オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅
第79話:妖気、陽気で、酔う気な感じ
12月22日 晴 366キロ
→sorell→port arthur→blowhole/tasman arch/devils kitchen→sorell→richmond→orford→swansea
→springvale celler(winery)→bicheno(YH)
冗談か真実か、オーストラリアという大陸は、パイオニアたちが新天地を求めて入植しはじめた頃、一方では、罪を犯した輩が島流しの刑の処された巨大な監獄大陸だとどこかで聞いたことがある。そしてさらに手のつけられない荒くれ者が最後に投獄されたという監獄がここタスマニアにあった。その地の名はポートアーサー、タスマニア島南東部、突き出た半島の先にある。そこに極悪非道の流刑囚が収容された監獄があると言っても遠い昔の話しで、実際その歴史を知らずこの地を訪れたなら、古い西洋風の石作りの建物と、周辺のきれいに短く一様に刈りこまれた芝生の庭を見て、ピクニック気分でお弁当を広げたくなること請け合いだ。でもそのたたずむ閑静な空間に気をよくして、軽い気持ちでその建物の監獄ツアに参加しようものなら、それはそれはおぞましい歴史を物語る数々の小道具を次々と目の当たりにして、ケツの穴まで縮こまってしまうだろう。独房や拷問道具の凄いこと凄いこと、全てレプリカなんかじゃなく使用済みのプンプン匂い付き、したくもないのにその使い方を想像までしてしまい、金玉も思わずブルッときてしまう、サデスティックの極みがここにあった。ちなみに夜にはゴーストツアと称する俗に言う肝試しもやっているらしい。僕にとっては想像をはるかに越えた生々しい昼間の監獄ツアだけでもう十分堪能でき、ランチ気分ではなくなってしまったので、そそくさと次の街リッチモンドに向かうことにした。
リッチモンドという小さな街は、まるでおとぎ話や絵本から飛び出たようなメルヘンティックなところだ。ポートアーサーから逃げるようにしてたどり着いたリッチモンドのとある石橋のたもとで、遅いランチにすることにした。川べりに座り込み、サンドウィッチと水で腹を満たす。田舎町をゆったりと流れる河の流れを見ていると、やっと平和な気分が戻ってきた。
近くを通りかかった散歩中のじいさんに話しかける。
「なかなか風情があって、よろしいですな」
年金暮らし(?)のじいさんも暇を持て余していたようで、僕の話しに乗ってくれ、目の前の石橋の歴史を語ってくれた。
聞くと、その石橋はオーストラリア最古の石橋で、実は囚人たちの手によって建てられたものだという。
またここにきて囚人絡みか。
確かに囚人を使っての公共事業は低予算だろう。どこかの天下り財団法人による談合国家よりか、はるかに公益性が高いような気がした。
それにじいさんの尽きぬ話では、このリッチモンドの街にもまたポートアーサーよりも古い監獄があるという。
それを聞いて、せっかく忘れかけていたイヤな気分が、また一機にまとわり出した。
この街を出よう。このじいさんに会わなければ、河のほとりで昼寝でもしたものを。
でも、じいさんが悪いわけではない。
「じいさん、話の途中でごめんよ。先を急ぐから。またこの話しの続きいつかしよう」
気を取り直しての、再出発。その先で、待っていたとばかしに、タスマニアのもうひとつの素顔にお目にかかれた。丘陵に広がる酪農風景を穏やかな太陽の光が満たす。その風光明媚に読んで字のごとし息を呑み飲み、過呼吸でぶったおれそうになるほどだ。タスマニア島の西側半分が水の神によって統治されているとしたら、東側半分は太陽神というところだろう。
夕暮れ迫るとき、道端に偶然見つけたワイナリーに立ち寄った。家族だけの零細経営、商売気が全く感じられない。子供たちが家?(店?)の前でクリケットをやっていた。中に入りしばらくすると、さきほどの少年たちのひとりがカウンターの向こう側に現れた。挨拶もなしに、慣れた手つきで冷えたワインをグラスに注ぎ、突如出現した宇宙人の僕にすすめてくれた。
「どうだ、オレのワインはうまいだろ」
お前が作ったわけでもないだろう。それに手ぐらい洗えよ。
その笑顔は、自分はワインを極めたいっぱしソムリエだと言いたげな、自信に溢れた勝ち誇ったものだった。
確かに洗礼された味だとは言えないが、自慢に値する代物だと思う。きっとオヤジの背中を見て育ってんだろうなあ。
その後、その少年と、ブロンドの髪を丁寧に母さんに梳かしてもらった10歳そこそこの妹たちとに、自家製ワインセラーの案内をしてもらった。一流でも二流でもなく、他とは比較にならないこのワイナリーに僕は5ツ星を送りたい。
