とろけるような、キスをして。

青花美来

返事をさせてください。(2)


「うん。……あ、あとね?」

「ん?」


修斗さんの手を取り、そっと見上げる。


「……みゃーこ?」

「次会った時、返事してほしいって言ってたよね。……修斗さん。私、修斗さんのことが好き。大好き」


どんな言葉でこの気持ちを伝えようかと、たくさん考えて、悩んだ。
でも結局、思ってることをそのまま伝えるのが一番良いんだと思って、言葉を紡ぐ。


「返事、待たせてごめんね。私、向こうにいる間ずっと修斗さんのこと考えてた。早く会いたかった。直接声が聞きたかった。抱きしめて欲しかった」


揺れる目は、驚きに満ちていてまだ受け止めきれていない様子。
待ちきれなくて、私から抱き着く。
すると、背中に大きな手が回った。


「……みゃーこ。本当に?俺でいいの?」

「うん。修斗さんがいい。……むしろ、修斗さんこそ私でいいの?」

「俺はみゃーこじゃなきゃ嫌だ。みゃーこ以外いらないしみゃーこがいればそれでいい」


やばい、嬉しい。幸せ。


ポツリと呟いた修斗さんの声は、震えているように感じた。


「夢じゃないよね?」

「夢だったら私が困る」

「やだ俺も困る。……どうしよう。マフラーも嬉しいしみゃーこが可愛すぎるし幸せすぎて俺今日死ぬのかな?」


パニックになりそうな修斗さんを落ち着かせるために、少し体を離して顔を寄せた。


「みゃーこ?……!」


肩に手を置いて、背伸びをして。目を伏せた先には、驚いた顔。
触れるだけのキスだけど、今の私には恥ずかしくてこれが限界で。

でも


「……それじゃ足りない」

「えっ……んんっ」


すぐに塞がれた唇は、何度も角度を変えてどんどん深くなっていく。
ぬるりと入り込んできた舌が、歯列をなぞって口内を暴れ回る。
あまりの激しさに、膝に力が入らなくなってガクンと崩れ落ちそうになった。
それを修斗さんは片手で支えると、そのまま何度もキスをしてきて。


「……このまま連れて帰りたい」


ゆっくりと離れると、すぐに力強く抱きしめられた。
荒い呼吸を落ち着かせながら、その背中に縋り付くように腕を回す。
足がガクガクして、立っていられない。


「マジで可愛い。どうしよう、このままベッド直行したい」


そう言って耳元や首筋にもキスを落とす。


「んっ……だ、め……だよ。大和さんのところ……行くんでしょ?」

「いやアイツよりも今はみゃーこ。みゃーこが誘惑してきたのが悪い。大好き。やばい」


言うが早いか、修斗さんは家の鍵を後ろ手に閉めて、靴を脱いで私を横抱きにして家に入る。


「……みゃーこの部屋、行こ」


三階に上がり、私の部屋に入る。
ほどよく暖房で温まった部屋は、コートの必要性など皆無だ。
修斗さんは私をベッドに寝かせて、自分のコートと私が巻いたマフラーを脱いでベッドの下にそっと置く。
私の上に馬乗りになると、ベッドが軋む音を立てた。


「……大和さんのところは?」

「俺といるのに大和のことばっかり。なに、みゃーこはそんなに余裕なの?」

「なっ……」

「俺は余裕無いよ?ほら」


そう言って私の手を持って、ジーンズ越しに熱く滾る場所に触れさせる。
興奮しているのがわかる、その質量の高さ。
赤面しながらも、思わず撫でるように指をその部分に這わせてしまう。すると見ただけでもわかるくらい、また膨らんだ気がする。

そのお返しとばかりに、私の太腿の内側を修斗さんの指がツー……と這った。


「っ!」

「俺といるのに、気安く他の男の名前呼んでんなよ?……そんな余裕、無くしてやるから」


……私に余裕?そんなの、あるわけないじゃん。

心臓は破裂しそうなほどうるさく鳴り響いているし、呼吸すらおかしくなっている。
上気した頰と熱い視線が、私を溶かすように射抜いていく。


「頭ん中から、俺以外なんて消えればいい」

「俺のことだけ考えて、感じてろよ」


言葉が、甘い蜜のように脳に染み込んでいく。
それは、私を優しく包み込んで。そして溶かしていく。

キスの雨を降らすかのように、絶え間無く何度も角度を変えて重なる唇。
次第に耳、首筋、鎖骨へと動くそれは、壊れ物を扱うように優しく、丁寧に私を愛撫していく。

冷えた指先が、私の敏感なところを執拗に責めて。
その刺激に、私は幾度も吐息を漏らした。


「……美也子。本当可愛い」


たまに呼ぶ"美也子"が、さらに興奮を煽る。

窓から私たちを照らす月明かりと、しんしんと降り続く雪。
外は寒いのに、お互いを求め合う身体は熱い。
響く嬌声とベッドが何度も軋む音。

少し遅れてやってきたクリスマスは、とても熱い夜だった。


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