僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
第十八話・1
冬休み中のある日。
自分の部屋でゆっくりしていると、いつもどおりと言うべきか香奈姉ちゃんがやってきた。
「ねぇ、楓。今、暇かな?」
「いや……。今はちょっと……」
僕がそんなことを言っても、香奈姉ちゃんが聞くわけもなく──
「よかった。暇だったんだね。それなら、私と一緒に遊びに行きましょ」
そう言って、僕の腕を掴んでグイグイ引っ張る。
いや、僕、暇だとは言ってないんだけど。
なんか無理矢理な感じがしないでもないんだが……。
僕なんかで、いいんだろうか?
まぁ、香奈姉ちゃんの服装からして、ものすごくお洒落だし。確実に誘ってるんだよね。
「ちょっと待って。…着替えをしなきゃ──」
「それじゃ、10分待ってあげるから、その間に着替えを済ませてね」
「そんな……」
10分って……。
たしかに男が着替えをするのには、そのくらいの時間で済むかもしれないけど。
急かしすぎじゃないのか。
「無茶じゃないよね?」
「う、うん。無茶ではないけど……」
「それなら、大丈夫だね。私が見ていてあげるから、早くして」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言ってくる。
香奈姉ちゃんの目の前で着替えをするのは、ちょっと気が引けるんだけど……。
この際、仕方ないか。
僕は、その場でルームウェアを脱ぎ始めた。
香奈姉ちゃんと一緒にやってきた場所は、いつものショッピングモールではなく、少しだけ歩いたところにある街の中だった。
こっちの方には、たしかライブハウスがあったはずだ。
まさか、ライブハウスに用事があってここに……。
そう思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。
現に、通り過ぎてしまったし──。
「ねぇ、楓。私と一緒に歩く時って、緊張したりする?」
何を思ったのか、香奈姉ちゃんがそう訊いてきた。
僕は、質問の意図がわからず香奈姉ちゃんに聞き返す。
「突然、何の話?」
「いや、ほら。…女の子と一緒に歩く時って、多少なりとも緊張するものじゃない? だから楓も、そうなんじゃないかと思ってね」
「なるほど」
「どうなの? 緊張とかしてる?」
香奈姉ちゃんは、緊張を孕んだような微妙な表情を浮かべて僕を見てくる。
まるで不安を感じてしまったかのような表情だ。
そんな顔で見られてもな。
僕は、こう答えるしかないじゃないか。
「緊張はしてないと思うけど……。ただ、これからどこに行くつもりなのかなって思って──」
「なるほどね。それで、そんな固い表情をしてるんだね。──安心していいよ。楓が知らないような場所じゃないから」
「それなら、いいんだけど……」
それを聞いて、僕は安堵する。
ちなみに、香奈姉ちゃんと一緒に歩いていて、緊張したことはない。
いつもどおり、お姉ちゃんと一緒に歩いているっていう感覚で、むしろ安心感を覚えるくらいだ。
そのことを理解したのか、香奈姉ちゃんは腕を絡めてきた。そして、嬉しそうな笑顔を僕に見せて──
「そんな顔しないの。今日は、私とのデートなんだから、たくさん付き合ってもらうからね」
と、そう言ってくる。
たしかに遊びに行こうって言ってきたのは、香奈姉ちゃんだけど。
この場合、僕に拒否権はないんだよね。
「お手柔らかに頼むよ。…香奈姉ちゃん」
「任せておきなさい」
香奈姉ちゃんは、本当に嬉しそうにそう言った。
こんな寒い日には、温かいものでも食べたい気持ちになってしまう。
香奈姉ちゃんも僕と同じ気持ちだったのか、歩いている途中にあったラーメン屋を見かけると、すぐに足を止めた。
「久しぶりに、ラーメンでも食べていこうか?」
「うん、そうだね。ちょうどお昼だしね」
僕は、微笑を浮かべてそう返す。
香奈姉ちゃんがラーメンっていうのは、イメージが合わないかと思われるが、香奈姉ちゃんだって人間だ。
気分によって食べたいと思うのは、彼女にだってある。
「そういうことだから、さっそく入ろう。…お腹空いちゃったよ」
香奈姉ちゃんはそう言って、先にラーメン屋に入っていく。
