私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~
俳句バトルロイヤル~下の句~
「……ここは何なのかな? 随分と広い場所だけど」
たどり着いた所には青々とした芝生が広がっていた。葵の問いに爽が答える。
「ゴルフ場です。やや短めのコースが中心ですが、9ホールあります。完全予約制ですが、休日はこうして一般開放しています」
「な、なんでもあるんだね……」
「というかむしろ今まで知らなかったのか?」
「い、いや、恥ずかしながら、全然……」
「誰かがラウンドしていますわね……ん? もしかしてあちらの方は?」
そこにはゴルフを楽しむ万城目の姿があった。キャディやプレー同伴者から「ナイスショット!」と声を掛けられ、満更でもなさそうな表情を浮かべている。
「生徒会長じゃねえか」
「ゴルフも達者なのですね……」
憂が感心した声を上げる。
「……では、こちらが第三の、最後の俳句ポイントになります。こちらのゴルフ場の様子をご覧になって、今までと同じ様に思い浮かんだ句をそれぞれ一句ずつご披露頂きます。それではどうぞ、思い付いた方から挙手をお願い致します」
「……」
しばし考え込む一同。すると、再びキャディやプレーヤー達の「ナイスショット!」という掛け声が聞こえてくる。
「会長さんのグループ、皆さんお上手ですね……」
憂が再び感心した様子を見せる。
「ふん……」
光ノ丸が不機嫌そうに手を挙げる。爽が指名する。
「氷戸さま、お願いします」
「良い一打 打つことさほど 難儀せず」
「……判定は?」
一超は『2点』の札を上げた。光ノ丸は驚く。
「な、何故だ 余のゴルフの体験を踏まえての句だぞ 」
「講評の方を……」
「なんとなく 得意気なさま 鼻につく」
「な、なんだと……」
光ノ丸が膝を突いた。その様子を鼻で笑いながら、八千代がゆっくりと手を挙げる。
「五橋さま」
「万緑の 中に白球 よく映える」
「判定をお願いします」
一超は『4点』の札を上げた。八千代は静かに拳を握りしめる。
「やりましたね、お嬢様!」
憂の賞賛に八千代は片手を挙げて応える。一超が口を開く。
「季語用い 俳句の基本に 立ち返り」
「流石です、お嬢様!」
「ふふっ、もっと言って頂戴」
「ちっ……」
喜ぶ八千代たちの様子を苦々しげに見つめながら、飛虎が手を挙げる。
「次は……日比野さま」
「仲夏頃 流れる汗も 心地よし」
「判定の方を……」
一超は首を傾げつつ、『3点』の札を上げた。
「な、何でだよ! ちゃんと季語も使ったぜ 」
「……講評を」
「良い句だが 季語の季節が ややズレた」
「な、なんだって……?」
「この時期は 初夏という語が ふさわしき」
「くっ、俺としたことが……」
飛虎がうなだれる。憂がハッとして八千代に話しかける。
「これで御三方が合計9点で並びました!」
「どうやらそのようですわね。ということは……」
「我々三人による延長戦ということになるな」
「望むところですわ」
「ちょっと! まだ私が残っていますけど 」
葵が話を勝手に進めようとする光ノ丸たちに抗議する。光ノ丸が冷ややかに答える。
「……ならば早く句を詠め。時間の制限があるわけではないが、いつまでも待つというわけにはいくまい」
「う、う~む……」
すると三度キャディやプレーヤー達の「ナイスショット!」という掛け声が聞こえてきた。見事なショットを打ち終えたプレーヤーにキャディが駆け寄り、喜々としてハイタッチを求めた。プレーヤーはやや恥ずかしそうにしながらそれに応じた。
「あ、あれは 」
葵は驚いた。キャディに扮しているのが獅源だったからである。よく見てみなければ気が付かないほど、キャディ姿がすっかり板に付いていた。
「一体何をやってんだアイツは……」
同じく獅源の存在に気が付いた飛虎が呆れた声を上げる。何かを閃いた葵は勢いよくその手を挙げる。
「はい!」
「どうぞ、葵様!」
「良いショット 君のハートに カップイン」
「判定は 」
一超はやや唸った様子を見せながら『5点』の札を上げた。
「や、やったー 」
「ま、満点ですって 」
「な、何故だ 」
「理由は 」
一超に詰め寄ろうとする三人を爽が間に入って止める。やや慌てた一超は、一旦落ち着いてから講評を述べる。
「横文字の 大胆使用 感銘し」
「そ、そんな……」
「馬鹿な……」
「待てよ、ということは……」
飛虎の言葉に爽が笑顔で頷く。
「ええ、そうですね、葵様が合計10点で単独トップ、見事優勝となります。これで藍袋座さんとの優先交渉権を得たのは我々将愉会になります」
「か、勝ったの……?」
「なんか納得いかねえんだが……」
「致し方あるまいな……」
「いや、納得しちゃうのかよ!」
「今日の所は完敗ですわね……」
「完敗ってことはねえだろ!」
「……今日はおとなしく退くとしよう」
「ですが、次は見てらっしゃい!」
「……覚えていろよ! いや、完全に捨て台詞じゃねえか!」
光ノ丸たちはそれぞれ去っていった。一超がその後ろ姿を見て静かに呟く。
