カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.28(1)

カンナとゆうなの目の前を、せり上がってくる鱗雲が大空いっぱいになびいていた。
ふたりは大樹の下のベンチで、いつもようにただ漫然と時の流れに身を揺られながら・・
それが何時しか雲が掃け、冬特有のシャープな蒼の世界が空を占めている。
どれくらい、彼らは何もせず何もない充実したテキトーな時間を嗜んでいただろう。


「ねぇ、カンナくん。デートしようよ。ふたりだけのところへ。」
ゆうなが、カラッとした初冬の空気に乗せて、思いつきを口にする。
「ふたりだけっ??」
って、『今も二人だろと!』と思うカンナ。
そのカンナの言葉と思いを見越していたように、ゆうなが空に言葉を投げかける。
「ここは絶対に二人だけのトコだから、、二人だけっていうのじゃあないんだよねぇ・・。
・・そうだ!海がいい。海にしようよ。」
『また唐突な・・。簡単に言うなぁ。どうやって行くんだあ?。でも、おもしろいだろっオイ!』
カンナの心の声が、またゆうなには届いちゃう。
「あの花火の夜みたいにぃ・・、私がカンナの自転車の後ろに乗っかってさあ・・」
すでに思い浮かべ、笑みを頬に溢しながら話す女のコ、ゆうながいた。

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