遅れるわけにはいかないと思い、僕も香奈姉ちゃんの後を追いかけるようにラーメン屋に入る。
「いらっしゃいませ! 2名様ですか?」
「はい。2人です」
「食券機がありますので、食券を購入してからお好きな席にお座りください」
「はい」
香奈姉ちゃんは、そう返事をした。
めずらしく、ここのラーメン屋はファミリー層への対応もしてるみたいだ。カウンター席だけでなく、テーブル席もちゃんとある。
とりあえず、食券機で食券を購入しよう。
食券を購入してテーブル席に座ると、すぐに店員さんがやってきた。
味の好みなどを聞くためだ。
僕と香奈姉ちゃんは、各々で好みの状態を伝える。
最近のラーメン屋は、こういうのが普通らしい。
なんにせよ、デフォルトの状態が好きなので全部『普通』にしたのだが。
「なんかドキドキするね。ラーメンを待つ間って」
「そうかな?」
「そうだよ。なにしろ、チャーシュー麺を頼んだんだもん。…楽しみで仕方がないよ」
「そうなんだ。…それは、ドキドキしてしまうよね」
「楓は、何を頼んだの?」
「僕は、普通のラーメンだよ。ライス付きのね」
「まぁ、ライスは定番だよね」
香奈姉ちゃんは、髪留めのためのシュシュを用意する。
香奈姉ちゃんの髪は少し長めだから、それは必要かもしれない。
そうして、しばらくしないうちにラーメンが運ばれてきた。
僕は普通のラーメンとライスで、香奈姉ちゃんはチャーシュー麺とライスだ。
「うん。美味しそう」
「そうだね。とってもいい匂いだね」
僕も、そう相槌をうつ。
それにしても。
香奈姉ちゃんが頼んだチャーシュー麺とライス。
そんなに食べられるんだろうか。
基本的に、僕は自分の頼んだものにしか興味がないので、香奈姉ちゃんが頼んだものには手をつけないつもりだけど……。
案の定、香奈姉ちゃんは不安そうな表情で僕に言ってくる。
「ねぇ、楓。ちょっといいかな?」
「何?」
「もし全部食べられなかったら──」
「僕は、自分の分しか食べないからね。食べられなかったら、それは自己責任ってことで──」
「え……。そうなの? 楓が手伝って食べてくれるんじゃないの?」
「自分が頼んだラーメンで手一杯だよ。しかもライスも一緒に頼んじゃってるし……」
僕は、自分が頼んだラーメンとライスに視線を落とし、そう言った。
さすがにラーメンとライスだけでお腹がいっぱいになりそうだし。
「そっか。それなら、しょうがないね」
香奈姉ちゃんは、なぜか笑みを浮かべてそう言っていた。
さすがに、全部食べるだろう。
香奈姉ちゃんは、無理な注文はしないタイプだから。
ラーメン屋から出ると、香奈姉ちゃんは満足したように軽く伸びをする。
「あ~、美味しかった」
「そうだね」
僕は、香奈姉ちゃんの満足そうな顔を見て、微笑を浮かべていた。
その顔を見る限りだと、よほど美味しかったようだ。
「なんか久しぶりにラーメン食べたな。楓はどうだった? ラーメンは美味しかった?」
「うん。美味しかったよ。家で自炊することが多いから、久しぶりだったかな」
「ラーメンだけは、真似して作れないよね」
「うんうん。スープからして無理だよ」
「そうだよねぇ」
なんだかんだ言っても、ちゃんと完食するからそこまで心配しなかったが、そのスレンダーな体でよく入るよなって思ってしまう。
きっとデザート感覚で入っちゃうんだろうな。
「──さて。お腹もいっぱいになったし。行きましょうか?」
香奈姉ちゃんは、そう言って手を差し出してくる。
どこへ行くつもりなのかはわからないが、とりあえずついていけば問題はないだろう。
僕は、香奈姉ちゃんの手を握った。
香奈姉ちゃんは、微笑を浮かべて歩き出す。
ラーメン屋の後は、どこへ行くつもりなんだろうか。
自分の部屋でゆっくりしていると、いつもどおりと言うべきか香奈姉ちゃんがやってきた。
「ねぇ、楓。今、暇かな?」
「いや……。今はちょっと……」
僕がそんなことを言っても、香奈姉ちゃんが聞くわけもなく──
「よかった。暇だったんだね。それなら、私と一緒に遊びに行きましょ」
そう言って、僕の腕を掴んでグイグイ引っ張る。
いや、僕、暇だとは言ってないんだけど。
なんか無理矢理な感じがしないでもないんだが……。
僕なんかで、いいんだろうか?