→sorell→port arthur→blowhole/tasman arch/devils kitchen→sorell→richmond→orford→swansea
→springvale celler(winery)→bicheno(YH)
冗談か真実か、オーストラリアという大陸は、パイオニアたちが新天地を求めて入植しはじめた頃、一方では、罪を犯した輩が島流しの刑の処された巨大な監獄大陸だとどこかで聞いたことがある。そしてさらに手のつけられない荒くれ者が最後に投獄されたという監獄がここタスマニアにあった。その地の名はポートアーサー、タスマニア島南東部、突き出た半島の先にある。そこに極悪非道の流刑囚が収容された監獄があると言っても遠い昔の話しで、実際その歴史を知らずこの地を訪れたなら、古い西洋風の石作りの建物と、周辺のきれいに短く一様に刈りこまれた芝生の庭を見て、ピクニック気分でお弁当を広げたくなること請け合いだ。でもそのたたずむ閑静な空間に気をよくして、軽い気持ちでその建物の監獄ツアに参加しようものなら、それはそれはおぞましい歴史を物語る数々の小道具を次々と目の当たりにして、ケツの穴まで縮こまってしまうだろう。独房や拷問道具の凄いこと凄いこと、全てレプリカなんかじゃなく使用済みのプンプン匂い付き、したくもないのにその使い方を想像までしてしまい、金玉も思わずブルッときてしまう、サデスティックの極みがここにあった。ちなみに夜にはゴーストツアと称する俗に言う肝試しもやっているらしい。僕にとっては想像をはるかに越えた生々しい昼間の監獄ツアだけでもう十分堪能でき、ランチ気分ではなくなってしまったので、そそくさと次の街リッチモンドに向かうことにした。
リッチモンドという小さな街は、まるでおとぎ話や絵本から飛び出たようなメルヘンティックなところだ。ポートアーサーから逃げるようにしてたどり着いたリッチモンドのとある石橋のたもとで、遅いランチにすることにした。川べりに座り込み、サンドウィッチと水で腹を満たす。田舎町をゆったりと流れる河の流れを見ていると、やっと平和な気分が戻ってきた。
近くを通りかかった散歩中のじいさんに話しかける。
「なかなか風情があって、よろしいですな」
年金暮らし(?)のじいさんも暇を持て余していたようで、僕の話しに乗ってくれ、目の前の石橋の歴史を語ってくれた。
聞くと、その石橋はオーストラリア最古の石橋で、実は囚人たちの手によって建てられたものだという。
またここにきて囚人絡みか。
確かに囚人を使っての公共事業は低予算だろう。どこかの天下り財団法人による談合国家よりか、はるかに公益性が高いような気がした。
それにじいさんの尽きぬ話では、このリッチモンドの街にもまたポートアーサーよりも古い監獄があるという。
それを聞いて、せっかく忘れかけていたイヤな気分が、また一機にまとわり出した。
この街を出よう。このじいさんに会わなければ、河のほとりで昼寝でもしたものを。
でも、じいさんが悪いわけではない。
「じいさん、話の途中でごめんよ。先を急ぐから。またこの話しの続きいつかしよう」
気を取り直しての、再出発。その先で、待っていたとばかしに、タスマニアのもうひとつの素顔にお目にかかれた。丘陵に広がる酪農風景を穏やかな太陽の光が満たす。その風光明媚に読んで字のごとし息を呑み飲み、過呼吸でぶったおれそうになるほどだ。タスマニア島の西側半分が水の神によって統治されているとしたら、東側半分は太陽神というところだろう。
夕暮れ迫るとき、道端に偶然見つけたワイナリーに立ち寄った。家族だけの零細経営、商売気が全く感じられない。子供たちが家?(店?)の前でクリケットをやっていた。中に入りしばらくすると、さきほどの少年たちのひとりがカウンターの向こう側に現れた。挨拶もなしに、慣れた手つきで冷えたワインをグラスに注ぎ、突如出現した宇宙人の僕にすすめてくれた。
「どうだ、オレのワインはうまいだろ」
お前が作ったわけでもないだろう。それに手ぐらい洗えよ。
その笑顔は、自分はワインを極めたいっぱしソムリエだと言いたげな、自信に溢れた勝ち誇ったものだった。
確かに洗礼された味だとは言えないが、自慢に値する代物だと思う。きっとオヤジの背中を見て育ってんだろうなあ。
その後、その少年と、ブロンドの髪を丁寧に母さんに梳かしてもらった10歳そこそこの妹たちとに、自家製ワインセラーの案内をしてもらった。一流でも二流でもなく、他とは比較にならないこのワイナリーに僕は5ツ星を送りたい。
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