オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第77話:時と風に身を任せ

12月21日 晴 29キロ
→salamanca market→mt.nelson.lookout
久々の突っ切るような晴。タスマニア島に渡ってきて、これ程までの晴天に恵まれたのは初めてかもしれない。タスマニアの州都ホバートは、オーストラリアの中でもシドニーに続き、2番目に古い街らしいけれど、シドニーに比べかなりこじんまりしていた。歴史的建造物も随所にあり、退屈することもなさそうので、たまった旅の疲れをとる為に少し滞在することにした。
朝から宛てもなく港町ホバートのプリンセス埠頭をぶらついていると、青空マーケットを発見。古い倉庫が軒を連ねるそこは、サラマンカプレイスと呼ばれている。色々な美術工芸品(ガラクタ?)を並べた無数の露店に人が群れをなしていた。何か掘出しモノはないかとウロウロ、美味しそうな瑞々しい果物を見つけた。聞くとそれはマンゴー、こんな見事なマンゴーを見たのは初めてだった。かつて、シドニーからフェリーに乗りマンリーという町にある水族館に遊びにいったとき、喉が渇いてミルクシェイクを買ったのを思い出した。そのときのシェイクがマンゴーシェイクで、あまりの美味しさにビックリ。反射的に目の前に積まれたフレッシュマンゴーを袋山盛り買ってしまった。後先考えない衝動買いに、我ながら呆れやら、かわいくも思った。ま、とくかくマンゴーを実のままで食べたことがなかったで、その日の晩飯は、宿の庭先でナイフ片手に潮風でも浴びながらたらふく食べることにする。こんな小さな幸せに心満ち足りた僕だった。
バイクに乗らない日のお約束、街角で買ったベイクド・ポテトでそそくさと昼食を済まし、パブでいっぱい引っかけることにした。タスマニアに本拠をおくカスケード・ビールは、オーストラリアのビールの中では少し甘めかもしれない。唐突になぜか、午前中歩き回ったこのホバートの街を一望してみたくなり、午後からは眺めのいい高台マウントネルソンに登ってみた。アルコールの抜けきれない体にぽかぽか陽気、目下のミニチュアサイズの街並みとその先の穏やかな海が心地よく、時の過ぎ行く流れに身を任せて、うたた寝してしまった。この先待ち受けるタスマニア東部の旅に馳せる想いの夢を見たせいから、目を覚ましたときは妙に興奮していた。波のような風は、僕の体をやさしくマッサージしてくれ、旅の疲れを洗い流してくれた。

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