義妹がすぐ被害者面をするので、本当に被害者にしてあげる事にしました

大舟

第19話

 情報局の監査中は、誰も家内に入ることはできない。私はどうしたものかと、テルルと話をしている。

「メイラ様、どう思われますか?」

「…ええ、先回りされてた」

 タイミングが良すぎる。私たちが動き出した途端、情報局が乗り込んできた。さらに、情報局は私が聖女であるということも知っていた。…間違いなく、誰かが情報をリークしたんだろう。考えたくは無かったけれど、裏切り者がいるのかもしれない。2人が行方をくらましたのも、関係があるのだろうか?

「このまま、情報局に任せてみるというのは?」

「いえ、あまり信用できないわね」

 正直、情報局の良い話は聞かない。貴族間の勢力均衡維持のために、情報操作を行なっているという話すらある。カレンさんの死の真相だって、情報局ならばきっと掴んでいる事だろう。しかしその一件で公爵が捕まった場合、貴族間の新たな争いの火種になりかねないから、あえて情報を握りつぶしていると私は考えている。…もちろん証拠なんてないけれど。

「…もし、採掘票を持っていかれてしまったら…?」

「…」

 テルルは今後のことを心配している。私は今後のことより、誰がこの事をリークしたのかを考えていた。あの時あの場にいたのは、私、テルル、モールス伯爵、ツートンさんとルーベさんだ。この中の誰かが情報を流し、2人をどこかに逃したんだろうか…いやもしかしたら、公爵自身がリークした可能性も…

「…メイラ様?」

「あ、ご、ごめんね」

 …やはり、ここでどれだけ考えても答えは出てこない。私達も、もっと情報を集めないと…
 数時間後、ぞろぞろと家内から局員たちが出てきた。お目当ての物は見つかったんだろうか。ユリアは私の方を向き、言った。

「これらの資料は、こちらで回収させていただきます。ご協力ありがとうございました」

 これらの資料と言われても箱に入れられているため、なんの資料か私たちには分からない。ユリアを先頭に、情報局員は公爵家を後にする。それを見届けた後、私はテルルを連れて急足で地下書庫に乗り込む。

「テルル、採掘票は!?」

「はい、向こうです」

 テルルの案内の元、書庫の奥に足を進める。少し進んで、終点にたどり着く。

「こちらが採掘票です」

「これが…」

 テルルの手から採掘票を受け取り、その場で中を確認する。パラパラとめくり、違和感に気づく。

「…ページ数が、飛び飛びになってる」

「…そ、それはつまり…」

 やはり、情報局の狙いはこれだったか。この中から、違法採掘の証拠が載った採掘票だけ回収して行ったんだろう。しかしこれも、確証はない。抜き取られた採掘票に、何が書いてあるのか分からないからだ。
 敵は、あの兄妹だけじゃない。





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