オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第53話:違いの分かる男?

12月4日 くもり 465キロ
→rivermouth→cape mentelle(winery)→redgate(winery)→witchcliffe→karridale→naaup→bridgetown
→walpole→denmark→albany(Y.H.)
ああ、こんなすばらしい日があっていいものなのか。またまた朝からワイナリー巡り。言わしてもらう。ほんと、至福の時とはこのことだ。酒好きな僕は、旅の途中見つけた地元ワイナリー、そこにちょっと立ち寄り、喉を乾きをワインで潤すという崇高な大人の遊び自体に酔ってしまった。こんな贅沢も存在するものなのだ。ワイナリー巡りを知るまでは、ワインと聞いて連想するのは、値段で飲むスカした芸能人のバカ面くらいで、決して美味いと思ってワインを飲んだことはなかった。それがどうだろう、こうして「産地のど越し直送ワイナリー巡り」遊びを覚えてからは、ワインのの懐深さを否応なしに知ることになる。うまいで片付けてはいけない代物。飲み比べればわかってくる。同じワインでも赤と白では別の飲み物。また、同じ種類のワインでも、採れた年代・仕込む樽によって、味がほんと違う。そして、もっとも驚いたことは、同じぶどうでも、採れた畑が隣というだけでも味が違ってくるということだ。近郊の住む人たちはちょっとそこまでドライブ気分で、好みのワイナリーにワインを買いに来る。旅で汚れたよそ者の僕に対して、どこのワイナリーの人も嫌な顔ひとつせず、大歓迎。ワインの違いがわかってくると、色々質問したくなり、試してみたくなる。買わないとわかっていても、みんな笑顔で僕に付き合ってくれた。どこかで言っていた「ワインは、神様がくれた大地の雫(しずく)だよ」。ワインは人を幸せにする素晴らしい飲み物だと今では思える。
何件もワイナリーを周ると、僕なりの巡礼作法が出来てくる。それは田舎の小道を走り、ワイナリーの門をくぐった瞬間から始まっている。まず花の咲く家屋の前庭までバイクを滑り込ませる。家屋裏手のワイン畑を眺めつつ、しばし休息。どこからともなく聞こえる小鳥のさえずりが、耳に馴染んでくると、ワイン倉庫を見学させてもらう。貯蔵庫独特の湿った空気、樽の持つそこはかな重圧感が余らない。そうして気持ちを持ってきてから、試飲させてもらえる家屋に足を運ぶ。従業員の人(小さい家庭内零細ワイナリーだと、子供が店番をしてたりもする)と軽く挨拶・旅話しなんかをして、ワインを振舞ってもらう。好みを聞かれると、僕は決まって、「ドライ・ホワイトワイン・スティル・フルーティ」と応えるようになっていた。意味は、白で辛口、でもブドウっぽさも失っていないものを。コルクをひねる音が静粛な空間に映える。食事・つまみ無しで飲むなら、この種のワインに限る。舌の奥でワインの芳醇さを味わいつつも、喉元に運べば抵抗ゼロで一気に胃まで滑り落ちる感じが堪らない。こんな食感は他にないだろう。こうして、僕のおいしいワインの飲み方は、ワイナリーの門をくぐってからグラスを置くことで完結させる。

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