カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.25(4)

花火大会に向かう人たちに混じって、カンナとゆうなも歩いた。
カンナは自転車をハンドルを押して、ゆうながカンナのひじに手を絡めた。
人々は光りに引き寄せれられる夏の虫のように、先に見える裸電球が並ぶ
夜店のにぎわいに足を急がせ、ふたりを追い抜いていった。
でも、ふたりはむしろこのふたりの時間・ふたりの感覚がいつまでも続くこと、
そして、そこはかとなくこの夏の夜空に恋しがれる想いにいつまでも浸っていたかった。
ぴゅるぴゅるぴゅる~・・ドっどどっん
その全身に浴びる音響は、ふたりの心の太鼓を打ち鳴らし、気分を揚々に弾ませた。
打ち上がる花火、その一夜の花に群がる人々たちまでにはまだしばしの距離。
でも、今ふたりいる場所から花火までは、それを見上げほどに近く、
河の水面に飛び散る花火の破片をかき集め、ふたり占めにできるこの距離感と、
ふたりにも見えない、でもふたりだけが互いに感じられる温もりの間隔とが
この上なく絶妙のバランスを奏で保つ位置にあった。
「ここにしよっか。ここから見る花が一番きれいだよ」 と、そっとひとり呟くカンナ。
カンナさえも気づいていない言い間違いと、花火が花火を誘い舞い上がり舞い散る光景に
ゆうなは笑みがこぼれ、涙さえこぼれそうになった。
「そうね。ここで河の花火をすくって、遊びましょ。」
ゆうなはカンナの美感覚に合わせた自分の言葉に笑みを添えてカンナに応えた。
人の波を外れ土手を降りると、河川敷の野球場に色あせた青いベンチだけがポツリ・・
腰かけるふたりの距離は、ぴったり寄り添うわけでもなく、
やはり互いの温もりオーラが感じられる埋めるにはもったいない魔法の隙間があった。

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