オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第39話:自分になってゆく自分

11月24日 晴 697キロ
→broome(CP)
『西オーストラリアの自然は手付かずが満載』というよりも、あまりにも人間のか細い手では扱いきれないことが存分に実感できる。それが西オーストラリアだ。だから、西は、ビーチリゾートやアトラクションいっぱいの東海岸の州と比べれば、人に話すような土産話などさほど見つからない。『海がきれいだ、砂漠はきつい、アメリカのグランドキャニオンのような奇怪な山もある』ってな感じで、聞く方も『へえ~』ってだけで、話しが弾むといったところではない。しかし逆に、西は、その分自分自身との対話を可能とした。独り言を言うというのではない(それもあるが)。西は、自分を感じる機会を、ぐっと増してくれる。感動している自分・苦しい自分・ウキウキする自分・落ち込んでいる自分、日頃の社会生活では意識しなかったいろんな自分を見ることとなる。『あ、僕ってこんなこと考えていたんだ』・『へえ、僕がこんなこと感じていたんだ』とか。十分知っているはずの自分が、新たな自分の側面を見ることで他人のように見え出し、自分と客観的に付き合えるようになる。そして自分にもっと近づかせてくれる。自然というものは、実は意志を持っているのかもしれない。その意味で、自然とは偉大な存在だということを知る。
ずっと旅してきて、この地で、なんとなく見えてきたこと。間違いなく、人は互いに頼り頼られて、生きている。でも、最後に頼れるのは自分でしかない。だから自分の行動に言い訳を探してならない。あくまで自分で考え自分で解決することを目指す。他人を当てにしては、必ず脇が甘くなり、達成も覚束ないし、またその言い訳が必要となってくる。何がための言い訳か。誰も聞いてくれない。自分を信用し、自分に賭けること。それに気づき、そうすることで、過酷な旅も乗り越える知恵が身に付き始め、例え失敗しても失敗で終わることはない。不思議なことに、必ずそこで初めて本当に助けを差し伸べてくれる者が現れる。この旅の糧は、旅だけのものでなく、きっとこれからの僕の人生を大きく変えるモノとなるにちがいないだろう。
自然について、最近おかしいと思う言葉:[地球にやさしい]。世界中で環境問題が噴出する昨今、以前はこの言葉をすばらしい格言だと思っていた。でも今は、『それは違うだろ』と強く否定する。これほど、人間のエゴむき出しの言葉はない。地球にやさしい?!。クソ喰らえ。もし野に山に空に海に口があったなら、きっとこういうにちがいない。「やさしくしないでください。その必要は全くありません。それより、お願いですから、放っておいてください」と。

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