義妹がすぐ被害者面をするので、本当に被害者にしてあげる事にしました

大舟

第11話

「まずひとつ。あなたの知りうる聖女に関する情報を、包み隠さず全て話して下さい」

 かつて私にこの力について教えてくれた母は、もう他界している。私は今なにより、それが知りたかった。

「あ、ああ…分かったよ…」

 公爵は思いの外素直に話し始めた。リーゼが関わると、本当に正直だ。
 公爵が言うには、聖女の力は本来、国の守護のために開発されたのだという。私の先代の聖女たちは皆、その務めを果たしていたらしい。しかし大国間の戦争はすでに終わりを迎え、世の中はすっかり平和になってしまったことで、聖女もその役割を終えてしまった。先代の聖女はそのまま退役する形で国の守護から退き、一般平民として過ごすこととなり、今日に至る、というのが公爵の話だ。

「…本当に、それで全てなんですね?」

 私は念押しする。

「ほ、本当だ!信じてくれ!そもそも私は、聖女の力が引き出される条件だって知らなかったんだ!」

 顔と態度を見るに、本当にそれで全てらしい。私に近づいた目的は…聞くまでもないか。

「分かりました。では、もうひとつの条件ですが、」

 公爵は大変不機嫌そうなお顔をされているが、私は構わず続ける。

「これからモールス伯爵に会いに行くので、一緒に来てください」

「モ、モールス…」

 公爵の表情が一瞬曇ったのを、私もテルルも見逃さない。やはり伯爵の娘であるカレンの不自然な死には、この男が関わっているようだ。

「わ、分かったよ…行こうじゃないか…」

 …断ってくれれば伯爵を説得する材料の一つとなったのだが、そう上手にはいかないか。ここで断れば、やはり自身がカレンの死に関わっていると、自白しているようなものとなるから。

「だ、だけど今日はもう遅い。夜道を馬で駆けるのは危険だ。い、行くのは明日にして欲しい…」

 …見え見えの時間稼ぎだ。しかし確かにこの男の言う通り、このまま全力で伯爵家まで向かっても、到着するのは深夜だろう。馬で夜道をかけるのは危険な上、もう眠っているであろう伯爵を叩き起こす事になる。これから手を組み共に戦いましょうと交渉に行くのに、それでは最悪の印象だ。

「メイラ様、私もそうなさった方が宜しいかと思います」

 テルルは冷静に、私に言った。私も、彼女に同意することとした。

「分かりました。明朝、出発しましょう」

 私たちは公爵家へ戻り、明日に備えて準備をした。不思議なことに、戻ってから出発するまで、一度もリーゼに会わなかった。性懲りも無く、また公爵に私の告げ口でもしているのだろうか。
 朝、私たち三人は伯爵家を目指して出発した。




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