カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.24(2)

ゆうなの座るベンチに座り込み、カンナは肩で息を整えた。
何気にカンナは今までは犯しがたかったゆうなの世界に難なく飛びこめた気がした。
そこには今まであった垣根はなく、むしろカンナを迎える為に門が開け放たれてよう。
それでもまだ、ふたりの距離はベンチの端と端・・
急いて走ってきたため、波打つカンナの鼓動に、ゆうなの存在が拍車をかける。
ふたりをつなぐのは、カンナの荒い深呼吸と、それをなぞるゆうなの呼吸


鉄道の敷石の上に使うような枕木を幾重にも並べた一本の小道
雨に打たれ突然黒く浮かびあがり、まるで何もないところに川が伸び出したようだった。
その源は森の境界に建つ建物から起こり、この大樹の手前で小道なる川は終わりを告げる。
大樹の傘からはみ出た小道の最後は足で踏みならされた剥き身の土で、
森から伸びる小道なる川がまるで流れ込むように、みるみるうちに小さな水たまりを作った。
不思議にもその水面は湖のように透き通り、どこまで深く深くあるように見えた。
降ってくる雨つぶが水面で跳ね返り、小さな王冠をいくつも生み出し、
並べられた王冠がストップモーションのように時を刻んだ。
数えきれない生み出され消えていく王冠の後には無数の波紋が広がり、
リズムがあるようでないようで、隣りとくっついては反響し共鳴しあう。


ふたりの重なり合っていた大きく深い、でも静かな呼吸が落着きを取り戻しだすと、
ふたりの心はおのず次なる重なりとなる拠りどころを探し彷徨い出す。
このまま息絶えそうな消えゆくつながりの中で・・
線香花火が最後、一縷いちるの燈火を落とすように、煌めく雨粒がひとつ
水たまりに、ポチャリッ
ふたりの意識がその一点で重なると、消えるのはなく、また王冠でもなく
再び支え合うようにもっと静かにもっと深く息つき出した。
水たまりに浮かべた心の小舟は、二人乗り
波紋にゆらり揺られ、背中合わせで、王冠が刻む時を楽しんだ。

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