第43話：予測と転移魔術

　大賢者、愛が１万以下になるまで使って構わない。
　インゲボー王女がこれからどんなことをするのか予測しろ
　時間がかかっても構わないから徹底的に調べろ。

　ピロロロロ

　直ぐに答えがでません。
　本当に愛が１万以下になってもいいのですか。
　現在の愛は４２１１８６ですが４１万も使っていいのですか。

　構わないから予測してくれ。
　それによって俺とリヒャルダの安全と幸せが保たれるのなら安いモノだ。
　ただ完全に予測が終わっていなくても、俺とリヒャルダに危険が迫ると分かった時点で報告してくれ。

　分かりました、計算と予測を始めさせていただきます。

　大賢者が急いで計算してくれるが、膨大な情報を整理計算するのは時間がかかる。
　まして人間の性格や偶然まで計算しようとすればとてつもない時間になるだろう。
　当然消費される愛の量も莫大になる。
　だがそれでもやらなければならない。
　俺とリヒャルダの命がかかっているのだからな。

「ヴェルナー様、なにか心配な事でもあるのですか」

　リヒャルダが心配そうな声色と表情で声をかけてくれた。
　大賢者に計算と予測を命じている時に不安な表情をしていたようだ。
　身体を大切にしなければいけないリヒャルダに不安を与えてしまった。
　俺はなんてダメな奴なんだろう。
　こんな事ではリヒャルダを護るという言葉が薄く軽くなってしまう。

「心配をかけてしまったようだね、ごめんよ、リヒャルダ。
　だが何も心配いらないよ。
　領地の事が気になっていただけだよ。
　領民がボダルト王国に逃げている間に農地が荒廃しているからね。
　それをどうやって平年並みの収穫にまでもっていくべきか考えていたのだよ」

「そうでしたか。
　確かに領地の事は気になりますね。
　父や母ががんばってくれるとは思いますが、今年はあるていど収穫量が減るのは仕方ないのではありませんか」

「そうだね、クサーヴァとペトロネラならがんばってくれるだろうね。
　だけどそれでは二人や忠義の家臣に負担がかかり過ぎるからね。
　俺にできる事はなんでもやりたいのだよ」

　さて、大賢者には王女の事を計算させたばかりだが、俺が軽率だった。
　領地領民の事を考えるのならもっと早く大賢者に計算させておくべきだった。
　一旦王女の計算を中止させるしかない。

「ありがとうございます、ヴェルナー様。
　両親も家臣たちもよろこびます。
　ですが無理はされないでくださいね」

「ああ、分かっているよ。
　大切なリヒャルダを心配させるような事はもう絶対にしないよ」

　大賢者、さっきのインゲボー王女の計算は一旦中止してくれ。
　それよりも領地を富ませる方法を計算してくれ。
　ああ、いや、その前に教えてくれ。
　妊娠している女性に転移魔術を使うと悪影響があるのか　
　流産したり胎児に障害がでたりするのか。

　ピロロロロ

　妊娠している女性が転移魔術で移動しても悪影響はありません。
　流産する事はありません。
　胎児に障害がでることもありません。
　愛が４２１０３７になりました。

　よかった、本当によかった。
　前世で観たアニメや読んだラノベだと、妊娠している女性が転移魔術で移動すると、胎児を流産したり障害がでたりする設定があったから気になっていたのだ。
　これでリヒャルダと一緒に領地に転移することができる。
　怖くてリヒャルダが妊娠しているか聞くことができないが、これで妊娠していたとしてもなんに問題もなくなった。