オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅
第72話:貧乏旅=青春?
12月17日 雨 9キロ
→station pier( port)
タスマニア島へのフェリーの出発は午後6時、バイクの積み込みはその2時間前の午後4時だった。メルボルンの宿泊地からステイションピア(港)までは30分足らずと聞いたので、全くのその日も慌てることはなかった。なのに、おちつかず朝からそわそわしっぱなし。日頃は風にまかせた勝手気まぐれひとり旅。朝陽が昇ればテントを這い出し、腹が減ればメシを食らい、陽が傾けばテントを張るべく寝床を探し。そんなノラリクラリ生活の時間感覚は、太陽の位置と腹時計だけで十分事足りるものだった。すべからく時計なんて全く必要ない。だから、今日、久々に出航時間というたったひとつの約束の時間を気にしなければならないというだけで、大げさでなく一日が時間に縛り付けられてしまい窮屈に感じてならなかった。大自然に適応したライフスタイルが身につき、文明社会に馴染まなくなってしまっていることに我ながら驚く始末だ。
乗船の時間という呪縛にとりつかれながら、過ごす一日となった。ま、とりあえず、こんなときにはパブにでもと行きたいところだが、酒酔い・船酔いのダブルは御免だったので、今日のところは映画にでも行って、時間を気にする小市民な自分を忘れようと試みた。映画、う~んいい響きだ。久方ぶりの文化的活動に自分が現代人であったことを思い起こす。映画はもちろん英語、かつてはBGMにすぎなかったセリフが、今ではセリフがセリフ本来の役割を果たし、それに合わせ、ないはずの字幕スーパーが脳裏で弾き出された。端々のセリフまではわからなかくても、話しの筋は十分に追うことができる。その証拠になんと、笑うところが、暗闇のなかでいっしょに鑑賞していたオージーたちとちゃんとシンクロしているではないか。たいしたものだ。さすがに英語の理解が死活問題となる生活を送っていると、その覚えも早いものだなあ。そういやあ、最近じゃ、ものを考えるとき英語で考えているかもしれない。英会話レッスンの授業料はビール一杯、先生の酔っ払いオヤジたちに感謝しなきゃいけないなあ。
で、待ちに待った乗船。実際に目にしたアベルタスマン号は想像をはるかに越えた大きさで、まさに豪華絢爛の大型客船だった。でもチケットはもちろん言わずもながの一番安い客室で、ひと部屋に何台も2段ベッドが並んだ立つ事もままならない上側だった。これじゃ、どこが贅沢なのか分かったもんじゃなかった。それでも僕にとってはベットにはマットレスが敷いてあり、蟻が枕元を這っていないだけでスウィートルームに思えるから、悲しいやら、嬉しいやら複雑なほろショッパイ思いが湧きおこった。なけなしの大金をはたいた分を取り返すべく、しみったれた客室を後にして、早速、豪華客船の探索と行く。中は広く、プールやサウナそれに映画上映まである。もちろんフリー(無料)、実にすばらしいい響きだ。タスマニアの北の玄関口デボンポートに到着する朝までにはまだたっぷりと時間がある。まずは腹ごしらえから、でも案の定、船での夕飯はどれも高額だった。[かけうどん]なんてなく、どのメニューも僕を寄せ付けてくれない。悲しくなってきた。そのわけは、メニュー書かれた料理の値段に手が出ないから出なく、そうであろうと乗船前に当て込んで、定番の食パンとコーヒー牛乳を買ってきてあったことにだ。自分の準備のよさ、小市民ぶりに悲しくも憤りと、ちょっぴりかわいくも思った。2段ベッドの冗談いや上段のマイ・プライベート・スペースで、通路に背を向け人に見られないようにして持込みのディナーを腹に流し込んだ。この屈辱的な状況においても、おいしく感じ、コーヒー牛乳が浸みた食パンの食感は忘れられないものとなった。その後、親の敵がごとく、つかの間のリゾート気分を無料で心ゆくまでとことん味わったことは言うまでもない。
いよいよ、明日はタスマニア上陸だ。ここが終わり本島に戻れば、残すところ一途シドニーに向けてのラストラン、そして僕のウィニングラン、ひたすら北上あるのみだ。だからこのタスマニアは、この旅の山場、実質上の集大成となる。この短くて長いひとり旅に、なにか見い出すことがあるだろうか。そのためにもタスマニアでは自分の中の自分らしさを徹底的に解放し、引き出すことにしよう。
