オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第32話:鳥を見て感動する自分に感動

11月21日 曇り 371キロ
→nourlangie rock→darwin(YH)
カカドゥを後にし、ダーウィンに向かう。途中、バイクに乗っていても相変わらずの蒸し暑さに嫌気を指し、小さな雑貨屋に立ち寄り、喉を潤した。軒先でコーラを首筋に当てていると、店の中から、じいさんが現われた。
「あんちゃん、暇そうだな。ここまで来たのだから、ぜひフォギーダムにいってみな」
確かに時間を気にするような旅はしていない。でも、じいさんの『暇』という言葉の率直さに抵抗を感じたので訂正しようとしたが、図星だった。『ああ、あんたと同じ、どうせ暇ですよ』。暇な僕はひとしきりじいさんをからかってから、まあ地元の人のお薦めでもあるので、そのフォギーダムとやらに寄り道することにした。
「じいさん、ちょっと寄ってみるよ」
「そうしな。どうせ、暇なんだし。気をつけてな」
じいさんの大らかな言いっぷりが、それまでの生き方を語っているようで笑えてきた。これもダーウィンの進化論なのか。『人生、寄り道かあ。逸れない道なんて、ないのかもなあ』。
フォギーダムへの道程は、ジャングルではなく森を抜けてゆく。木立に分け入ると、幾度となくワラビー(小型カンガルー)に歓迎させる。日差しを和らげていた森が終わると、そこは湿地帯だった。その湿地帯を中央を突っ切る一本道、中ほどに小さな小屋がある。人の身を隠す為のものだ。バイクを止めて潜んでいると、沼に野鳥たちが舞い降りてきた。南国特有のカラフルな体をしなやかにくねらせてダンスをする。そのさまは僕をダンスに誘惑し、心躍らせた。遊園地に行けば、絶叫マシーンに乗り継ぎ、退屈な観覧車には乗ろうとも思わなかった。まして動物園のダラけた動物を見て喜ぶなど気がしれなかった。それがどうだろう、今の僕は、遠足前夜の子供のようになっている。我ながら、子供っぽい自分を見て、奥歯で笑っていた。

          

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品