僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿心刃

第十四話・7

無事に奈緒さんとのデートが終わり、自分の家に帰ってくると、そこには香奈姉ちゃんがいた。
香奈姉ちゃんは、いつもの笑みを浮かべ、僕に訊いてくる。

「どうだった? 奈緒ちゃんとのデートは?」
「普通だよ。喫茶店でゆっくりした後、あちこち見て回っただけ」
「そっか。キスをしたりはしてないの?」
「それは……」
「お。その返答は。…さては、奈緒ちゃんの方から求めてきたかな」

さすがに鋭い。まるで僕と奈緒さんとのデートの内容がすべてわかっているみたいだ。
僕は、急に恥ずかしくなり香奈姉ちゃんから視線をそらす。

「その顔は、図星だな。…さすが楓。私の期待を裏切らないね」

香奈姉ちゃんは、ニヤニヤしながら僕の体を肘で軽く突いてくる。

「ちょっ……。やめてよ、香奈姉ちゃん」

僕は、肘で突いてくる香奈姉ちゃんをそのまま抱き寄せた。
これは、ちょっと強引だったかもしれない。
しかし香奈姉ちゃんは少しも嫌がったりせず、素直に僕に抱きしめられていた。
むしろ頬を赤く染めて僕を見てきて、言ってくる。

「やっぱり、モテる男は違うんだね」
「香奈姉ちゃんだって、男子から結構モテているじゃないか」
「私の場合は、違うよ。私の外見だけを見て、告白してくる人が多いだけだよ」
「そうなんだ」

僕は、相槌をうつ。
それは僕の場合も、変わらないんじゃないかな。
そう思ったが、口には出さなかった。
どちらかというと、僕は陰キャでぼっちの方になるからだ。
慎吾とは、バイト先が一緒だから話すきっかけが多いっていうだけだ。親友なのかと訊かれたら、自信を持って『そうだ』と答えることはできないだろう。

「この際だからはっきり言っておくけど、楓は私以外の女の子を好きになったりしちゃダメなんだからね。楓は、私のものなんだから──」
「それじゃ、何で奈緒さんとデートをさせたりしたの?」
「それは、ほら。奈緒ちゃんは楓のことが好きだから、いい思い出をたくさん作らせてあげたいなって思って」
「それは……」

それは、何か違うんじゃないのか。
そうは思ったが、やっぱり言葉には出てこなかった。
奈緒さん自身も、このことについては了承済みらしいから、僕からは何も言えなかったのだ。
でも、これって最終的には奈緒さんのことを傷つけることにならないのかな。
決して報われることのない恋になるんだけど。
どうなんだろう。

「奈緒ちゃんだって、わかっているよ。楓との恋愛がうまくいかないってことくらいはね」
「それなら、どうして……」
「奈緒ちゃんが言うには、一種の男避けだって」
「男避け? それって……」
「うん。今は、楓と付き合っていることにして、他の男の人を近くに寄せ付けたくないんだって」
「なるほどね」
「だからね。楓も、奈緒ちゃんの前ではしっかりとしなきゃダメなんだからね」
「う、うん……。できる限りのことはやってみるよ」
「頑張ってね。…それと、私とのスキンシップやデートもよろしくね」
「え……。それって、まさか……」

僕は、嫌な予感がして香奈姉ちゃんを見る。
香奈姉ちゃんは、面白い物でも見つけたかのように悪戯っぽく笑みをつくる。
そういえば、香奈姉ちゃんを抱きすくめている状態だったな。
僕は咄嗟に手を離したが、今度は香奈姉ちゃんの方から僕を抱きすくめてきた。
大きめな胸の膨らみが僕の体に当たっている。

「私とのスキンシップは、どうしようか? やっぱりベッドの上の方がいいかな?」
「それは、その……。えっと……」
「そうだなぁ。ベッドの上でエッチなことをするのもいいんだけど、それだけじゃつまらないし……。さて、どうしたものかな……」

香奈姉ちゃんは、『う~ん……』と大袈裟にもとれるような声を上げて、周囲を見回す。
何かするつもりなのは、見え見えである。
まさか、また香奈姉ちゃんとセックスをするつもりなのか ︎
もしかして、それ以上のことをするってことか ︎
香奈姉ちゃんと、あんなことやこんなことをする……。
どちらにしても、僕にとってはあまり良いことのようには思えない。
香奈姉ちゃんとセックスをすると気持ちいいんだけど、向けられてくる愛が重たいんだよなぁ。
まぁ、僕も香奈姉ちゃんとしかセックスはしないって決めてるから、別に構わないんだけどさ。

「──そうだ。楓がどうしたいのか決めてよ」
「え、僕が?」
「うん。楓は、私とのエッチで何がしたいかな?」

何がしたいって言われても……。
僕からは、何もできないし。
何かするにしても、香奈姉ちゃんの胸を揉みしだくことくらいしか思いつかないんだけど……。

「僕は……」
「まぁ、楓にできることと言えば、私の胸を揉むくらいしかできないか……。それならさ、私の大事な箇所に指でも挿れてみよっか?」

香奈姉ちゃんは、そう言って自分の下腹部に手を添える。
いつものミニスカート越しだったので、何かを誘っているみたいだ。

「どうして、香奈姉ちゃんの大事な箇所に指を挿れないといけないの?」

僕は、香奈姉ちゃんの下腹部の辺りを見て、そう訊いていた。
今度は、いったい何を考えてるんだろう。
新しいエッチなことでも思いついたんだろうか。
香奈姉ちゃんは、僕の手を優しく握ってきて言った。

「少し前に本で見たんだよね。女の子の大事な箇所に指を挿れてもらうの。その時に心がキュンキュンしたら、その人が大好きな証拠なんだって」
「それって……。試さなくても、すぐにわかることだよね」
「うん、そうだね。すぐにわかっちゃうね」

香奈姉ちゃんは、頬を赤く染める。
それはつまり、僕にやってほしいってことだろう。
僕は嫌だな。
香奈姉ちゃんの大事なあそこに指を挿れるのは……。
万が一、傷つけたら、大変な事になるし。

「だったら──」
「楓の部屋に行こう。こういうことは、私の気分が乗っているうちにやった方がいいし」

僕が最後まで言いきる前に、香奈姉ちゃんがそう言ってそのまま僕の腕を掴んできた。

「ちょっ…… ︎ 香奈姉ちゃん ︎」
「何よ? まだ何かあるの?」

香奈姉ちゃんは、不満そうな顔をする。
──ダメだ。
香奈姉ちゃんにそんな顔をさせちゃいけない。

「いえ……。何もないです」
「それなら、はやく楓の部屋に行こうよ」
「う、うん……」

僕は、積極的に腕を引っ張る香奈姉ちゃんを見て、色んな意味で敵わないなと思い、頷いていた。
香奈姉ちゃんの方は、やる気マンマンのようだ。
僕の方は、今から不安でたまらないんだけど……。
大丈夫なんだろうか。

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