オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第14話:祝 灼熱の洗礼

11月12日 晴 783km
→Hunghenden→Richmond→Julia Creak→Cloncurry→Mount Isa(YH)
暑い。むしょうに暑い。アウトバックとはこんな暑いものなのか。この暑い最中、海を真近に見られないことがこんな苦痛なのか。かつて経験したことのないどこにも出口のない天然サウナだった。余りの暑さに日陰を求め、立ち寄ったPetrol station(ガソリンスタンド)のオヤジも、「真夏でもこんな日はめずらしい。お前もモノ好きだね。こんな中走ると死んじゃうよ」と言うぐらいだ。冗談めかして笑っていたが、目は本気だった。観光名所もなにもないアウトバックでは気の散りようがない。「暑い」と考え出せば、四六時中、意識がそれに集中し、頭を離れない。暑い暑い暑い熱い熱い熱い、あ~頭が沸騰しそうだ。昼過ぎの一番暑いとき、意識朦朧としながら単車を走らせていると、知らずと路肩に寄りすぎ、アスファルトも溶け出しているためかタイヤをとられて危うく転びそうになる。その後、転ばないようにした策は、道の真中を走ること。その時は我ながらいいアイデアだと思ったが、後から考えると自殺行為近い。まあ、対向車なんてほとんどなく、ひたすら地平線の彼方までストレートな道では、車が豆粒に見えるほどの距離から目視できるので、正面衝突なんてことは意識が飛んでない(これが一番問題)限り、起こりえないのだが。
途中、小さな町の雑貨屋の軒先でジュースを飲んでいると、僕の行く方から一台の車がやってきた。彼も旅人で、『こんなもの見たくもないから』と言って、温度計を頂いた。というよりも無理に手の内に押し込まれた感じだ。見ると、気温50度。暑いはずだ。この暑さも気温という数字で表されると、一層うんざりした。手放したくもなるはずだ。その暑さも陽が落ちると、少しはマシになるだろうと甘い考えをもっていた。が、神様は酷なものだ。まさしく熱帯夜、テントの中はサウナ状態、深夜の深夜まで寝つけたものではなかった。やっと多少涼しくもなり、疲労こんぱいの局地に達したためか眠りに落ち、それはもう朝方近くになっていた。そのとき確かめた気温計は、38度。水銀が38度と指しているの見て、目を疑ったくらいだ。どこが涼しいもんか。それを見て、思わず温度計をテントからブッシュめがけて投げつけた。心身力尽き、夢うつつの中、『明日、出会った誰かに今投げ捨てた温度計を探し出し、進呈しよう』と心に誓う。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品