オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第88話:ハッピー クリスマス

12月25日 晴 106キロ
→franford→exeter→blackwall→gravelly beach→batman bridge→george town(cp)
タスマニアの何もない小さな港町。そこで、足止めを食らった。バイクのガソリンがほぼエンプティ(空)。ガソリンを入れようにも、ガソリンスタンドがどこも休業中。ガソスタばかりか、町中のあらゆる店が閉まっていた。住宅地でさえ、みな家に閉じこもっているのか人影もなく、ひっそり死んだように静まり返っていた。今日はクリスマス。日本だと考えられない。今日はカキイレドキのはずだ。そうかクリスマスは家族で安息する日か。初めて知った。
仕方がない。どうせ、慌てた旅でもない。豪(郷)に入れば豪(郷)に従えだ。明日、ガソスタが開業するまで、僕ものんびり時間を弄ぶとしよう。この街とも何かの縁だ。神さん・サンタさんのおもしべしだろう。牧場の片隅に間借りして、テントを張った。陽はまだまだ高い。牛が遠くで頭をたれて、草を食っている。のどかな一日。暇に任せてラジオのチューナーをいじっていると、ジングルベルが流れてきた。半袖のTシャツから延び出た影にも負けない日焼けした黒い腕に、午後の日差しが照り付けてくる。真夏の太陽。ここじゃ、サンタはどうしてやってくるのだろう。この肌を刺す太陽が西に沈み、また東から昇る明日、僕はタスマニアをいよいよ発つ。
海の向こうの待つオーストラリア本島。馴染みの大陸が、僕にとっての新大陸に思えた。人生はいつも未来に突き進む。今日のまだ燃えつくぬ太陽を頭上に拝みながら、新しい人生の夜明けを予感した。

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