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帰還した召喚勇者の憂鬱

北きつね

第五話 報告(偵察)


 将軍が、ユウキが持ってきた物を預かることでユウキの話は終わった。

 休憩を挟んで、勇者たちがマイの召喚した”ゴーレムのような物”を使って偵察を行った内容の報告が始まる。

 マイから報告が始まって、2時間ほどの時間を使って偵察内容の報告が行われた。
 レナート王国にあるギルドが得ている情報は、将軍がある程度は引き出してきてくれていた。

 勇者や聖職者や権力者が多くいる場所が狙われたようだ。

「ユウキ。どう思う?」

 サトシが、皆の話を黙って聞いていたユウキに話を振る。

「なぁマイ。魔物たちの種類は?皆の話だと、低位から中位くらいだよな?いくら、アイツ勇者らがぼんくらでも、負けるとは思えない」

「それは、私も不思議に思ったけど・・・」

 マイは、不思議に思っていたが、権力者や聖職者を守るために、外に出てきていなくて、魔物に対応出来なかったのではと考えた。

「そうか・・・」

 ユウキは、どこかスッキリしない感じを覚えたが、マイだけではなく、偵察をしていた者たちが同じ感想を伝えてきたので、ベースの考えとして、勇者たちは魔物に対応できるという基本方針は変えないことにした。

 考え始めたユウキに皆の視線が集中する。

「サトシ。マイ。ディド。テレーザ。ヴァスコ。ニコレッタ。ロミル。イェデア。レオン。フェリア。パウリ。イターラ。オリビア。ヴェル」

 ユウキは、レナート王国に残留する者たちの名前を呼んだ。

「地球に、戻ろう。それから、レナートに戻ってきて、ギルドの救援要請で、勇者たちが居ない場所を優先して支援しよう。サトシ、頼めるか?」

「任せろ!でも、いいのか?」

「あぁ民衆が傷つくのは本意ではない。違うか?」

「そうだな」

 サトシが皆を代表するように呟く。
 レナート王国にいる勇者たちの心情としては、他の国の民衆が魔物に倒されても、自業自得という思いが多少は含まれている。しかし、魔物に対抗する力が無いものや、戦闘が不可能な者までが魔物に倒されるのは本意ではない。

「ユウキ。俺たちは?」

 地球に帰還するのを考えている者たちを代表して、レイヤがユウキに質問をする。

「今度は、帰ってくる時間を指定しないで転移してみる。2-3時間だと思うが、レイヤたちは、レナート王国内に魔物が出ていないか、将軍たちと協力して調べて欲しい。できるようなら、魔物の種類とステータスの確認を頼みたい」

「わかった」

「ユウキ。国内は、大丈夫じゃ。お主たちの作った情報網がある。魔物の出現は確認されていない」

「陛下。今は、大丈夫だと思いますが、それが5分後にはわかりません。他の国も一斉に湧いて出ていると報告が上がっていないと思います。多少の時間差は考えられます。それに、レナート王国は魔物の森に隣接しています。注意が必要な状況には変わりがありません」

 ユウキは、国王に向って一気に注意をした。

「おぉ。おお。解っておる。解っておる。な、セシリア」

 国王は、最初に将軍を見るが、視線を感じると将軍は国王から視線を外した。次に、サトシを見るが、すぐにあてに出来ないと視線をセシリアに移して、助けを求めた。

「はぁ・・・。ユウキ様。陛下は、場の空気を整えようとしただけです。そうですよね。陛下?」

「陛下・・・。そうだ、セシリアには解ってしまったようだな」

 国王のわざとらしい笑い声だけが、会議室に響き渡った。

「ふぅ・・・。まぁいいですよ。国内は、平穏だとしても、難民が現れると厄介なのは間違いありません。幸いなことに、連合国の中では、レナート王国は”最悪な状態”だという話が出回っているので、すぐには”難民”で溢れかえる心配は無いでしょう。しかし、難民に紛れて連合国が何かを仕掛けてくると考えておいたほうがいい」

