カンナ&ゆうな

ノベルバユーザー526355

vol.20

第3節


そして
・・・・・・・・・


池に投げ込んだ小石の波紋のように、転校生のカンナへの関心は程なくして消えてしまっていた。
それはカンナが学校に馴染んだからじゃなく、ただ学校にいる者にとって、目新しいものではなくなっただけのことだった。
カンナにとっても新天地での新生活は、ゴーデンウイークあたりを過ぎればもう、
変り映えのしない学校生活となっていっていた。
学校なんて所詮、どこも同じ
リカちゃんハウスのママゴトごっこと同じで、型にはまった箱の中で、型にはまったストーリー展開
人形(生徒)にとっても主体性なんて必要なく、流れに身を任せていれば、それだけで主人公気分がそれなりに味わえて、この上楽なことはない。
後は何の疑いもなく同じことが繰り返されて、飽きられたころにはめでたく卒業
カンナにとってもその平々凡々さが決して嫌いじゃなく、学校でのあらゆることへ
付かず離れずの関係が居心地よかった。


あれから一週間
ぬるま湯に浸かり、眼をつぶったような学校生活の中で、
カンナの心の目は学校の外に向けられていた。
あの丘
あの朝焼け
あの香しい薫りに
あの女の子
心に焼き付いたあせることのない存在感・・
確かな経験でありながら、思えば思うほど、考えれば考えるほど、感じれば感じるほど、
日に日にそれが誰かの撮ったただのスナップ写真であるかように思われた。
あの朝の感覚、一度手にしたものを取り上げられなくないという不安
その不安を感じることへの焦燥感
まるで喉の渇き
月曜なら冷蔵庫を開ければいつでも飲めるミネラルウォーターの存在であったものが、金曜にもなるとサハラ砂漠のど真ん中を彷徨いながら焦がれるコップ一杯の水。
カンナの掻きむしるような喉のガサツキを潤わせるコップ一杯の水は、あの光景にしかなかった。
それが・・
あの風馳せる丘なのか
あの何かを予感させる朝焼けなのか
あのほのかな香しい薫りなのか
あの女のコの振り向く後ろ姿なのか


居ても立ってもいらないカンナは今また
朝陽を浴びてあの丘の上に立っていた。

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