カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.27(8)

少し肌寒い部屋の空気が静まりかえる頃、寝つけぬ夜を過ごすゆうな
羽毛の掛け布団をほっこり被り、昼間の太陽の香りと肌触りに口元をくすぐられながら、
暗闇をゆらゆら揺らぎ、夢のさざまを楽しんでいた。
締め切ったガラス窓が開け放たれたのよう、
差し込む月の光が、揺れるはずのないレースのカーテンを揺らすかのように撫でつける。
闇と光が、ゆうなの顔を斜めにモノトーンに切り裂いて、ちょうどその刃先が瞼を掠めていた。
迫る鋭利な光
目を開いているよりも閉じていた方が、月の存在を見せつけれるゆうな
突き刺す氷点直下の光り、でもその裏腹に触れて揺れる柔らかい温もりを忍ばせるお月様
催眠術にでもかけられたかよう、勇み進んで彼女は軽く着替え、裏庭の草原に誘われる。


カンナがいる
カンナがそこに
カンナの後ろ
カンナに手が届き
カンナを包む
時間がスライドショーのように、ゆうなの中をワープする。
ゆうなは自分に沈み、月夜に浮いていく・・


『月って、こんな明るいのっ!』
カンナを胸に抱えて、こころに思う。
というよりか、身体が感じ、言っている
髪がなびく頬が、
カンナ巻きつき、前に組み合わせた手の甲が。
肌をやさしく冷たく暖かく焦がすようにいま
今の私にとって、夜こそ闇・・
でも今夜は違うよぉ
初めて感じるこの感覚
目で光を感じるのではなく、肌に透き通ってくる味わい
そして、左手に落ちたカンナの涙・・
わたしの手の甲に焼けつくようだった。
そこに注ぐ月光が、カンナの一筋の跡で一層光を放つ。
自らの意思で燃え盛るように
まぶしくて、まぶしすぎて
目でなく、わたしの心をそう言っている。
私の中の奥底の悩みが、このひととき遠のいていった。
今夜の月は、光をどこまでも届かせる。
目でなく、心で見える光があるなんて・・
初めて持つこの感覚
カンナ自身が月のよう
そして今、月を抱えているわたし
私だけの一瞬が永遠に感じる時間とき
「・・全部ありまま受け入れればいいのよ。それが自分なんだから・・」
カンナに投げかけ、自分にも繋ぐ言葉
彼がしたようにまた、私も月を仰ぐ
『・・彼を私に届けてくれてありがとう』
これは、カンナに頼り寄るものでなく、
むしろ弱い自分からふっ切るゆうな自身の言霊

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