オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅
第35話:GO WEST(さらに西を目指して)
11月22日 晴 362キロ
→crocodile farm→katherine gorge(CP)
アリススプリングスからダーウィンへは、舗装された一本道スチュアートハイウェイをひたすら北上すればよい。それをわざわざ、僕はカカドゥ国立公園(N.P.)を満喫しようとキャサリンからの途中で未舗装の悪路を選択した。その結果、幸か不幸か決死のカカドゥ越え、貴重な体験をさせてもらった。今は、ダーウィンからは舗装されたスチュアートハイウェイを、西へ分岐点となるキャサリンに向けて南下。舗装された道のありがたさに幸せを感じ、それがどれほど旅を楽にしてくれるかしみじみと痛感する。
ダーウィンを出発して程なくしたところで、休憩方々何気なしにクロコダイルファーム(ワニ牧場)に寄り道。で、度肝を抜かれてしまった。たまたま訪れた時が、ちょうどワニの餌やりの時間だった。ワニ園だから、さすがにワニがたくさんいる。日本の動物園にはワニなんていただろうか。いそうで、いない。だから、ワニの知識は凶暴ということぐらいしか知らない。のそのそ蠢くワニを期待いたのに、最初、ぐるっと園内を回ってみたが、どのワニも瞬きひとつせず、みな口を開けたままピクリとも動かない。まるで剥製か原寸大フィギュアのようだった(それでも迫力十分)。
餌やりの時間となり、飼育係りの人がやってきて檻に入る(まだ彼らはこの時点では動かない)。そして係りの人が、持って来た容器の中から既に絞められて死んでいるまるごとの一匹の鶏を取りだし、その鶏の首元を鷲掴みにして、地面に思いっきりたたきつけ始めた。鈍い音が出る、バスン、バスン・・・。するとどうだろう、それまで眼球さえ動かさなかったワニたちは、急に精気が蘇り、どう猛な野生を剥き出しにして、いっせいに餌を持った飼育係りを目指して迫っていった。という、襲いかかると言った方が、近い表現かもしれない。その光景に圧巻。映画『ジョーズ』の襲撃シーンあの音楽が頭の中で鳴り始める、チャーラッ、チャーラッ♪、タラ、タラ、タラ・・・♪。その係りはタイミングを計り、餌を置き、その場を後ずさる。手慣れているようだが、それでも緊迫感が見て取れる。初めて見物する僕にとっては飼育係りが食べられてしまわないかと、かなりドキハラものであった。子供のワニはペットとなりえても、それは決して飼いならされるようなことはないだろう。現物を目の当たりにすると、ワニも大きくなれば、きっと喜んでかぶりついてくれるはずだと、信じて疑わない。
夕暮れ時、森でキャンプを張って、夕飯を作っていると、どこからかワラビー(小型カンガルー)やエミュー(小型ダチョー)が現われ、ぼくの周りに群がってきた。ワニと違い、人間を襲う動物でないので全く恐くない。持ってあったミックスナッツを彼らに与えてやり、いっしょに夕飯にした。やはり大勢でゴハンを食べると美味いものだ。陽が沈むころ、鳥たちが森の寝床に帰ってきて、急にその泣き声で賑やかになる。食後のコーヒーを片手に、僕は森になる。闇の中、セミの鳴き声に意識を傾けていた。その単調なフレーズの繰返しが無数にシンクロし、その説明つかぬ音響効果により、時の経過する感覚を僕から取り去ってしまう。セミの小さな体から絞り出される鳴き声は、無限の力を放ち、森のホールを震わせる。そんなセミたちもサナギから脱皮して一度地上に出れば、僅か一週間ほどでその一生を終えてしまう。セミ一輪の華はあまりに散るのが早すぎる。でも森は決して鳴くことをやめたりはしない、今も昔もこれからも。セミは鳴くことで永遠の命を手に入れることができるかもしれない。
こんな旅と続けていると、太陽が沈んでからシュラフ(寝袋)に潜り込むまでの時間、することと言えば、一杯のインスタントコーヒーをチビチビとすすりながら、大自然と心を交わすことぐらいしかない。でもその『しかない』ことが、今の僕に絶大な喜びを与えてくれていた。過去に味わったことのない新鮮な空間・時間に存在する喜び、今こうして生きている喜び、そして自分の存在を感じる喜び、天空に向けその感謝の念を投げかける。そうしていると、いつの間にか辺りの暗闇も、天空のまばゆいばかりの星々や月の輝きによって、透き通った光りに包まれ、群青の視界を取り戻す。