「敗れても 誇り忘れじ 潔さ」
たどり着いた所には青々とした芝生が広がっていた。葵の問いに爽が答える。
「ゴルフ場です。やや短めのコースが中心ですが、9ホールあります。完全予約制ですが、休日はこうして一般開放しています」
「な、なんでもあるんだね……」
「というかむしろ今まで知らなかったのか?」
「い、いや、恥ずかしながら、全然……」
「誰かがラウンドしていますわね……ん? もしかしてあちらの方は?」
そこにはゴルフを楽しむ万城目の姿があった。キャディやプレー同伴者から「ナイスショット!」と声を掛けられ、満更でもなさそうな表情を浮かべている。
「生徒会長じゃねえか」
「ゴルフも達者なのですね……」
憂が感心した声を上げる。
「……では、こちらが第三の、最後の俳句ポイントになります。こちらのゴルフ場の様子をご覧になって、今までと同じ様に思い浮かんだ句をそれぞれ一句ずつご披露頂きます。それではどうぞ、思い付いた方から挙手をお願い致します」
「……」
しばし考え込む一同。すると、再びキャディやプレーヤー達の「ナイスショット!」という掛け声が聞こえてくる。
「会長さんのグループ、皆さんお上手ですね……」
憂が再び感心した様子を見せる。
「ふん……」
光ノ丸が不機嫌そうに手を挙げる。爽が指名する。
「氷戸さま、お願いします」
「良い一打 打つことさほど 難儀せず」
「……判定は?」
一超は『2点』の札を上げた。光ノ丸は驚く。
「な、何故だ 余のゴルフの体験を踏まえての句だぞ 」
「講評の方を……」
「なんとなく 得意気なさま 鼻につく」
「な、なんだと……」
光ノ丸が膝を突いた。その様子を鼻で笑いながら、八千代がゆっくりと手を挙げる。
「五橋さま」
「万緑の 中に白球 よく映える」
「判定をお願いします」
一超は『4点』の札を上げた。八千代は静かに拳を握りしめる。
「やりましたね、お嬢様!」
憂の賞賛に八千代は片手を挙げて応える。一超が口を開く。
「季語用い 俳句の基本に 立ち返り」
「流石です、お嬢様!」
「ふふっ、もっと言って頂戴」
「ちっ……」
喜ぶ八千代たちの様子を苦々しげに見つめながら、飛虎が手を挙げる。
「次は……日比野さま」
「仲夏頃 流れる汗も 心地よし」
「判定の方を……」
一超は首を傾げつつ、『3点』の札を上げた。
「な、何でだよ! ちゃんと季語も使ったぜ 」
「……講評を」
「良い句だが 季語の季節が ややズレた」
「な、なんだって……?」
「この時期は 初夏という語が ふさわしき」
「くっ、俺としたことが……」
飛虎がうなだれる。憂がハッとして八千代に話しかける。
「これで御三方が合計9点で並びました!」
「どうやらそのようですわね。ということは……」
「我々三人による延長戦ということになるな」
「望むところですわ」
「ちょっと! まだ私が残っていますけど 」
葵が話を勝手に進めようとする光ノ丸たちに抗議する。光ノ丸が冷ややかに答える。
「……ならば早く句を詠め。時間の制限があるわけではないが、いつまでも待つというわけにはいくまい」
「う、う~む……」
すると三度キャディやプレーヤー達の「ナイスショット!」という掛け声が聞こえてきた。見事なショットを打ち終えたプレーヤーにキャディが駆け寄り、喜々としてハイタッチを求めた。プレーヤーはやや恥ずかしそうにしながらそれに応じた。
「あ、あれは 」
葵は驚いた。キャディに扮しているのが獅源だったからである。よく見てみなければ気が付かないほど、キャディ姿がすっかり板に付いていた。
「一体何をやってんだアイツは……」
同じく獅源の存在に気が付いた飛虎が呆れた声を上げる。何かを閃いた葵は勢いよくその手を挙げる。
「はい!」
「どうぞ、葵様!」
「良いショット 君のハートに カップイン」
「判定は 」
一超はやや唸った様子を見せながら『5点』の札を上げた。
「や、やったー 」
「ま、満点ですって 」
「な、何故だ 」
「理由は 」
一超に詰め寄ろうとする三人を爽が間に入って止める。やや慌てた一超は、一旦落ち着いてから講評を述べる。
「横文字の 大胆使用 感銘し」
「そ、そんな……」
「馬鹿な……」
「待てよ、ということは……」
飛虎の言葉に爽が笑顔で頷く。
「ええ、そうですね、葵様が合計10点で単独トップ、見事優勝となります。これで藍袋座さんとの優先交渉権を得たのは我々将愉会になります」
「か、勝ったの……?」
「なんか納得いかねえんだが……」
「致し方あるまいな……」
「いや、納得しちゃうのかよ!」
「今日の所は完敗ですわね……」
「完敗ってことはねえだろ!」
「……今日はおとなしく退くとしよう」
「ですが、次は見てらっしゃい!」
「……覚えていろよ! いや、完全に捨て台詞じゃねえか!」
光ノ丸たちはそれぞれ去っていった。一超がその後ろ姿を見て静かに呟く。
「敗れても 誇り忘れじ 潔さ」
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