を組んで壁にもたれかかる。
「……正直、貴様の狙いが分からんナ……」
「!」
「気が付いているゾ……」
イザベラは体勢を変えず、片目を開けて呟く。
「くっ……」
女性が姿を現した。
「有備憂……寝込みを襲うわけでもなく、さらに窓側でもなく、廊下側から来るとハ……何を企んでいル……」
「……用事があるのはアンタよ」
「ナニ?」
イザベラが両目を開く。憂がイザベラの顔を指差す。
「西東イザベラ、先日の借りを返すわ!」
「? 何も貸した覚えはないガ……」
イザベラが不思議そうに首を傾げる。
「わ、忘れたの 」
「ウ~ン……」
「そ、そんな……」
「思い出しタ」
「ほ、本当 」
「女子トイレの近くで私にあっけなく組み伏せられたことカ?」
「ぐ、具体的に言わなくてもいいのよ!」
「それは失礼しタ。それデ? 何の用事ダ?」
「……悔しいけど、アンタと私、単純な戦闘力ではかなりの実力差があるということはよくよく理解したわ」
「フム……?」
イザベラはもたれかかった壁から身を起こす。
「それならば、別の形で勝負を挑むわ!」
「別の形だト?」
イザベラは組んでいた腕を解き、顎に手をやる。
「そう、今日の午前中に行われるあれで勝負しましょう!」
「……あれカ」
「あれよ。アンタも上様の護衛で参加するんでしょう?」
「そうだナ……」
「ならば勝負出来るわね」
「……勝負を受ける理由が無イ」
「……負けっぱなしは私のプライドが許さないのよ」
憂が悔しそうに呟く。
「ウム……」
「良いってことね?」
「こちらにメリットが無イ」
「メ、メリット……?」
「ああ、お前のプライドなど、こちらの知ったことではないからナ」
「は、はっきりと言ってくれるわね……」
「そういう性分だからナ」
「そうね……私が負けたら、この合宿で上様にちょっかいは出さないと約束するわ」
「そうカ……」
イザベラが考え込む。
「どうかしら?」
「この合宿でというのがいささか気になるガ……」
「ちっ、細かい所に気付くわね……」
憂が小声で呟き、舌打ちする。
「まあ、契約外のことには出来る限り関知しない主義ダ……」
「! ということは?」
「分かった。その勝負受けるとしよウ」
「そうこなくっちゃね!」
憂が笑みを浮かべる。
「嬉しそうだナ?」
「べ、別に相手にしてもらって嬉しいわけじゃないんだからね!」
「その構文は……ジャパニーズツンデレというやつカ?」
「ち、違うわよ! と、とにかく首を洗って待っていなさい!」
憂が姿を消す。イザベラが首を抑えて呟く。
「首を洗え……臭うのカ? 香水はどこにやったかナ……」
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