→station pier( port)
タスマニア島へのフェリーの出発は午後6時、バイクの積み込みはその2時間前の午後4時だった。メルボルンの宿泊地からステイションピア(港)までは30分足らずと聞いたので、全くのその日も慌てることはなかった。なのに、おちつかず朝からそわそわしっぱなし。日頃は風にまかせた勝手気まぐれひとり旅。朝陽が昇ればテントを這い出し、腹が減ればメシを食らい、陽が傾けばテントを張るべく寝床を探し。そんなノラリクラリ生活の時間感覚は、太陽の位置と腹時計だけで十分事足りるものだった。すべからく時計なんて全く必要ない。だから、今日、久々に出航時間というたったひとつの約束の時間を気にしなければならないというだけで、大げさでなく一日が時間に縛り付けられてしまい窮屈に感じてならなかった。大自然に適応したライフスタイルが身につき、文明社会に馴染まなくなってしまっていることに我ながら驚く始末だ。
乗船の時間という呪縛にとりつかれながら、過ごす一日となった。ま、とりあえず、こんなときにはパブにでもと行きたいところだが、酒酔い・船酔いのダブルは御免だったので、今日のところは映画にでも行って、時間を気にする小市民な自分を忘れようと試みた。映画、う~んいい響きだ。久方ぶりの文化的活動に自分が現代人であったことを思い起こす。映画はもちろん英語、かつてはBGMにすぎなかったセリフが、今ではセリフがセリフ本来の役割を果たし、それに合わせ、ないはずの字幕スーパーが脳裏で弾き出された。端々のセリフまではわからなかくても、話しの筋は十分に追うことができる。その証拠になんと、笑うところが、暗闇のなかでいっしょに鑑賞していたオージーたちとちゃんとシンクロしているではないか。たいしたものだ。さすがに英語の理解が死活問題となる生活を送っていると、その覚えも早いものだなあ。そういやあ、最近じゃ、ものを考えるとき英語で考えているかもしれない。英会話レッスンの授業料はビール一杯、先生の酔っ払いオヤジたちに感謝しなきゃいけないなあ。
で、待ちに待った乗船。実際に目にしたアベルタスマン号は想像をはるかに越えた大きさで、まさに豪華絢爛の大型客船だった。でもチケットはもちろん言わずもながの一番安い客室で、ひと部屋に何台も2段ベッドが並んだ立つ事もままならない上側だった。これじゃ、どこが贅沢なのか分かったもんじゃなかった。それでも僕にとってはベットにはマットレスが敷いてあり、蟻が枕元を這っていないだけでスウィートルームに思えるから、悲しいやら、嬉しいやら複雑なほろショッパイ思いが湧きおこった。なけなしの大金をはたいた分を取り返すべく、しみったれた客室を後にして、早速、豪華客船の探索と行く。中は広く、プールやサウナそれに映画上映まである。もちろんフリー(無料)、実にすばらしいい響きだ。タスマニアの北の玄関口デボンポートに到着する朝までにはまだたっぷりと時間がある。まずは腹ごしらえから、でも案の定、船での夕飯はどれも高額だった。[かけうどん]なんてなく、どのメニューも僕を寄せ付けてくれない。悲しくなってきた。そのわけは、メニュー書かれた料理の値段に手が出ないから出なく、そうであろうと乗船前に当て込んで、定番の食パンとコーヒー牛乳を買ってきてあったことにだ。自分の準備のよさ、小市民ぶりに悲しくも憤りと、ちょっぴりかわいくも思った。2段ベッドの冗談いや上段のマイ・プライベート・スペースで、通路に背を向け人に見られないようにして持込みのディナーを腹に流し込んだ。この屈辱的な状況においても、おいしく感じ、コーヒー牛乳が浸みた食パンの食感は忘れられないものとなった。その後、親の敵がごとく、つかの間のリゾート気分を無料で心ゆくまでとことん味わったことは言うまでもない。
いよいよ、明日はタスマニア上陸だ。ここが終わり本島に戻れば、残すところ一途シドニーに向けてのラストラン、そして僕のウィニングラン、ひたすら北上あるのみだ。だからこのタスマニアは、この旅の山場、実質上の集大成となる。この短くて長いひとり旅に、なにか見い出すことがあるだろうか。そのためにもタスマニアでは自分の中の自分らしさを徹底的に解放し、引き出すことにしよう。
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