まぁ、香奈姉ちゃんの服装からして、ものすごくお洒落だし。確実に誘ってるんだよね。
「ちょっと待って。…着替えをしなきゃ──」
「それじゃ、10分待ってあげるから、その間に着替えを済ませてね」
「そんな……」
10分って……。
たしかに男が着替えをするのには、そのくらいの時間で済むかもしれないけど。
急かしすぎじゃないのか。
「無茶じゃないよね?」
「う、うん。無茶ではないけど……」
「それなら、大丈夫だね。私が見ていてあげるから、早くして」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言ってくる。
香奈姉ちゃんの目の前で着替えをするのは、ちょっと気が引けるんだけど……。
この際、仕方ないか。
僕は、その場でルームウェアを脱ぎ始めた。
香奈姉ちゃんと一緒にやってきた場所は、いつものショッピングモールではなく、少しだけ歩いたところにある街の中だった。
こっちの方には、たしかライブハウスがあったはずだ。
まさか、ライブハウスに用事があってここに……。
そう思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。
現に、通り過ぎてしまったし──。
「ねぇ、楓。私と一緒に歩く時って、緊張したりする?」
何を思ったのか、香奈姉ちゃんがそう訊いてきた。
僕は、質問の意図がわからず香奈姉ちゃんに聞き返す。
「突然、何の話?」
「いや、ほら。…女の子と一緒に歩く時って、多少なりとも緊張するものじゃない? だから楓も、そうなんじゃないかと思ってね」
「なるほど」
「どうなの? 緊張とかしてる?」
香奈姉ちゃんは、緊張を孕んだような微妙な表情を浮かべて僕を見てくる。
まるで不安を感じてしまったかのような表情だ。
そんな顔で見られてもな。
僕は、こう答えるしかないじゃないか。
「緊張はしてないと思うけど……。ただ、これからどこに行くつもりなのかなって思って──」
「なるほどね。それで、そんな固い表情をしてるんだね。──安心していいよ。楓が知らないような場所じゃないから」
「それなら、いいんだけど……」
それを聞いて、僕は安堵する。
ちなみに、香奈姉ちゃんと一緒に歩いていて、緊張したことはない。
いつもどおり、お姉ちゃんと一緒に歩いているっていう感覚で、むしろ安心感を覚えるくらいだ。
そのことを理解したのか、香奈姉ちゃんは腕を絡めてきた。そして、嬉しそうな笑顔を僕に見せて──
「そんな顔しないの。今日は、私とのデートなんだから、たくさん付き合ってもらうからね」
と、そう言ってくる。
たしかに遊びに行こうって言ってきたのは、香奈姉ちゃんだけど。
この場合、僕に拒否権はないんだよね。
「お手柔らかに頼むよ。…香奈姉ちゃん」
「任せておきなさい」
香奈姉ちゃんは、本当に嬉しそうにそう言った。
こんな寒い日には、温かいものでも食べたい気持ちになってしまう。
香奈姉ちゃんも僕と同じ気持ちだったのか、歩いている途中にあったラーメン屋を見かけると、すぐに足を止めた。
「久しぶりに、ラーメンでも食べていこうか?」
「うん、そうだね。ちょうどお昼だしね」
僕は、微笑を浮かべてそう返す。
香奈姉ちゃんがラーメンっていうのは、イメージが合わないかと思われるが、香奈姉ちゃんだって人間だ。
気分によって食べたいと思うのは、彼女にだってある。
「そういうことだから、さっそく入ろう。…お腹空いちゃったよ」
香奈姉ちゃんはそう言って、先にラーメン屋に入っていく。
遅れるわけにはいかないと思い、僕も香奈姉ちゃんの後を追いかけるようにラーメン屋に入る。
「いらっしゃいませ! 2名様ですか?」
