カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.25(6)

底のない夜空に焼き付き、河の水面を色めき立ち、ゆうなの頬を染めて、
その眼を煌めかせ一等星にしてしまうファイヤーワーク。
そのわざがフラッシュのように時を刻み、その魔法がしばしカンナの時を失わせた。
「・・・あなたの視線もね。」
ゆうなのこのひと言がカンナの覚醒へと導き、
カンナの視線をがまた夜空の向こうで、ゆうなの視線と交差した瞬間、
この夏のピークを告げる花火が弾け飛んだ。
ふたりは重なる息を飲み、同じ鼓動を叩き、心の波動が絡み合って夜空に解放され、
どこまでも溶け込んでいく。
どっーんンンン・・
遅れてくる音がふたりを包むようにこだまして、その一瞬はどこまでも遠く永遠のよう・・
花火の閃光が残像となり、一枚のポートレートとしてカンナとゆうなの心にリフレインする。


ゆら~り、ゆらり
夏の夜風と時の流れに漂いながら、自転車でふたり乗り
ゆうなは後ろの座席で、カンナの背中に頭をもたげながら、足を交互にぶ~らぶら
「・・・あなたの視線もね。・・」
カンナは、このゆうなの『あなた』という響き、この言葉の意味合いに酔いしれながら、
ペダルを踏みしめた。


プップー
ふたりを追い越していくバイクの警笛音
すれ違いざまに、ふたりの存在が見えないかのように顔を前に向け、
かすかな笑顔だけを置き去りにしていく。
電柱の街灯とふたりの視線が、その制服姿の背中をやさしく包む宵しぐれ・・

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