 ユウキは、ここで言葉を切って皆を見る。
 真剣な表情でユウキを皆が見つめる。

「だから、まずは国内を安定させて、レナート王国に残る勇者たちで、ギルドからの救援要請に答えてほしい」

「ユウキ?聞きたいのだが?」

「なんだ?オリビア」

「お前の考えには賛成だ。だが、それなら俺たちが地球に帰る・・・。必要はないよな?」

「そうだな。でも、今のお前たちが、ギルドの救援要請に応じた場合に、”奴ら”が増長すると思わないか?」

「ん?」

「簡単に言えば、『辺境の勇者のくせに、価値のない村や街を救って、王都や教会をなぜ助けない』とかな・・・」

「あぁ・・・。すごく、言いそうだな。それに、あのバカ勇者たちが乗っかって、『自分たちも助けろ!同じ異世界人だろう!』とかも言いそうだな」

「そうだ。だから、お前たちには、地球に一度戻って、俺と同じように昔の姿になってもらえば、多少はごまかせると思う」

「あっ・・・」

「それだけでも十分にごまかせるだろう?」

「そうだな。わかった」

 オリビアが納得して、椅子に座り直した。

「ユウキ?」

「テレーザ。何か、質問か?」

「ん。眷属たちを、街に配置する?」

 テレーザは、少し説明が苦手なところがある。ユウキ以外では、パートナーであるディド以外には、説明が不足して聞こえてしまう。

「そうだな。魔力の心配があるから、帰ってきてから、連絡網が構築されるまでなら大丈夫か?セシリア。サトシを酷使した場合に、連絡網の構築には1年程度と考えて大丈夫か?」

「おい!ユウキ!」

「そうですね。サトシ様と、ロミル様とレオン様を酷使していいのなら、4ヶ月もあれば」

「よし、ロミオ。レオン。頼む。テレーザの為だ。そうだな。報酬は・・・」

 ユウキは、二人を見てニヤリと笑う。
 元小学校の跡地で懐かしい物を拾ってきたのを思い出した。アイテムボックスから、拾った物を取り出す。汚れているが、懐かしさを感じさせるには十分な物だ。

「お!」「え?!ユウキ!それは」

「俺たちが召喚された、前日に発売された、漫画雑誌だ。それも、日本語で書かれている物だから、お前たちが読むよりも、数週間は進んでいる。でも、今なら日本語も読めるだろう?」

 二人は、日本のマンガ/アニメ文化がすごく好きだ。少ない小遣いから、同好の士を募って、翻訳された週刊誌を買って読んでいた。

「あ!」「そうだ!今なら読める!ユウキ!」

「どうだ?」

「任せろ!セシリア。俺に任せろ!ユウキ。報酬は、それだけじゃないよな?」

「あぁ。向こうの現金が手に入ったら、定期的に送ろう。どうせ、将軍にペットボトルとかアルミ缶やらスチール缶や、他にもいろいろ送る必要があるだろう?」

 ユウキがニヤリと笑うと、子供が頑張って背伸びしている雰囲気になるが、皆は笑いをこらえる中で、将軍だけが指差して笑った。

 イラッとしたユウキが、指弾で紙を将軍の額にヒットさせる。

「ユウキ!」

「なんですか?」

 ユウキが将軍を睨むのを見て、何を言っても無駄なのは解ったので、将軍は黙って目の前にある飲み物に手をつける。

「ユウキ様。偵察の結果は、まとめたほうがいいですよね?」

「うーん。必要はないと思うぞ?簡単に言えば、レナート王国以外では、『”魔物の王”の抑えが効かなくなって、魔物が溢れている』ということだろう?俺たちは、俺たちの国以外に責任はない。情報は、ギルドがまとめるのが筋だろう?」

「でも、それでは後手に回りませんか?」

「ん?なんで?奴らが困るだけだろう?ギルドなら、最低限の情報をまとめてから依頼を出してくるだろう?まともな情報なないところに行って、仲間が危険に晒されるのは許容できない。違うか?」

「・・・。ユウキ様?」

「俺たちは、もう間違えない」

「・・・。はい」

 セシリアだけではなく、国王も、将軍も、ユウキのセリフを、奥歯で噛みしめる。
 ”もう間違えない”

 セシリアは、兄を、国王は、息子である皇太子と皇太子妃を、将軍は、本来なら次の国王の横に座るはずだった娘を、連合軍の無茶な作戦で亡くしている。
 優しかった兄を・・・。
 聡明だった息子を・・・。
 ただ一人の娘を・・・。

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