「はい。2人です」
「食券機がありますので、食券を購入してからお好きな席にお座りください」
「はい」
香奈姉ちゃんは、そう返事をした。
めずらしく、ここのラーメン屋はファミリー層への対応もしてるみたいだ。カウンター席だけでなく、テーブル席もちゃんとある。
とりあえず、食券機で食券を購入しよう。
食券を購入してテーブル席に座ると、すぐに店員さんがやってきた。
味の好みなどを聞くためだ。
僕と香奈姉ちゃんは、各々で好みの状態を伝える。
最近のラーメン屋は、こういうのが普通らしい。
なんにせよ、デフォルトの状態が好きなので全部『普通』にしたのだが。
「なんかドキドキするね。ラーメンを待つ間って」
「そうかな?」
「そうだよ。なにしろ、チャーシュー麺を頼んだんだもん。…楽しみで仕方がないよ」
「そうなんだ。…それは、ドキドキしてしまうよね」
「楓は、何を頼んだの?」
「僕は、普通のラーメンだよ。ライス付きのね」
「まぁ、ライスは定番だよね」
香奈姉ちゃんは、髪留めのためのシュシュを用意する。
香奈姉ちゃんの髪は少し長めだから、それは必要かもしれない。
そうして、しばらくしないうちにラーメンが運ばれてきた。
僕は普通のラーメンとライスで、香奈姉ちゃんはチャーシュー麺とライスだ。
「うん。美味しそう」
「そうだね。とってもいい匂いだね」
僕も、そう相槌をうつ。
それにしても。
香奈姉ちゃんが頼んだチャーシュー麺とライス。
そんなに食べられるんだろうか。
基本的に、僕は自分の頼んだものにしか興味がないので、香奈姉ちゃんが頼んだものには手をつけないつもりだけど……。
案の定、香奈姉ちゃんは不安そうな表情で僕に言ってくる。
「ねぇ、楓。ちょっといいかな?」
「何?」
「もし全部食べられなかったら──」
「僕は、自分の分しか食べないからね。食べられなかったら、それは自己責任ってことで──」
「え……。そうなの? 楓が手伝って食べてくれるんじゃないの?」
「自分が頼んだラーメンで手一杯だよ。しかもライスも一緒に頼んじゃってるし……」
僕は、自分が頼んだラーメンとライスに視線を落とし、そう言った。
さすがにラーメンとライスだけでお腹がいっぱいになりそうだし。
「そっか。それなら、しょうがないね」
香奈姉ちゃんは、なぜか笑みを浮かべてそう言っていた。
さすがに、全部食べるだろう。
香奈姉ちゃんは、無理な注文はしないタイプだから。
ラーメン屋から出ると、香奈姉ちゃんは満足したように軽く伸びをする。
「あ~、美味しかった」
「そうだね」
僕は、香奈姉ちゃんの満足そうな顔を見て、微笑を浮かべていた。
その顔を見る限りだと、よほど美味しかったようだ。
「なんか久しぶりにラーメン食べたな。楓はどうだった? ラーメンは美味しかった?」
「うん。美味しかったよ。家で自炊することが多いから、久しぶりだったかな」
「ラーメンだけは、真似して作れないよね」
「うんうん。スープからして無理だよ」
「そうだよねぇ」
なんだかんだ言っても、ちゃんと完食するからそこまで心配しなかったが、そのスレンダーな体でよく入るよなって思ってしまう。
きっとデザート感覚で入っちゃうんだろうな。
「──さて。お腹もいっぱいになったし。行きましょうか?」
香奈姉ちゃんは、そう言って手を差し出してくる。
どこへ行くつもりなのかはわからないが、とりあえずついていけば問題はないだろう。
僕は、香奈姉ちゃんの手を握った。
香奈姉ちゃんは、微笑を浮かべて歩き出す。
ラーメン屋の後は、どこへ行くつもりなんだろうか。
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