オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第97話:まだまだ青い僕

01月02日 晴 0キロ
朝早くから、ドニトリー同室のオランダねえちゃんに誘われて、人影まばらなビーチを散歩した。お誘いなら、夜にしてくれよ。こんなすがすがしい朝、暇つぶしに付き合わされているのは白昼の元、いや白朝のもと明白だった。はだしで、波打ち際でじゃれ合うのにも飽きてきたので、宿に戻り、中庭の木陰でいっしょに朝食を摂った。お色気はない女だったが、誰が見てもボディラインも整った美形であった。美女と野人組み合わせ、僕たち2ショットは、軽いジョークに思えた。それでも「この娘、マジ、僕に気あるのかな」と思ったら、その勘違いもつかの間。朝メシを食ったら、そそくさと、チェックアウトして、北に向かっていってしまった。でも、人目をはばからぬ別れ際の濃厚なキス、どう見ても他人同士のそれではなかった。何だったんだ、この朝から出来事は。彼女に魔法かけた覚えはなかった。
太陽が高く登って頃、今日もまたビーチに出勤。この旅通じて、すでに体はこれ以上黒くなれないくらい漆黒肌となっていた。それでもなお、この上は炭になるしかない覚悟で寝そべり、ほどよく身体がほてってきたら、喉の乾きも癒すがために、ビーチ沿いのパブでビールを引っ掛けた。シドニーからこの東海岸に沿って北上した旅をはじめて間もないころ、まだまだケツが青かったことを思い出す。余りに日差しが気持ちいいので、昼の最中、半ズボンになってバイクに乗っていた。その夜、足は凄い熱を持ち、水膨れで張れあがってしまった。それほど日差しがギンギンに強く、日本での常識を持ち込むとそれこそ身を持って痛い目に会ってしまった。それ以来、日焼けには注意しているが、今では全身真っ黒で、なに人かわからないほどだった。ビーチで寝そべってはパブでビールを引っ掛けるを、何クール繰り返しただろうか。それでも、ビールは肌から蒸発してしまい、いっこうに腹が膨れ、酔っ払うことなどなかった。
ビーチリゾートの真髄とは何か。すばり、砂浜に寝そべっても、目前に広がる海には一切入らないことだ。「何で、もったいない」と言われるかもしれないが、その贅沢こそがビーチリゾートの真骨頂なのだ。それで持って、やっぱり水に入りたいというのなら、ホテルにあるプライベートビーチに突き出した淡水プールにでも浸かれるのがベストだろう。潮騒を聞きながらプールサイドで小説でも読み、時折海でも眺め目を休めるのも、これまたけっこう。砂浜に寝そべり、優しく吹く潮風の香りを手繰り寄せながら、いつかやってやろうビーチリゾートをイメージトレーニングして、将来の実現をひそかに誓った。
夜は、カジノに出かける。やっぱ、リゾートにカジノは付きもんでしょ。無くてもいいかもしれないが、あると断然リゾート気分が昇天する。幾分の有り金をポケットに押し込んで、情けないかな、実際は金になど全くといって余裕がなかったので、カジノのあるホテルまで歩いた。目的のゲームはひとつだった、「ブラックジャック」。台をはさんで、配られたカードの合計した数が、ディーラーよりも高く、でも21を越えたら負けという単純なもんだ。が、それだけ空気を読み、手札の枚数を吟味し、ツキを呼び込む力を要するゲームだった。昼間、ビーチでずっとブラックジャックの必勝パターンをシュミレーションしていたのが功を奏した。要は、なんだかんだで、根性と気合、大和魂だ。美人のディーラー(親)には目もくれず、ひたすら勝負でこだわり徹した結果、その報いもあり、ガッポリ儲け、帰りのタクシーで帰ることにした。勝ち誇った顔で、タクシーのシートにふんぞり返り、帰途に着く。僕の様子を見れば、ひと稼ぎしたのは一目瞭然。ひとり機嫌よろしく、タクシーの運ちゃんに、あっちだこっちだと指をさし、到着したのが、この安宿のバックパッカーズだとわかると、運ちゃんもオレ様のユーモアにバカ笑い。「ユー、シンデレラボーイ」と、皮肉のこもった運ちゃんの言葉に、木っ端恥ずかしい思いをしたのは、言うまでもない。これも、やっぱり若気の至りということか。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品