→crocodile farm→katherine gorge(CP)
アリススプリングスからダーウィンへは、舗装された一本道スチュアートハイウェイをひたすら北上すればよい。それをわざわざ、僕はカカドゥ国立公園(N.P.)を満喫しようとキャサリンからの途中で未舗装の悪路を選択した。その結果、幸か不幸か決死のカカドゥ越え、貴重な体験をさせてもらった。今は、ダーウィンからは舗装されたスチュアートハイウェイを、西へ分岐点となるキャサリンに向けて南下。舗装された道のありがたさに幸せを感じ、それがどれほど旅を楽にしてくれるかしみじみと痛感する。
ダーウィンを出発して程なくしたところで、休憩方々何気なしにクロコダイルファーム(ワニ牧場)に寄り道。で、度肝を抜かれてしまった。たまたま訪れた時が、ちょうどワニの餌やりの時間だった。ワニ園だから、さすがにワニがたくさんいる。日本の動物園にはワニなんていただろうか。いそうで、いない。だから、ワニの知識は凶暴ということぐらいしか知らない。のそのそ蠢くワニを期待いたのに、最初、ぐるっと園内を回ってみたが、どのワニも瞬きひとつせず、みな口を開けたままピクリとも動かない。まるで剥製か原寸大フィギュアのようだった(それでも迫力十分)。
餌やりの時間となり、飼育係りの人がやってきて檻に入る(まだ彼らはこの時点では動かない)。そして係りの人が、持って来た容器の中から既に絞められて死んでいるまるごとの一匹の鶏を取りだし、その鶏の首元を鷲掴みにして、地面に思いっきりたたきつけ始めた。鈍い音が出る、バスン、バスン・・・。するとどうだろう、それまで眼球さえ動かさなかったワニたちは、急に精気が蘇り、どう猛な野生を剥き出しにして、いっせいに餌を持った飼育係りを目指して迫っていった。という、襲いかかると言った方が、近い表現かもしれない。その光景に圧巻。映画『ジョーズ』の襲撃シーンあの音楽が頭の中で鳴り始める、チャーラッ、チャーラッ♪、タラ、タラ、タラ・・・♪。その係りはタイミングを計り、餌を置き、その場を後ずさる。手慣れているようだが、それでも緊迫感が見て取れる。初めて見物する僕にとっては飼育係りが食べられてしまわないかと、かなりドキハラものであった。子供のワニはペットとなりえても、それは決して飼いならされるようなことはないだろう。現物を目の当たりにすると、ワニも大きくなれば、きっと喜んでかぶりついてくれるはずだと、信じて疑わない。
夕暮れ時、森でキャンプを張って、夕飯を作っていると、どこからかワラビー(小型カンガルー)やエミュー(小型ダチョー)が現われ、ぼくの周りに群がってきた。ワニと違い、人間を襲う動物でないので全く恐くない。持ってあったミックスナッツを彼らに与えてやり、いっしょに夕飯にした。やはり大勢でゴハンを食べると美味いものだ。陽が沈むころ、鳥たちが森の寝床に帰ってきて、急にその泣き声で賑やかになる。食後のコーヒーを片手に、僕は森になる。闇の中、セミの鳴き声に意識を傾けていた。その単調なフレーズの繰返しが無数にシンクロし、その説明つかぬ音響効果により、時の経過する感覚を僕から取り去ってしまう。セミの小さな体から絞り出される鳴き声は、無限の力を放ち、森のホールを震わせる。そんなセミたちもサナギから脱皮して一度地上に出れば、僅か一週間ほどでその一生を終えてしまう。セミ一輪の華はあまりに散るのが早すぎる。でも森は決して鳴くことをやめたりはしない、今も昔もこれからも。セミは鳴くことで永遠の命を手に入れることができるかもしれない。
こんな旅と続けていると、太陽が沈んでからシュラフ(寝袋)に潜り込むまでの時間、することと言えば、一杯のインスタントコーヒーをチビチビとすすりながら、大自然と心を交わすことぐらいしかない。でもその『しかない』ことが、今の僕に絶大な喜びを与えてくれていた。過去に味わったことのない新鮮な空間・時間に存在する喜び、今こうして生きている喜び、そして自分の存在を感じる喜び、天空に向けその感謝の念を投げかける。そうしていると、いつの間にか辺りの暗闇も、天空のまばゆいばかりの星々や月の輝きによって、透き通った光りに包まれ、群青の視界を取り戻す。
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