義妹がすぐ被害者面をするので、本当に被害者にしてあげる事にしました

大舟

第3話

--スタン視点--

「お兄様、私もう限界ですわ…」

「わ、分かったよリーゼ!もう追い出してしまおう!ごめんねリーゼ、今まで我慢をさせてしまって…」

「本当に!?ありがとうお兄様!!」


 会話を終え、私は自室に戻った。全く、メイラにも困ったものだ。私は机に向かって腰掛けながら、頭を抱える。
 これまでにも、メイラの言動にリーゼが振り回されて、私に助けを求めてきたことが何度もある。私は寛大であるから、その度にメイラをきちんと激しく叱責しているのだが、メイラは全く分かってくれず、リーゼをいじめ続けている。
 私にとって、何よりも大切なのはリーゼだ。それこそ、公爵の立場やこの国での社会的地位などとは比較にならないほど、はるかに大切と言っていい。そんなリーゼを、高々平民上がりの下品なメイラがいびっているのだ。これだから平民女は嫌いだ。少し待遇をよくするとすぐ調子に乗る。あの女が持っているらしい力で、リーゼにもっと素晴らしい景色を見せてあげられる。そう思い、婚約を名目にここに連れてきたというのに、あの女には全くそのような兆しは無かった。結局は、なんの価値もない女だ。なぜあの女はそんな簡単なことがわからないのか。まさか、私に愛されるとでも考えているのだろうか。まともに夜の相手もできないくせに、何を思い上がっているのか。リーゼは私の立場を考えて堪えてくれていたようで、それを考えると胸が張り裂けそうになる。ああ、なんと健気なんだ。私は自分がリーゼに愛されている事に酔いしれながら、笑みが溢れる。同時に、なぜリーゼに我慢を強いなければならないのかに疑念が湧く。
 …いや、間違っている。私はなぜ、リーゼに我慢を強いているんだ?私にとって一番大切なのはリーゼであり、メイラなど論外であるのに、なぜリーゼを犠牲にしているともとれる行動をとっているんだ?
 私はふと我に帰り、自分を責めた。全く、なんと愚かな行動をしてしまったのか…
 私は冷静さを取り戻すため、コーヒーの支度をする。カップはリーゼが私に贈ってくれたものだ。ああ、愛おしい。
 カップにコーヒーを注ぎ、少し間を置いて、カップを口につける。このカップで飲むと、味が一段と美味しく感じられるが、これは気のせいではないだろう。
 カップを机に置き一息ついてから、私は考えを戻す。私は寛大であるから、これまではここから追い出すまではしなかったが、今回ばかりは私も限界だ。再三の私の言葉を聞かず、リーゼをいじめ続けたメイラの罪は重い。私はメイラに婚約の破棄と追放を告げることを決意し、部屋を後にした。



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