カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.25(2)

ゆうなの背、奥に見える住まいは、いつも丘の草原の方から見ている裏手側に当たる。
というよりは本来の建物の玄関口は、こちら側なのだろう。
そこにゆうなのお母さんにしては、似ても似つかないおばさんが立っていた。
「わたしのおばさん。」 ゆうなはカンナの目の先を捉え、そのとおりのことを紹介した。
でも、次にゆうながカンナを紹介する前に、そのおばさんは、
「カンナくん。いい男だねぇ、ゆうなちゃんのいうとおり。」 
と前々からの知っていたように、人懐っこい顔をカンナに浴びせた。
「おっ、おばさんったら。」 ゆうなはどぎまぎ、カンナの顔をまともに見れない。
「だって、ホントのことでしょ。いいカレシ見つかってよかったね。」
おばさんは、ゆうなそっちのけで、カンナを惚れ惚れするような目で見ていた。
「おばさんっっ。そんなんじゃないって、まだぁ。」 ゆうなの本心が見え隠れ・・。
「まだねぇ。じゃあ、おばさんのカレシになってもらおうかな。今どきのナヨっちい男の子と違って、一本筋が通ってそうないい顔してるわ。ゆうなちゃんが惚れるのもわかるわ。
よろしくね、カンナくん。」
勢いに押され、カンナも 「こ、こんばんは。よろしくお願いします。」
ゆうなは顔を赤くして、 「カンナまで、もう・・。」
おばさんは、ゆうなとカンナの間に立ち、完全に二人を手玉に取っていた。
「っはっは。でもカンナくん・・、ゆうなちゃん、君の話しをするときだけは、笑顔を見せるようになったのよ。これはホントのこと。感謝してるのよ。ありがとう。」  
さっきまでのチャラけた顔と打って変わって、まじめな大人の顔を見せるおばさん。
「カンナくん。ゆうなちゃんのこと、任せていいのね。大丈夫?」
「おばさんったら、・・。」 ゆうなは恥ずかしそうに言いながらも、横目でカンナを伺う。
ふたりの視線を感じ、カンナは期待に応えるべく、軽く顎を引いて、
「もちろん。ゆうなっ・・、ゆうなさんを今晩、お借りします。」
「ホントいい男、見つけたね。」
ゆうなは、おばさんのその感心するようなひと言に、今度は否定しなかった。
「じゃぁ、いってきますっ!。おばさん。」
いつもの、いやいつもにもまして弾けた笑顔のゆうな。
それはまるで初めてディズニーランドのゲートをくぐったときの少女のよう。
西の空の低い雲には、最後の太陽の光りが手を振るように影となって映っていた。
眼下の平野に横たわる大河の向こう側には、色を失った漆黒の山脈
空は濃紺、それでも尾根との際だけがなぜか色交じり合うことなく光って感じた。
その山の傾斜にこだまする響き
ドンッ・ドドン・・ドンッ・・、もうすぐ花火大会の始まりを告げていた。
「いってきますっ!。」 カンナもこだまにリズム、ゆうなにハモらせ、おばさんにあいさつ。
おばさんに背を向けるふたり
カンナがそっと差し出す手の甲に触れるゆうなの手の甲
急な階段なため、ゆうなはいつも手すりを使う。
でも今晩は、その手をカンナの腕にくるっと絡ませた。
おばさんに振り向くふたり
カンナは、おばさんにこころなし胸を張るように男を見せ・・
ゆうなは、おばさんに同性の共感を求める女の笑みを見せ・・
おばさんは、「キャッ・・、うらやましいったら。・・楽しんでらっしゃいなぁ、お似合いさん!」
その『キャッ』の響きの感触に、カンナはおばさんとゆうなの同じ血の流れを感じた。

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